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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-29.恐怖の砲撃

 そしてハンターはラフィオに飛び乗る。コスプレ魔法少女に変身した剛も、遠慮がちにラフィオの上に乗った。

 俺の場合は。


「悠馬、行こ!」


 ライナーが手を差し伸べてくれた。俺の彼女だから。少し気恥ずかしいけれど、いい気分だった。



 模布城まで、魔法少女たちの足で一気に向かう。

 眼下には俺たちの住む街。いつもと比べて静かな気がした。


『警察が付近一体に交通規制をかけて、歩道も規制線を張っているわ。だから規制範囲内には人は入り込めない。出られはするけれど』


 片手でライナーにしがみつきながら、片手で樋口の話をスマホで聞く。


『規制範囲が大きいから、中に住んでる人も多い。避難を促しているけど、逃げ遅れた人もいるかも。だから市民を守りながら戦うことになるかもしれないわ』

「わかった。なんとかする!」

『警察も、そうならないようにしてるけどね。とにかく頑張って!』


 頑張れ、か。



 フィアイーターの巨大さから、規制線はかなりの広範囲に敷かれてるようだった。模布城の天守からそれなりに距離があるところに警官が立っていて、規制線の外側に野次馬たちが集まっていた。

 そうだな。フィアイーターがいる城から離れてるもんな。ここには危険はないって思うよな。


 そんな彼らの中に、俺たちに気づいた者がいるらしい。歓声が上がった。


 街の平和を守ってくれ。そんな声も聞こえた。


「ライナー。黒タイツの数が多い。俺たちが来るまでに、規制線の範囲の内側に散らばってると思う」

「だよねー。うん、わたしが走り回って、片っ端から倒していけばいいんだよねー」

「いや。今回は俺と一緒にいてくれ。フィアイーターを倒すのが最優先だ。散らばった黒タイツは無視して、フィアイーターを守ってる奴だけ倒せばいい」

「え? なんで?」

「範囲が広すぎる」


 ライナーにとって負担だろう。


 それに範囲が広いとなると、散らばる黒タイツの密度も薄くなる。避難が遅れた住民や、規制線の外に立っている野次馬に襲いかかるとしても、数体でしかないだろう。


「樋口。散らばった黒タイツの退治は警官に任せる」

『あなたも警察の方針に口出せるほど偉くなったのね。でもいいわ。やってあげる。県警の総力をあげて避難誘導してるところだし、黒タイツを見かけたら発砲を許可する。そういう方針で行くみたいよ』

「ありがとう」

「えへへー。悠馬、わたしのやりたい戦い方、やらせてくれるんだね。雑魚敵の掃除なんかつまんないもんね!」


 そういう意味でもなくて、単に強すぎるフィアイーターの相手をするために戦力を集めたいだけなんだけれどな。

 でも実は、遥の気持ちに応えたいって想いもあった。


「ああ。そうだ」

「よし! 頑張っちゃいますかー!」


 俺を運ぶライナーが速度を上げる。元々他の魔法少女よりも優れた脚力を持っているから、自然と先行することになる。


 そして、藻布城公園へと侵攻していくフィアイーターを見つけた。


「ふぃ、ふぃ、ふぃぁぁぁぁぁ! 壊す! 世界を壊す! ふぃぁぁぁぁぁ!」


 咆哮と共に、フィアイーターは大きく口を開けた。そして、そこから何かが発射される。

 狙うのは、公園のシンボルであるオランダ風車。それが直撃した瞬間、風車が粉々に砕けた。


「え、ちょ! あれなに!?」

「砲撃に見えた。なんか弾を発射して壊す的な」

「ふぃぁぁぁぁぁ!」

「うわー!?」


 フィアイーターがこちらを見つけたらしく、再度砲撃を仕掛けてきた。

 見た感じ、実態のない黒い色のエネルギー体なんだと思う。材料はなんだろう。魔力か、それとも。


「恐怖かな?」

「え?」

「これまで集めた恐怖を弾丸にして発射してるんだ。風車を一撃で壊すだけの威力があるなら、他の建物もあっさり壊せるし人は死ぬ。だから恐怖がさらに集まる」

「恐怖を使って恐怖を集めて、世界を壊し尽くすまで暴れるってこと!?」

「たぶんそう!」

「よし! じゃあわたしたちが勝てる!」


 俺を降ろしたライナーは、フィアイーターの前に仁王立ちする。


「わたしたちはフィアイーターを恐れない! 恐怖なんか与えない! だからあいつは恐怖を消費するだけで終わる!」


 ああ。その通りだ。

 奴が規制線の内側にいる限り、ここには恐怖とは無縁の魔法少女しかいない。


 ここに封じ込めていれば、フィアイーターは弱体化するだけ。


「ふぃぁぁぁ……」


 ライナーの声が聞こえているのかは知らないけれど、フィアイーターは忌々しそうに唸ると口を開けた。

 吐き出されたのは砲弾ではなく、大量の黒タイツだった。


 魔法少女たちに恐怖を与えられないなら、規制線の内外の市民たちから集めるしかない。

 けどいいのだろうか。黒タイツだって無限ではない。あれはたしか、コアを削った破片のはずだ。


 作るたびに本体は弱体化していく。


「ライナー。黒タイツの中を走り回って、フィアイーターを撹乱してくれ。砲撃を引き寄せるんだ。……黒タイツを巻き添えにしてもいい」

「おっけー!」


 ライナーがダッシュする。黒タイツの群れに向かっていって、先頭にいた黒タイツの頭を膝蹴りにして一撃で殺す。

 彼女の注意はフィアイーターに向いていて、自身を目で追っているのを確認しつつ、黒タイツの群れの中で暴れてフィアイーター本体へと接近していく。


 迫る敵を警戒するフィアイーターが砲弾を発射。ライナーは黒タイツの一体を蹴り、その勢いで移動して回避した。着弾した砲撃は黒タイツを数体巻き添えにした。


「先に始めないでよ! ていうか、なにあれ!? あいつ何を吐き出してるの!?」

「恐怖を固めた砲撃だよ!」


 セイバーたちも駆けつけてきた。

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