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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-35.エデルード世界

 いや、姿はかなり変わっている。手足がキエラのものではなく、光る陶器製のものになっていた。頭もシャチホコのもの。

 そして胴体に空いた穴はそのままだ。中にコアが見えている。

 そしてなにりより、大きさがかなり縮んでいる。オリジナルのシャチホコよりも一回り程度大きくなったくらいのサイズしかない。

 砲撃もしてこない。


「コアが大きすぎて、その破片だけでも小さなフィアイーターを維持できたんだ。ギリギリだけどね」


 ああ。弱そうだな。けど、もっと大きな問題は。


「キエラも分離したのか」

「特別製コアがキエラにも幸いしたなんてね。しかし弱っている。チャンスだ! 殺そう!」

「うん!」


 キエラへの本気の殺意を向けているラフィオに、真っ先に呼応したのはハンターだ。倒れているキエラに矢を放つ。

 けど、その矢が届く前に。


「キエラ! 一旦引こう!」


 ティアラが駆け寄って、キエラの体をすくい上げるように持って穴を作った。さっき殴られて倒れたのが、復活したらしい。

 迫る矢をギリギリで回避して、穴の向こうに消えていく。


「ラフィオ!」

「ああわかっている! 行くぞ!」


 首から提げた小さな鞄。その中に入っている宝石に手を当てると、ラフィオの目の前に穴が現れた。

 エデルード世界。キエラたちの根城へと続く穴だ。ラフィオはハンターを乗せたまま、迷わずそこに飛び込んだ。


「俺もいく!」

「あ、じゃあわたしも。女子高生たちは残ったフィアイーターをよろしくね」

「あ! おい待て!」

「なんですかお姉さん! なんでわたしそっち行けないんですか!?」

「あなたたちが、フィアイーターを倒すのに適任だからよー」


 と、セイバーは俺を抱えて穴に飛び込んでいく。



 風景がガラリと変わった。

 太陽もないのに、陽の光が燦々と降り注ぐ、一面緑の草原。他にある物といえば、一軒の丸太小屋だけ。


 そして、ティアラがいた。彼女はこちらに背を向けて小屋まで走っている。腕に抱えたなにかに呼びかけている様子だ。間違いなくキエラだな。


「そこまでだ! ティアラ!」


 俺が呼びかけても、ティアラは止まらなかった。

 ハンターを乗せたラフィオが駆ける。上のハンターが矢を放てば、さすがにティアラも無視できない。振り返りながら横に避けて、矢はやり過ごせたものの直後に迫るラフィオの蹴りには対処できなかった。


「キエラ逃げて!」


 倒れながら叫ぶティアラ。

 草原の上に放り出されたキエラは、妖精の姿では走れない。前足が片方ないからな。だから少女の姿になって、小屋の方へ駆ける。


 しかし彼女は足も怪我している。すぐに倒れて這うようにして小屋へと逃げていった。


「ティアラは任せた!」


 ラフィオは俺とセイバーに向けて言うと、真っ直ぐキエラを追いかけていく。



――――



 穴の向こうに消えたセイバーたちを、ライナーもバーサーカーも呆然と見送ることしかできなかった。

 まあ、呆然としてたのは一瞬だけだったけれど。


「ほんっと! 勝手にやっちゃうんだからセイバーは! しかも悠馬まで連れて行っちゃうし! なにより気に入らないのは! 将来あれが義理のお姉さんになるだろうってこと!」

「結婚まで考えてるのか」

「当然! なんのために今までお姉さん呼ばわりしてきたと思ってんの!」

「覚悟決まってんなー。やっぱ悠馬の彼女はお前で正解だと思う」

「えへへー。でしょ! まあ、あの愛奈さんをどうにかして真人間にさせなきゃいけないっていうのが、将来の悩みだけどね!」

「将来のこと考えてるのか。気が早すぎねえか?」

「こういうのは早ければ早いほどいいの! おっと」


 いつまでもお喋りをしてるわけにはいかない。フィアイーターも黒タイツも、まだまだここにいるのだから。迫ってきた黒タイツに回し蹴りを当てて首を折る。


「バーサーカー! あのフィアイーターひとりで倒せる!?」

「おう! 楽勝だ! あんな小さい奴に苦戦なんかしねえ!」


 そうとも。フィアイーターとしては小さめサイズ。手の内もわかっている。というか、さっき巨大なのを倒したところだ。弱体化したのに苦戦するなんてあり得ないだろうな。


「よし! じゃあわたしは黒タイツを全部片付けるね!」

「おう! でもいいのか? そんな地味な役割は嫌って言ってなかったか?」

「これが最後だし! それに、わたしのすべきことでもあるし!」


 頑張って、後で悠馬にいっぱい褒めてもらおう。


 そんな魂胆を抱えながら、ライナーは目の前の黒タイツを蹴り殺す。

 バーサーカーの周りにいる奴らから、片っ端から殺していく。どうせバーサーカーがフィアイーターを倒してしまったら、こいつらも消えるんだ。これはあくまで手伝い程度の仕事。


 まあ良いじゃないか。誰かの仕事を助ける仕事も、立派だ。片足だけでも誰かを支えられるのは幸せだ。


「おりゃぁぁぁぁぁ!」


 バーサーカーがフィアイーターの顔面を殴っていた。


 砲撃もできないし四足歩行だから手を使った攻撃もできない。ただ歩けるだけのシャチホコは、これまでで一番弱いフィアイーターの可能性すらあった。事実、殴られたシャチホコは横倒しになってしまう。これでも模布市のシンボルなんだけどな。あまり雑な扱いは……まあいいか。

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