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異世界ファンタジーは突然に

 遡ること一ヶ月前、それはアルディアス王国の儀式場で起きた。


 儀式場の床に描かれた大きな陣。それが突然部屋全体を包み込むような眩い光を放ち、直後、先程までそこにはいなかった二人の人間が現れる。


「無事成功しました、陛下」

「うむ」


 アルディアス王国の国王は陣の中の二人を見下ろしながら傍らに控える護衛の言葉に頷く。


 勇者召喚。

 それは古の時代より行われてきた儀式であり、世界を救うための勇者をこの地に喚び出す術である。


 しかし、この世界とは異なる世界に住まう勇者を召喚することは容易ではない。

 この世界と勇者の世界、二つの世界を繋げるためにはおよそ二ヶ月から三ヶ月に及ぶ儀式が必要となる。


 だがそれだけの準備をしても召喚に成功するとは限らず、成功したとしても勇者に相応しい人物かはわからない。


 だからこそ、召喚する側にとっては賭けであった。

 そしてアルディアス王国は、勇者の召喚に成功した。


 今回召喚されたのは十代前半と思しき少年と少女。

 年端もいかぬ少年少女を召喚できたのはアルディアス王国にとって幸運といえる。


「んぅ…」


 召喚された少年が先に目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。そして一点の曇りのない目で辺りを見回し、国王のところで視線が止まる。


「おはよう勇者殿。そしてようこそ、我がアルディアス王国へ」




 ◇  ◇  ◇  ◇




 深い闇の中にあった意識が少しずつ引っ張り上げられ、瞼の裏に仄暗い明かりが浮かぶ。意識が覚醒すると同時にゆっくり目を開けて上体を起こす。


 しばらくは周囲を見渡しながらぼーっとしていたが、靄がかかっていた思考が少しずつクリアになっていき、そこで初めて自分が怪しげな集団に囲まれていることを理解する。


「………え?」


 燭台の明かりだけで照らされた、石造りの大きな部屋。そして床に自分を中心に描かれた大きな陣。

 極め付けは自分を囲む、黒いローブを纏った怪しげな人物達だ。


 光井周は本能で察する。これはヤバいと。

 やけに薄暗い部屋と床の陣、そして周囲の人物と、こんないかにもなカルト教団に自分は攫われたのか。


 しかし本能でヤバいとわかっていても体が動かない。全身が危険信号を発しているにもかかわらず、蛇に睨まれた蛙の如く指先ひとつ動かせないでいる。


「ぅ……ん…」


 突如自分の背後から声が聞こえ、周は思わず振り向く。

 そこには瞼を擦りながら起き上がる青柳翼の姿があった。


 そこで周は思い出す。先程まで自分達がいた場所のことを。


 あれは終業式が終わって下校の時間になり、借りていた本を返しにいこうと図書室に寄った時のことだった。

 丁度その日は青柳が図書委員の当番で、自分以外に図書室を利用している生徒はいなかった。


 本の返却を済ませ、本棚に戻そうとしたその時だった。


 突然足元が眩い光を放ち、自分と青柳はその光の中に飲み込まれたのだ。


 そして現在、カルト教団(仮)に囲まれて大ピンチという訳である。

 青柳も状況のヤバさに気付いたのか、自分の頬をつねって軽く涙目になっている。


「おはよう勇者殿。そしてようこそ、我がアルディアス王国へ」


 その時、カルトな連中の真ん中にいる、見るからに高貴な身なりをした人間が話しかけてきた。


「警戒するのも無理はない。ここは君達がつい先程までいた世界とは異なる世界なのだから。だが、まずは落ち着いて私の話を聞いてほしい」


 ウィルバー・アルディアスと名乗った男は自分がこの国の国王であること、周達はこの国に勇者として召喚されたことを話した。


 そんなファンタジーチックなことが現実に起こるなんて、とてもじゃないが信じられない。

 疑惑の目を向ける二人に対し、ウィルバーは自身の掌の上に炎の玉を出現させる。


「なんだ…今の…」

「手品…? でも、どこにも仕掛けなんて…」


 今しがた目の前で起きた出来事に二人は揃って驚く。青柳が言ったように、着火剤の類などどこにもない。


 であれば、もはや答えは一つだろう。非現実的だと頭の中で否定していた、しかし心のどこかでほんの少し期待していた答えを口にする。


「「魔法……?」」

「ご名答、さすがは勇者殿」


 二人の解答にウィルバーは僅かに笑みをこぼす。当の周と青柳はというと、まさかの正解にぽかんとしている。


 無理もない。魔法だとか魔力だとか、そういった言葉は比喩として使われることはあれど、本物を見たことはないのだから。

 魔法や魔力が存在するとしても、それはあくまでフィクションの世界。現在には存在しないものなのだ。


 それをこうして目の当たりにする日が来ようとは想像だにしなかった。

 現実離れした出来事が立て続けに起きているのだから、これはもう認めざるを得ないだろう。


 この世界には、魔法が存在する。


 そして、早速その魔法に魅せられた人物が一人。


「すっ…げえぇぇぇぇ‼︎」


 目をキラキラと輝かせながら鼻息を荒くし、テンション爆上がり状態の周とは対称的に、青柳は周のリアクションに若干引いていた。

 フィクションの中でしか見られなかった魔法を見て興奮する気持ちは分かるが、もう少し声のボリュームを抑えられないものかと額に手を当てる。


「すっげぇ‼︎ なぁなぁ、もっかい! もっかい見せてくれよ‼︎」

「貴様! 陛下に対して無礼であるぞ!」

「わあああ‼︎ すみません‼︎」

「よい。気にするな」


 あまりに無遠慮な周にウィルバーの傍らに控える護衛は剣を抜き、剣を突きつけられた周は慌てて後ろに下がる。

 ウィルバーの言葉で護衛は剣を納めるが、内心は穏やかではない。たった今この世界に来たばかりとはいえ、国王への無礼を許す訳にはいかない。


「あの…よろしければ先程の魔法をもう一度見せてもらえませんか?」

「構わんよ。こんなものでよければいくらでも見せよう」

「ありがとうございます」


 さすがにやりすぎたと反省した周はどこぞの小悪党よろしく、揉み手しながら護衛の顔色を伺うように魔法の発動を乞う。


「何やってんだか…」


 再び魔法を見て興奮し、また護衛に剣を抜かれている周を見て青柳はため息を吐く。


 青柳も初めて見た魔法に胸を躍らせているが、同時に鈍く光る剣を見て、あれも本物だと悟る。

 今は国王の前なので威嚇、或いは警告にとどめているが、明確な敵意、殺意を持って剣を向けられれば自分達の体など容易く斬られてしまうだろう。


 剣と魔法の脅威をほんの少し感じながら、青柳はずっと聞きたかったことを質問する。


「すみません、国王陛下。陛下は何故私達を召喚したのか、その理由をお聞かせ願えますか?」


 自分達を召喚したのには相応の理由があるはず。

 まさか理由も無しに召喚しただなんて、そんな愚王ではないだろう。


「そうだな。しかし、このような場所でする話ではないな。場所を変えよう。ついて来たまえ」


 そう言ってウィルバーは二人に背を向け、護衛と共に儀式場を出る。


「ああ…メチャクチャ怖かったあの人…」

「自業自得でしょ。それよりほら、早く行くよ」


 周と青柳も、ウィルバーと護衛に続いて儀式場を後にする。


 自分達が召喚された理由。そして、この世界で何が起きているのかを知るために。

 毎日投稿できるくらいの速筆になりたい。でもまだまだ実力が足りない。


 稚拙な出来ですが、少しでも面白い!続きが読みたい!と思ったら評価・ブックマークをよろしくお願いします。

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