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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第2章 魔法少女と権力

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2-35.公開討論会当日

 そして案の定、帰ってからも。


「悠馬ー! 怖いから一緒にお風呂入って!」

「嫌だよ!」

「だって! シャンプーしてる時とか視線を感じたら怖いじゃん! 悠馬に見てもらったら、ああ弟ねって安心できるけど!」

「なんで俺が姉ちゃんのシャンプー見なきゃいけないんだよ!」

「あと! ひとりで寝るのも怖いから! 今日はお姉ちゃんの部屋で一緒に寝よ!」

「お断りだ!」

「なによ! 小さい頃はよく一緒に寝てたわよ!?」

「小さい頃はな! ……じゃあこうしよう。明日から日曜日まで、あの家の草むしりをひとりでやってくれるなら考えてやる」

「あえっ!? え、えっと、それは……うーん」

「本気で悩んでるな、これは……」


 もちろん、愛奈に草むしりをすべて任せる気はない。愛奈と一緒に寝る気がないのと同じようにだ。



 だから草むしりは、翌日からみんな集まって頑張ることになった。もちろん愛奈含めて。

 嫌がる愛奈をなんとか働かせるのは、草むしりそれ自体より大変だった。これもトレーニングか。

 そんなトレーニングと、もちろん陸上部に混ぜてもらってのトレーニングを並行して行い、時々出てくるフィアイーターを退治する。そんな感じで一週間は過ぎていく。


 フィアイーターは、食料品店に現れることが多かった。何故かは知らない。キエラの意図があるのだろうけど、聞けなかった。



――――



「どう、おいしい? 人間がなにを好んで食べるかわからないけど、ティアラが気に入ってくれて良かったわ」


 自然豊かなエデルード世界にて、キエラは魔法で生やした木を切り倒して作ったテーブルの上に、いくつかの料理とお菓子を並べていた。


 料理といっても、店から盗んできた既製品ばかり。温めた冷凍ピザにカップラーメン。あとはポテトチップスなんかの袋菓子。

 食材から自分で料理するような術を、キエラは持っていなかった。


 でも問題はない。ティアラは喜んでくれている。


 家にいた時も、こんな感じの粗末でジャンクな料理しか食べてこなかったらしい。しかも、貧しいから常に少量だけ。

 お腹いっぱいポテトチップスを食べるのが夢だったと、彼女は満面の笑みで言っていた。しかも、ミラクルフォースを見ながら食べられるなんて幸せだと。

 ティアラは、ちゃんとした料理を食べてこられなかったのだな。かわいそうに。


 キエラは、ティアラの笑顔をもっと見たいと思った。友達の幸せが、キエラの幸せだった。

 ラフィオにも未練はある。もしラフィオが、頭を下げてどうしても恋人としてやり直したいと言ってきたなら、少し悩んで受けると思う。けど、今は友達も大切にしたかった。


「ねえキエラ。恐怖を集めないといけないんでしょう? 行かなくていいの?」

「そうね。そろそろ、本来の目的を果たさないといけないわね」


 ティアラと一緒にいるのは心地よい。お互いが邪魔にならない関係って、なんて素晴らしい。


 けど、キエラにも目的はあった。地球を滅ぼさないと。


 一瞬だけ、こうやってティアラと過ごして、それから地球から他の友達も何人か作って招待して、ずっとここでのんびりと過ごすのも悪くないと少しは思っている。

 けど、キエラは恨み深い性格をしていた。執念深くもあり、欲しいものはなんでも手に入れたいと思っていた。


 ラフィオを放っておくなどありえなかった。絶対に、取り戻さないと。


「ちょっと、恐怖を集めてくるわね」


 キエラはそう言って、出る準備をするのだった。



――――



 日曜日。公開討論会は午前中に行われるとのこと。


 市役所の近くにある市民ホールが開催場所。こういうイベントには普通の市民はあまり関心を持たず、観覧者もそんなに多くないのが普通だけど、今日は違った。

 魔法少女という、日本中から注目を集めている案件。目撃者も、被害に遭った方も多い。議会では連日、市長派と雑賀派がやりあっている。

 市民たちは自分の意見を権力者たちに伝えようと、大挙して押し寄せていた。事態の推移を見守りたいだけの者も多いだろうけど。


 注目度の高さから、テレビカメラや記者も大勢来ているらしい。澁谷も参戦すると、昨日の夜にメッセージが来ていた。


 当然のように家に来たつむぎが、ミラクルフォースとトンファー仮面を観た後に家を出た。俺は、前に言った通りに制服姿で来た。本当に市民代表として質問をするかは別として、この格好をすることも意味があるだろう。


そんな俺たちの前には既に、そんな経緯で長蛇の列ができていた。


「抽選が行われるらしいねー」

「マジかよ。そんなこと初めて聞いたぞ」


 遥の車椅子を押しながら、俺はうんざりした声をあげる。


 大きな市が所有するホールなだけあって、会場も相当広いはず。けど、全員は入れなさそうなことはよくわかった。

 だから、誰が入場できるか抽選で決めるというわけだ。目の前の列は、その抽選待ちの人たち。


「並ぶの面倒ね。帰らない? どうせ抽選なんか当たらないわよ」

「じゃ、早めに帰ってバーベキューの準備しましょうか。お姉さんは残った草を引き抜く係ですね」

「並びましょう。わたしたちの今後に深く関わることよ。是非この目で確かめないと」


 こいつは本当に。格好よく言ってるけど、全然様になってない。

 ラフィオも人間になって、五人でそれぞれくじを引いて、当たったのが。


「一枚だけか……」

「しょーがないわね。わたしが確かめに行ってあげるわよ」

「いや、悠馬でしょ。ここは」

「ああ。俺が行きたい」

「ううっ……そうなると思ってました……」


 俺が言い出して教えてもらったイベントだから、こうなってしまう。

 愛奈もそれはよくわかっているから、特に異存はない様子で。


「みんな、ごめんな」

「いいって。偉い人の見極め、よろしくね。わたしたちは買い出しとかするかなー」

「草むしりはしたくないです……」

「いいよ。それはもう。とりあえずバーベキューできるくらいのスペースは確保できたし」


 狭い庭だ。そんなに草むしりの手間もかからなかった。庭はほぼ、綺麗な形になっている。

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