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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-31.ティアラとバーサーカー

 不安定な状態にある中でも、ハンターは次々に矢を放っていた。胴体への攻撃は諦めて、下にいる黒タイツや、フィアイーターの毛皮の部分へ正確に矢を放つ。

 黒タイツは相変わらず一撃でやられるとしても、フィアイーターの毛皮部分はそうもいかないらしい。フィアイーターの額に矢が刺さっている一方で、それによる痛みは感じながらも動きに支障が出る様子はない。


 やっぱりあの毛皮、分厚いのだろうな。


「やっぱり! セイバーが穴を開けバーサーカーがこじ開けるパターンしかなさそうです! コアがどこにあるかは知らないですけど!」


 頭か胴体か。その判断はこっちからじゃつかない。


「コア自体はシャチホコの体にぶつけられた! キエラにぶつかった箇所も胴体だ! だからたぶん胴にある!」


 ラフィオが叫ぶ。そうか、どっちかというと硬い方にありそう、というわけだな。


「ふぃあああぁぁぁぁぁぁ!」


 体の上でラフィオがちょこまかと動き回り、宿敵ハンターが矢を射てくることにフィアイーターの我慢も限界へと達したらしい。

 その場でぐっと姿勢を落とした。後ろ足を大きく曲げたそれは、跳躍の前の踏ん張り。


 直後、巨大なフィアイーターの体が大きく跳ねた。


 俺たちの頭上を飛び越えたフィアイーターにより、太陽が遮られて影ができる。


「うわー!?」


 ラフィオもこの動きには耐えられず、フィアイーターの体から落ちてしまう。黒タイツを数体踏み潰しながら、しっかりと着地した。

 フィアイーターもまた、公園内に着地してこちらに向き直った。


 その途中、見つけたらしい。


 建物を。あるいは、そこに隠れている人たちの恐怖を。


 前に俺が入ったことがある、避難場所として使われていた公園の管理事務所。

 それがキエラに見つかった。中に何人の人間がいるかはわからないけれど、間違いなく人はいるらしい。


 フィアイーターには、恐怖の存在がわかるのだから。怪物が暴れる公園で建物の中に隠れるしかできず、震える人間の存在に気づいた。


「ふぃぁぁぁぁぁ!」

「させない!」


 フィアイーターが砲弾を放つ直前、ハンターがラフィオの上から矢を放った。それは横から、フィアイーターの目を正確に狙っている。真っ直ぐ飛んでくる矢に目を潰されることはさすがに恐れたか、フィアイーターは顔を逸した。だから砲弾も建物には直撃しなかった。


 屋根は大きく抉れたけれど。


 建物内から悲鳴があがる。その恐怖を集めるべく、フィアイーターがそちらに向かおうとした。


「姉ちゃん! 俺をあそこまで運んでくれ! 避難するまで守る!」

「わかったわ! けど間に合わないかも!」

「間に合わせてくれ!」


 俺を片手で抱えたセイバーが駆ける。けど、実際にフィアイーターがひとっ跳びするだけで建物へと直接ぶつかり被害を与えられるのだから、間に合わないことは明らか。

 それでも急ぐ意味はあって。


「おらゃー!」

「おらっ! 止まれ!」


 ライナーが地面を蹴ってフィアイーターの側面に体当たり。バーサーカーも奴の前足に組み付いて押す。これでフィアイーターの跳躍ができなくなった。

 黒タイツがバーサーカーを剥がそうと何体か襲ってきた。バーサーカーは気にすることなく、手を伸ばしてきた黒タイツの手首を逆に握り直し、ぶん回した。周りの黒タイツをなぎ倒し、ついでにフィアイーターの足にもぶつける。

 とにかく跳びはねるのを邪魔するために。


 もちろん、敵も現状のままやられるわけにはいかない。

 組み付き続ける魔法少女たちを剥がそうと試みる。


 そのために使うのは黒タイツだけじゃなくて。


「離れて!」

「うおっ!? お前な!」


 ティアラがバーサーカーに掴みかかってきた。警戒すべき敵に、バーサーカーも向き合わざるをえない。ティアラの腕をバーサーカーが掴んだが、ティアラはそのまま相手の懐に潜りこもうとしてきた。

 バーサーカーは咄嗟に手を離して距離を取る。さらに突っ込んでくるティアラに対して、手近な所にいた不幸な黒タイツの首根っこを掴んでぶつけた。


「ごっ!?」


 苦しげな声と共にティアラは倒れた。


「どうだ効いたか!? 魔法少女の一撃だ! てめぇみたいな悪い奴には負けねえんだよ!」

「魔法少女……魔法少女!!」


 煽ってみたけれど、ティアラはむしろ勢いづいて顔を上げた。


「なんであんたみたいな! 乱暴な女が! 魔法少女になるの!? わたしの方がふさわしいのに!」


 ふさわしい? こいつは何を言ってるんだ。


「そんなこと知らねえよ! オレだって真剣に魔法少女になりたかった! それだけだ!」

「わたしだってなりたかった! 憧れてた! なのに! 家が貧乏だからチャンスがなかった!」

「そ、そうか」


 起き上がったティアラの剣幕にバーサーカーは気圧される。


 実際のところ、魔法少女になるチャンスがどういうものなのか、バーサーカーにはよくわからなかった。アユムがなれたのは、適正があっただけ。幸運なだけだった。

 でも、不幸だからなれなくても、今こうやって敵として戦っているのは違う。


 魔法少女になれなくても、味方として一緒に戦ってる奴はいるのだから。


 それに。


「家のせいにするんじゃねえ! オレだってな! ド田舎の生まれだけどこうしてるんだ! 最初から都会住みの恵まれた奴が贅沢言うな!」

「あああああああっ!」


 うん、こいつの生まれってなんだっけ。なにか事情があった気がするけど覚えてない。

 とにかく、わがまま言ってることはわかった。それが気に入らない。


 吹っ切れたというか、ティアラの心情をあまり理解する気にならないバーサーカーが、起き上がった彼女の顔面を殴る。ティアラが忌々しげに叫んだけど、その意味を知る気もなかった。

 再度倒れたティアラに止めを刺そうとしたけれど、他の黒タイツが襲ってきた。しかもフィアイーターがまた跳躍しようとしている。


 バーサーカーはそっちを優先して、フィアイーターの足に組み付いて跳ぶのを阻止。


「ふぃぁぁぁぁー」


 どこまでも邪魔してくる小さな魔法少女たちに業を煮やしたフィアイーターが怒りの咆哮を上げてから、黒タイツをまた吐き出した。

 それが建物の方へと殺到していく。

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