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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第2章 魔法少女と権力

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2-24.それぞれ戦う理由

 一方の樋口はといえば。


「なるほど。あなたたちが、ちょっと普通じゃないのは理解したわ」


 軽く頭を押さえながら言う。理解の範囲外であることを理解したという感じ。


「とりあえずね、あなたたちが国家に逆らわず、犯罪行為をしなければそれでいいわ。魔法少女の力を、怪物退治以外に使うのも、遠慮してほしいわね。それで、警察のお偉いさんや政治家は一旦は納得するわ」

「弊社の取材はどうでしょうか」

「必要な啓蒙活動の一環として、見逃します」


 取材自体で、偉い人が困っているのだけど、それが手を出さない理由にもなっているのだから。


「魔法少女に変身して、電車より早く走って会社行くのは? そのために少し長く寝られます」

「……」

「あ、ちなみに電車は定期だから、鉄道会社に損はありません。むしろひとり分でも、満員電車が解消されてああああああ」


 俺が愛奈の頬をつまんで黙らせた。


「気にしないでくれ。そんなことさせないから」


 俺が毎朝、ちゃんと時間通りにフライパンで起こすから。


「……まあ、周りに迷惑をかけない範囲なら、魔法少女の力の私的利用も黙認します」


 あんまり関わりたくないという感じだな。公安の想定になかったタイプの変人だったんだろうな。過激派とかテロリストの相手はなんとかなっても、馬鹿の考え方は未知の領域だったか。


「それよりも、ひとつだけ確認しないといけないことがあります。断られると思われるけど、上の人も乗り気ではないけれど、大人の責任としてね」

「もったいぶらずに、早く訊けよ」

「警察の特殊部隊とか自衛隊なんかに魔法少女の力を譲る気はない? 市民ではなく、比較的戦いのプロに世界の命運を託して責任から解放される気は?」


 ああ。たしかに訊かないといけないことだな。

 そういうことは、権力に任せればいい。当然といえば当然のことだけど。


「嫌ですね。せっかく自分の足で走れるようになったんです。この力、手放すわけにはいきません」

「わたしも、魔法少女だからラフィオと一緒にいられると思ってるし。他の人が魔法少女になったら、ラフィオもそっち行くんだよね?」

「お前、話聞いてたんだな。まあ、そうなるだろうし……僕としては、ちょっと気持ちが揺らいでいるけど」

「もー! ラフィオ駄目だよ! わたしと一緒にがんばるの!」

「わかった! わかったから!」


 遥とつむぎは、魔法少女として戦う理由をしっかりと持っていた。

 そして。


「……」


 愛奈は、言うことが見つからないのか黙ってしまった。

 戦う理由か。姉ちゃんにはすぐには思いつかないのかな。

 ちゃんと、自分で言ってたはずなんだけどな。


「俺、姉ちゃんに守ってもらうのが一番安心できるな。誰か知らない人間よりも」

「え?」

「それに、俺の世界を守るために、姉ちゃんは戦うんだろ?」

「うん! そう! わたしは悠馬のために戦います! 自分の手で悠馬を守ります! うん!」

「あと、魔法少女の件が警察預かりになったら、ラフィオの身柄もそっちに預けられるんだろ?」

「え、ええ……」


 飢えた猟犬と見間違えるほどに鋭い目つきで自身を見つめるつむぎから目を逸しながら、樋口はうなずいた。


「それは、あまり嬉しくないな。ラフィオは俺たちの家族だから」

「……え?」


 呆気にとられた声を出したのは、当のラフィオの方。いつの間にか奪い返したスプーンをプリンに向けている手を止めて、俺の方を見た。

 構わず、本来の話し相手である樋口に語りかける。ちゃんと、ラフィオにも聞こえるように。


「公安なら知ってるよな? 俺と姉ちゃんが、なんでふたりで暮らしてるのかを」

「ええ」

「ラフィオは俺の家に来てくれた、新しい家族なんだ。もし魔法少女の件を警察が預かって、俺たちとラフィオが引き離されるようなことがあれば、俺たちは抵抗する」

「うん! それはたしかに! ラフィオはわたしの家族よ!」


 ちょっと遅れて理解したように、愛奈も声をあげた。


「せっかく、ちょっとまともな料理作ってくれる家族ができたんだから。あと、最近家が片付けられてすごく綺麗になったし! 手放すはずないでしょ!」

「あー。うん。それでいい。……いいよな?」

「ああ、いいとも」


 ラフィオもちょっと呆れた様子を見せなから、プリンを口に運んだ。少しだけ、口元が笑っていた。


「なるほどね。皆さんの気持ちはわかりました」


 俺たちのノリにも慣れてきたのか、樋口は微笑みを見せながら頷いた。


「じゃあ、公安として協力してほしいこと、ある?」

「協力してくれるのか?」

「ええ、世界の危機に子供たちが戦っているのを見て、大人として何もしないわけにはいかないし。……権力が手を出さないのが一番の協力って言うなら、そうするけど」

「働かなくてもいいようになりたいでむぐっ!?」

「いくつかある」


 怠惰を貪ろうとする愛奈の口を塞ぎながら、樋口に言う。


「遥の車椅子だけど、変身して怪物の方に行く時に預かってくれる体制がほしい」

「あー。たしかに。誰かやってくれると嬉しいなー。というか悠馬、真っ先にわたしのこと気遣ってくれるんだ」

「むぐぐぐ」

「体制というのは難しいわね。魔法少女のサポート担当は、わたしひとりしかいないから」

「ここの県警と協力してるんじゃないのか?」

「表立っての協力はしないのよ。関係者の身辺調査とかだけ。お願いすれば、もう少し手伝ってくれるかもしれないけれど、あなたたちの前に出ようとはしないわ」


 あまり県警との関係が強くなると、市長はじめ地元の権力の介入がある。それは説明されたし、仕方ないか。

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