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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-39.後始末

 夕方。俺とラフィオと四人の魔法少女はテレビカメラの前に立っていた。


 魔法少女は変身した姿。俺も覆面を被っている。今更なんの意味があるかはわからないけど、このスタイルで戦ってきたわけだしな。

 喋るのは主にラフィオだ。獣の姿で、怪物を生み出す親玉が倒れたから、もう安心だと語りかけていた。


 これまで一年近く、怪物の襲撃に耐え続けて魔法少女たちを応援してきた市民たちに感謝の言葉を述べた。君たちもまた街を守ったヒーローだと、ラフィオはそんな表現をした。



 俺たちの生出演はそう長い時間ではない。後は澁谷たち番組進行のプロたちに任せて、さっさとカメラの前から退散させてもらった。

 一時期静かになっていたスマホが、また勢いよく通知を表示し始めたのには、勘弁してほしかったけどな。


 出演が終わると、局のスタッフが話しかけてきた。

 俺の師匠を名乗る老人が訪ねて来ていると。


 すぐさま、彼が待っているという地下駐車場へ向かう。さっきは落ち着いて会話できなかったから。


「師匠!」

「やりましたね。無事に、この街の平和を守れたようですね」

「はい! 師匠のおかげです」

「いいえ。これはあなたたちの功績。わたしは、それに少しだけ手伝いをしただけです」


 謙遜する師匠だけど、その表情には喜びが浮かんでいて。


「使い道のない武術が、こんな形で誰かの役に立ったこと、私も誇りに思っています。……またいつでも、店にいらしてください」

「はい」


 必要な挨拶だけして、潔く去っていく師匠。恩師と呼んでいい彼に、俺は深々と頭を下げて見送った。




「市長が声明を出したわ。街のために尽力した魔法少女たちに感謝を表明してる。名誉市民の称号を授ける場が欲しいって」


 戻ると樋口がそう教えてくれた。

 なんか賞状とか渡す場を用意してくれるのかな。


 大貫市長はいい人だ。俺の素顔を知りながら明かさないという選択をしてくれた、良識派。

 俺の正体がメディアに流された後も、きっと庇う動きをしてくれたのだろう。


 そんな市長にも、会って話をするのはありかな。



「東京の国会議員たちも、今回の件で次々にお気持ち表明してるわ。総理大臣も、野党のお偉方も。みんな魔法少女を褒め称えている。是非会いたいって言ってるわ」

「それは却下だ」

「ええ。わかってる。クローヴスの企みに乗った奴らと、ほぼ同じメンバーだものね。気にすることないわ」


 奴らもどうせ、魔法少女の知名度と人気にあやかろうとしているだけだろう。魔法少女と並んで写真を撮って公表すれば支持率が伸びるとか。バカバカしい。


 市長の要請に応じるのは、彼が尊敬に値する政治家だからだ。


「そんなことより悠馬、帰りましょ。わたしたちの家に。それでご飯食べて、ゆっくり寝るの!」


 セイバーから愛奈に戻った俺の姉が、手を繋いできながら言う。

 そうだな、帰るか。俺たちの家に。




 それから数日後、俺たちはエデルード世界で掃除を始めた。と言っても、あの広い草原に掃除すべきものは日野姫輝の遺体ぐらいしかなく、主に小屋の中の清掃に限られるけど。

 溜まったゴミを市が指定するゴミ袋に入れていく。ちゃんと可燃ごみと資源ごみに分けてだ。


 汚れた床も清掃した。みんなでやれば、そう長くはかからなかった。


 姫輝の遺体を、彼女の母親は受け取りを拒否した。出て行った娘に今更興味などないらしい。

 人の姿で死んだキエラともども、無縁仏という形で処理されることになる。模布市のどこかに骨が埋まっていることだろう。


 キエラに世界を作るよう啓示を与えた神とやらは、ついぞ俺たちの前に姿を表さなかった。


「飽きたか、見捨てたんだろうね。世界が作られないまま一年が経った。そんな世界のことは忘れて、きっと次の世界を作り始めたんだよ」


 自身も神のことを知らないラフィオの説明も推測でしかないけど、たぶんそうなんだろうな。

 とにかく、エデルード世界に神は興味を失った。だったら好きに使わせてもらおう。


 以前話していた通り、フィアイーターの犠牲になってコアを埋められ自身もフィアイーターになった女、米原優花里の体をエデルード世界に運び込んだ。あと、彼氏もついてきた。

 ラフィオが小屋の床に、彼女を中心としてチョークで魔法陣を描いていく。


 これまでみたいに、半年も待つ必要はない。ここには魔力が満ちているから。


 十数秒で彼女は目を覚ました。


「優花里!」

「篤……史?」

「そう! 俺だ! よかった。もう大丈夫だから……」

「篤史!」


 抱き合って再会を喜び合う恋人たち。

 いい光景だな。


「このふたりは、これからどうなるの?」

「このエデルード世界で生きる。生活環境を整えていって、必要なものは模布市から持ち込んで。彼氏と二人で生きていけばいい。優花里は恐怖がなければ苦しむだろうね。だから、宝石をもうひとつ作ろう。それを模布市に置いて、優花里のコアと繋げて恐怖を送るようにする。そうだな……あの怖かったお化け屋敷にでも置こうか」


 平和に恐怖が集められる施設だからな。


「あのふたり、この世界のアダムとイヴになるのかな?」

「さあね。フィアイーターが子供を作れるかは、僕にもわからない。けど……やってみたら出来るかもね」


 ラフィオ自身も、それを望んでるように見えた。

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