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始まりは期待と高揚から

 ――どうして、こんな事になってしまったのだろう。一体、どこで間違えたのだろう。


 土砂降りの雨の中走り続ける少年は、つい先程まで生きていた人達のことを思い出す。

 自分と関わってしまったが為に命を落とした人達。見ず知らずの自分に対しても暖かく接してくれたその優しさが、どれほど眩しかったことか。


 だからこそ罪悪感で押し潰されそうになる。それを思い出した瞬間に吐き気が込み上げ、思わず立ち止まって吐いてしまう。


「違う……、こんな…はずじゃ……」


 これは悪い夢だと、そう思い込まなければ正気を保てそうにない。

 しかし、どれだけ現実逃避しようともあの惨状を無かったことにはできない。




 なぜなら、彼等の命を奪ったのは、他でもない自分自身なのだから。




 ◇  ◇  ◇  ◇




 ウィスニア大陸南東部に位置する国家、アルディアス王国。この国の王都では現在建国記念の催しが開かれており、大勢の人で賑わっていた。


 他の領地からはもちろん、国外からも多くの観光客が来るため、酒場や食事処、商店はどこも盛況である。

 王都がこれほどまでに活気に満ちているのも王の統治あればこそであり、国王直属の騎士達が王都を守護しているからこそ、国民は安寧を得られるのである。


 特に今は建国記念セレモニーの真っ最中。厳重な警備が敷かれた中で何か不審な動きをする者がいれば、即座に騎士達に取り押さえられるだろう。


 そんな中、警備の目を掻い潜って王城に侵入した人物が一人いた。

 その人物は空色の髪と眼を持ち、人形のように整った顔立ちをした少女だった。少女は全身をすっぽりと覆うような黒いローブを身に纏い、頭には先端が折れ曲がった黒い三角帽という、いかにも魔法使いといった出立ちだ。


 というかこんな目立つ格好をしていたら普通捕まりそうなものだが、どんな手を使ったのか、彼女は王城への侵入を果たしている。


 まあ、侵入の手口については後々彼女の口から話してもらうとして、問題は彼女の目的だ。

 なぜわざわざ王国の建国記念というタイミングで王城に忍び込んだのか、それはとある人物からの情報によるものだった。




 その情報とは、この国に勇者と呼ばれる存在が召喚されたということ。

 そして、建国記念の場で勇者の存在が国民に公表されること。



『アルディアス王国の勇者について探れ。もし勇者がこの世界に甚大な被害をもたらす存在なら、お前の手で始末しろ』



 それが彼女、ソニア・ランスリーフに与えられた命だった。




 ◇  ◇  ◇  ◇




 アルディアス王国王城のとある一室、テーブルと椅子だけが置かれた簡素な部屋に少年少女が向かい合って座っていた。


 互いに言葉はなく、侍女が淹れてくれたお茶を飲みながら時がくるのを待っていたが、無言の空気に耐え切れなくなったのか少女が口を開く。


「…ねぇ。私達って、本当に勇者なのかな?」


 沈黙を破ったその言葉に、少年はカップを置いてため息を吐く。


「まだ言ってんのかよ。あの人達も言ってただろ、俺達は世界を変える勇者だって」

「そうだけど…、なんだか怖いよ……」

「青柳は心配性だなぁ。安心しろよ、何かあったら俺が守ってやるからよ。勇者として授かった力で、どんな敵も一網打尽!絶対に傷付けさせねぇよ」


 目をキラキラと輝かせながらガッツポーズをする少年、光井周(みついあまね)に対して少女、青柳翼(あおやぎつばさ)はため息混じりに呆れる。


 勇者となった未来を夢想する光井に対し、青柳は言い知れぬ不安を覚えていた。

 勇者と呼ばれたあの日から住む所は勿論、食事から身の回りの世話まで、何もかも保証されている。


 傍目には恵まれているように見えるのだろう。しかし、ここまで高待遇だと何かしらの思惑があるとしか思えない。

 だからこそ、青柳は警戒を怠らなかった。とはいえ、そう簡単にボロを出すような相手ではないというのもわかっている。


 これは長期戦になると覚悟したその時、扉をノックする音が聞こえた。


「勇者様。そろそろお時間です」


 扉を開けて入ってきた騎士に連れられ、二人は部屋を出る。


「いよいよ始まるんだな…俺達の勇者ライフが!」

「そう…だね…」


 青柳の心配をよそに、期待に胸を躍らせ、掌に拳を打ちつける光井。

 きっとRPGのように冒険したり魔物と戦ったり、果ては魔王を討伐したりするに違いないと、ありきたりな勇者像をイメージしながらニシシと笑う。




 だが、二人を引き裂く大事件が起きることなど、この時の二人には知る由もなかった。

 初投稿のペーペー作家です。


 まだまだ至らぬ点が多いとは思いますが、少しでも面白い!続きが読みたい!と思った方は評価・ブックマークをよろしくお願いします。

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