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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-28.決戦の朝

 翌朝。いつも通りの時間に起きた俺は、ほぼ同じ時間に起きていた遥たちと一緒に朝食を作る。


「完成したよ、石が」


 魔法陣の中心から石を拾ったラフィオが静かに言う。

 紫色の澄んだ宝石だ。



「これで向こうに攻め込める。食事をしたらすぐに向かおう」

「ご飯、もうすぐできるよー」

「わかった。姉ちゃんを起こしてくる」


 ここのキッチンにもフライパンとお玉は用意されている。普通の使い方がされることがほとんどだけど、今日は違った。

 俺と同じタイミングで寝たのに起きるのはずっと遅い愛奈は、普段とは違う環境でもすやすや呑気に寝息を立てていて。


 その幸せそうな表情に多少の申し訳無さも感じるけれど、俺は心を鬼にした。


「起きろ」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 フライパンとお玉が立てる騒音に、愛奈は条件反射で飛び起きる。


「なによ!? 毎朝毎朝! もう少し優しく起こしてくれてもいいじゃない!」

「優しくしたら起きないだろ。それより姉ちゃん。宝石が完成した。あと朝ごはんも。食べたら向こうに行くぞ」

「そっかー。ついに行くのねー。うえー。行きましょう行きましょう」


 まだ寝ぼけ気味の愛奈だけど、フラフラと階段を降りていく。

 食卓にはみんな座っていた。遥もアユムもつむぎもラフィオも。

 俺と愛奈も並んで座って。


「いただきます」


 手を合わせて食べ始める。

 テレビはつけてない。見てもあまり有益な情報は得られなさそうだ。朝は全国ネットの情報番組くらいしかやってないだろうし。


 それよりは、みんなで他愛もないお喋りをしながら食事をしたほうがいい。


 やがて、玄関が開いた。


「みんなおはよう。宝石は出来たかしら?」


 さすがにこの家に全員は泊まれないと、外泊していた樋口たちが来た。


「ああ。できたよ。もう少ししたら使う」

「そう。それはなにより」

「皆さん。昨日、テレビ局と話してきました。テレビもふもふとしては、魔法少女の皆さんの個人を特定するような放送はしません。皆さんの活躍を伝え、応援する内容だけを放送します」

「みんながみんな、そういう良識だけ持ってればいいのだけどね」

「そしてテレビもふもふは、今日は一日キー局からのネット放送は映さず、うちのスタジオから魔法少女の応援放送をすることになりました」

「マジかよ」


 澁谷の説明に驚いて、俺はすぐにリモコンを操作。そういうことなら点けとけば良かった。

 いつもなら夕方の放送で見るスタジオに、テレビもふもふのアナウンサーや市内の有識者を名乗る人間が座っていて、魔法少女の戦いを振り返っていた。


 俺たちに好意的な内容だった。そして、正体を探る動きには批判的だった。


「マスコミとしては、こういう協力しかできません」

「十分だよ。助かっている。……澁谷に協力を求めたこと、間違いじゃなかった」

「ありがとうございます」

「都会はテレビの態度も上品だよな。うちの田舎だと、こうはいかない」

「そういうものなの?」

「いやまあ、テレビ作ってるのは田舎の中でも都会みたいな所だから、それなりに品がいい感じにしようとはしてるんだけど。でも田舎者根性が抜けてないっていうか。噂話が大好きな性格が抜けてないからなー」

「あー。そういうのは田舎の方が陰湿なイメージあるー」


 それは偏見だと思うけどな。都会でも、そういう奴らがいるからテレビがわざわざ注意喚起しなきゃいけないわけで。

 それでもアユムにとっては、今の環境が心地良いってことらしい。



 そんな話をしている間に、俺たちは朝食を食べ終わっていた。

 洗い物をきちんとして、その間にラフィオは石が問題なく作動しそうなことを確認して。それじゃあ行くかとなった時に。


 スマホが警報を鳴らした。


 こっちの世界にフィアイーター、というかキエラが戻ってきたらしい。


「まったく。もう少し待てなかったものかな」

「俺たちもゆっくりしすぎてたと思うけどな」

「それはそうだね」


 ラフィオは余裕といった様子で、テレビの方を見る。画面が切り替わって、フィアイーターがいる場所の映像に切り替わった。


 模布城の敷地内だ。戻ってくるならここと、マスコミも警戒していたのだろうな。あらかじめスタッフを配置しておいたから、現地の映像がすぐに来る。

 昨日ラフィオから伝え聞いていたままの怪物が、天守に襲いかかっていた。尾びれを掲げた高さが十メートル弱ある、ほとんど怪獣と言っていい大きさ。顔がキエラだというのが、歪な雰囲気を漂わせていた。


『ふぃ、ふぃぁぁぁぁ』


 どこか苦しげな声を上げてから、フィアイーターは口から何かを吐き出した。コアの小さな破片は地面に落ちると、そのひとつひとつが黒タイツへと変わっていく。

 いつもよりもずっと多い大軍勢だった。


「元のコアが大きいから、黒タイツも多めに出せるってことなのかな」

「冷静に分析してる場合じゃないわよ。もしもし? 県警に呼びかけて。動ける警官を総動員して避難誘導と黒タイツたちの排除をするの。機動隊動かして!」


 樋口が電話をかけている。警察の誰かにだろう。

 さすがに黒タイツが多すぎるから、警察の力を借りられるのはありがたい。


 県警の人間でもない樋口がこっちの警察を動かせるのは、これまで活躍してきた成果のためか。


「レールガンも用意しています。今、現場に急行してるところです」

「剛くんも準備できてるみたいだよー。ちょっとそこの陰で着替えてるから、連れて行ってあげて」


 澁谷と麻美も伝えてくれた。

 よし、行くか。


 俺は覆面を被り、車椅子に隠されているナイフを手に取る。ラフィオも巨大化した。紫色の宝石はしっかりと持っている。

 魔法少女たちも、それぞれの宝石に手を触れた。


「ライトアップ! シャイニーセイバー!」

「ダッシュ! シャイニーライナー!」

「デストロイ! シャイニーハンター!」

「ビート! シャイニーバーサーカー!」


 世界を守る希望の戦士たちが、一斉に変身した。


「闇を切り裂く鋭き刃! 魔法少女シャイニーセイバー!」

「闇を蹴散らす疾き弾丸! 魔法少女シャイニーライナー!」

「闇を射抜く精緻なる狩人! 魔法少女シャイニーハンター!」

「闇を砕く鋼の意志! 魔法少女シャイニーバーサーカー!」

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