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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第2章 魔法少女と権力

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2-43.騒がしい脱出

 普通に逃げるならありえないルートだけど、階段を駆け上っていく。大勢の人が詰め寄せている喧騒が離れていくのが聞こえた。


 ホールの上階にも、会議室なんかがある数階建ての建物。そして、こういう場所からでも魔法少女は脱出ができる。


「というわけで、屋上から逃げましょう。わたしも連れて行ってくれるかしら」

「あー。いいぜ。ラフィオに乗るか?」

「いいとも。おいハンター。降りろ」


 樋口のためというよりは、ハンターから離れたいがために言ったことだけど。


「やだ! ラフィオと一緒がいい!」


 わかりきった答えだった。


 仕方ない。


「俺が降りるから、樋口が代わりに乗ってくれ。俺はセイバーかライナーに運んでもらう」


 鍵を開けて屋上に出た。柵から少し顔を出せば。外に大勢の人が集まっているのが見える。


「なるほどね。じゃあわたしが」

「いえ。わたしがやります、お姉さん」

「あなたのお姉さんじゃないのよ、わたし」

「たぶん将来的になるので」


 まだ対抗意識を持っているらしいセイバーとライナーが、俺をそれぞれ片腕ずつ掴みながら言う。


 これ、俺を引っ張って取り合うのかな。俺が痛みに泣いてやめろと言ったら、俺を大事にしてくれる方は離すだろうか。

 そんな思いやりを求められる相手だろうか。特に愛奈は。

 大岡越前も、こんな変な女相手には大岡裁きはできなかっただろう。


 だから俺が決めないといけない。リーダーだから。


「セイバー頼む」

「ふふん。やっぱりわたしよね。お姉ちゃんに頼るのが一番よね!」

「ちょっと悠馬!? なんでかな!?」

「俺はな、遥が自分の足で伸び伸びと走ってる姿が好きなんだ。俺みたいな荷物を持って走ってほしくない」

「すっ好き!? そ、そそそ、そっか! そうだよね! 悠馬がわたしのこと好きなら、しかたないよね!」

「何言ってるのかしら。余計な荷物を胸に抱えてるくせに」

「これくらいは普通ですー! お姉さんが何も抱えてないだけですー!」

「むきー! わたしだって抱えるわよ!」

「うおっ!?」


 セイバーは俺の体を抱えあげた。


 背負うとか考えてたんだけど、両腕で俺の背中と膝を持って軽く胸で体重を支える格好。つまりお姫様抱っこをした。

 いやいや。なんでいつも、こうなるんだ。恥ずかしいんだけど。


「行くわよ悠馬!」

「おい待て! なんでこれなんだ!?」

「この方がお姉ちゃんの頼りがいが伝わると思ったのよ!」

「持ち方で変わらないだろ!」

「だって! 悠馬ってばお姉ちゃんのこと、頼れるって言ってくれないんだもん!」

「頼れるよ! 頼れるから! とりあえず持ち方を変えろ!」

「いえーい!」


 セイバーは俺の言うことを聞かず、屋上から隣のビルに飛び移った。


「あ! 悠馬! わたしの走ってる所も見てよね!」


 ライナーが文句を言いながら追いかけてくるけど、それどころじゃないんだよ。


「ほんと、騒がしい人たちね。これに世界の命運がかかっているなんてね」

「えへへ。ラフィオー。黒ごまプリンって知ってる?」

「なあ樋口。帰るまでの間、こいつの話し相手になってくれ。あと、黒ごまプリンがなんなのかも聞いてくれ」

「あなたも、割と自分が強いタイプなのよ。手触りはいいけどね」

「まさか、お前もモフリストなのか……」

「なになに!? ラフィオってばわたし以外に浮気するつもりかな!?」

「してない! てかお前とはそういう関係じゃない! あと僕は好きでモフモフされてるわけじゃない!」


 ラフィオたちが、なにか言い合いながらついて来るのも見えた。


 それから、ポケットに入っているスマホに着信。

 そこに手を入れるとセイバーの胸に少しこすれる形になって。


「あんっ。もう、悠馬ってばお姉ちゃんのおっぱいに興味が」

「ない。黙っとけ」

「はい……」


 澁谷からメッセージ。舞台袖から逃げていったのを、彼女も見ていたはずだ。


 このまま逃げられてマスコミとしては追いかけるのは不可能だと、彼女が一番理解していることだろう。

 この後会えない? 取材じゃなくて、週末の食事という形で。そんなメッセージだった。


「なあ姉ちゃん。澁谷もバーベキューに誘うか?」

「いいわよー。ビールたくさん持ってきてって言っておいて。あと追加の肉も」

「わかった。……それ、テレビ局の予算からでるのかな」

「出るんじゃない? 他人の金で食べる肉って最高よね!」


 まあいいか。澁谷に、姉ちゃんが言った通りの文面を送る。この人のことだから、ちゃんとお願いは守ってくれるだろうな。




「かんぱーい!」


 草むしりがほとんど済んだ庭に、愛奈の声が響く。

 まだコンロに火はついてない。準備の途中だけど、愛奈はビールの缶を開けている。


 相手は樋口と澁谷だ。社会人の女が三人、テーブルの上に乗ったビーフジャーキーを囲んでいた。

 こいつ、こんなのも買ってたのか。


「ぷはー! やっぱひと仕事やった後のビールは最高ね!」

「今日も大活躍でしたね、愛奈さん」

「まあねー! なんたって魔法少女の中では最年長だし? リーダーみたいなものだし?」


 まだ言ってるのか。缶ビールを一気飲みした愛奈は、得意げな顔で無い胸を張った。


 突っ込んでくれる遥はここにはいない。キッチンで調理中だ。

 バーベキューといえばおにぎりだって張り切っていた。

 俺のために、ピラフおにぎりを作ってくれると言っていた。


 ピラフってパラパラ食感のイメージあるけど、おにぎりになるのだろうか。でもコンビニで、チャーハンのおにぎり見たことあるしな。遥ならなんとかしてくれそう。


 ラフィオもまた、つむぎに連れて行かれていた。同じくキッチンで各種プリンを作ってるところなんだろう。

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