表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

741/746

15-36.最後のフィアイーター

 横に倒れたら起き上がりにくい体をしているらしい。手足をジタバタ動かしてもがいているけれど、起き上がる様子はない。

 そして元から空いていた胴体の穴が、バーサーカーの前に晒される。


「おらあ!」


 その穴に指を突っ込んでメキメキと音を立てながら広げていくバーサーカー。模布市のシンボルだろうがお構いなしなんだな、本当に。


「オレ! この街が好きなんだよ! なのに! みんなに愛されてる物を怪物にするんじゃねえええぇぇぇぇぇ!」


 あ、心苦しくは思ってたんだ。


 でも、アユムちゃんがこの街を好きになってくれたことが嬉しかった。そうだよね。いい街だよね。

 陶器がバキバキに割れていく音と共に、穴が大きくなる。元のサイズがそこまででもないフィアイーターだから、コアもすぐに見えたらしい。


「死ねぇ!」


 シャチホコに遠慮なく拳を振り下ろすバーサーカー。うん、この街を愛しているからこそだよね。街のシンボルをボコボコにするのも、愛ゆえだよね。

 そんなに強くないフィアイーターのコアはあっさりと砕け散ったらしい。ライナーが次の標的にと思っていた黒タイツも、勝手に倒れて消滅していった。


 他の黒タイツもそうだ。


「あー。終わった終わった。なんか疲れたなー」

「そうだな。なあ、これどうすればいい?」

「お城を管理してる人に渡せばいいんじゃないかな。修理するか作り直すかしてくれるよ」


 真っ二つになった金鯱を抱きかかえたバーサーカーに返事をする。


「あ、せっかくだから触ってみよ。この街じゃ有名なものだけど、触るのは無理だもんね。レプリカは展示されてるけど本物を触れるチャンスはないもん」

「確かに」

「シャチホコさんなでなでー。モフモフー」

「いや、モフモフはおかしいだろ」


 うん、確かに。


 金鯱は思っていたよりスベスベの体表をしていた。金箔の冷たい感触は、しかし金だからなんか高級感とかあった。


「悠馬たち、大丈夫かな」


 地面に置いた金鯱を一緒に撫でてると、ふとバーサーカーが呟く。

 たしかに。こっちの戦いは終わっても、向こうはまだ継続中なんだろう。


 でも。


「心配ないでしょ。今更負けるわけないし。キエラは手負いだし、ティアラもそんなに強くはない」

「手負いの獣ほど危ないって聞くけどな」

「本当なのかな、それ。怪我してるなら倒しやすいってことじゃん」

「でも、近所のじいちゃんが言ってたんだよ」

「それはなんか、経験に裏打ちされた言葉って雰囲気があるね」


 なんて話をするけれど、実際のところバーサーカーも心配はしてなさそうだった。

 シャチホコをお城の人に返しに行くのはいいけど、実際に誰に返しに行くべきかの方が深刻な悩みで。


「あ、いい人たちがいるよ。こっちこっち」

「おい待て! どこ行くんだ」


 天守の方へと駆けていく。


 案の定、お城の敷地内に彼らはいた。たぶん彼らも、朝出勤した所で怪物騒ぎに巻き込まれて、お城や人々を黒タイツから守っていたんだろう。


「お疲れ様です! 織田信長さん!」

「わしは徳川家康じゃ!」

「それは失礼しました!」


 おもてなし武将隊のひとりが、地面に座って休んでいた。そうか、この人が家康か。

 歴史とか詳しくないから、イケメンのコスプレとかわからないし。


「あの。フィアイーターになったシャチホコ、とりあえずお返しします。どうするかは上の人と話し合って決めてください」

「おお! 大義であった! 魔法少女殿」

「はい!」

「この街を守ってくださり、大いに感謝しておりますぞ」

「へええ。どういたしまして!」


 たぶんこの家康さんも、ニュースは知っているはず。ライナーやバーサーカーが変身前はなんて名前なのかも、噂では聞いているはずだ。

 けど、彼は話題にしなかった。それが正しいとわかっているから。


 市民たちのほとんども、きっと同じだ。


「良かったね、バーサーカー」

「え? なにがだ?」

「家康さんに感謝されて」

「お? おう。家康さんも、戦ってくれたんだよな。ありがとうな」


 その心遣いまでは、バーサーカーも気づいてない様子だけど。でも人の暖かさとかはわかったらしい。

 他のおもてなし武将隊の皆さんも集まってきて、彼らに見送られながらライナーたちは去っていった。



――――



 ラフィオがティアラを飛び越してキエラの方へと駆けていく。俺たちにティアラの相手を任せて。

 キエラは這いつくばり転がるようにして、なんとか小屋に入った。ティアラはそれを守ろうとするけれど。


「あんたの相手はわたしよ!」


 セイバーが追い越して行く手を遮る。


 剣を突きつけられれば、少し身を引いた。セイバーが一歩前に出れば、ティアラも後ずさる。

 が、ティアラの背後には俺がいる。


 そしてティアラもよくわかっていた。俺の存在も、セイバーよりも俺の方がずっと倒しやすいことも。


「あなたから死んで!」


 振り返って俺に殴りかかるティアラ。咄嗟に持っている角材で拳を受け止めるけど、ティアラも人外だ。角材はぽきりと折れてしまった。拳の勢いも弱まって、俺にも避ける余裕はできたけど。

 このまま後ろに引くわけにはいかない。セイバーが追いかけなきゃいけなくなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シンボルのシャチホコがw でも、最終章だと思うと、こう、思うところがありますよね(語彙不足)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ