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15-26.友達になれる

『お姉ちゃん!? 無事だったの!? 今どこ!?』

「安全なところです! 他の魔法少女とか悠馬とかと一緒にいます! 明日ちょっと大きな戦いがあるから、できたら避難してください! どこが安全かわからないけど! とにかくわたしは大丈夫!」


 と、言うべきことを先に伝えて。


「それより! わたしが魔法少女だって前から知ってたの!?」

『……うん。黙っててごめんなさい。けど、内緒にしておくべきことなのはわかってたから、誰にも言わなかったの。でも、目の前で見たらすぐにわかるよ。ていうか、わたしの名前呼びかけてたし』

「あう……」

『それに、走り方もそっくりだった。わたし、お姉ちゃんのことずっと見えたから。わかるの』

「そっか……。ごめんね、彼方。秘密を抱えさせたりして。でもありがとう」

『うん。それでお姉ちゃん、これからどうするの?』

「戦います。異世界から来た友達を守るために。それから、わたしの街を守るために。家族や彼氏が住む街のために」

『そっか。わたしたちのために。……悠馬さんのため?』

「うん。そう。わたしたち、ずっと付き合ってますから!」


 彼方は最初から、わたしたちが正式な恋人だって思っているはず。だからこんな言い方。

 でも、正式に恋人になったって喜びも伝えたい。


「ふふん。バレンタインデーの日に、ちょっと気合い入れて告白し直したら、悠馬もすっごく喜んでくれて。わたしたちの愛は本物なんだなってわかりました!」

『こ、告白のし直し?』

「こういうのは、何回やってもいいものだよー」

『そ、そうなんだ……わたしも好きな人が出来たら、その気持ちわかるのかな』

「きっとわかるよー。あ、でも彼方には恋愛はまだ早いかなー」

『子供扱いしないで。わたしも好きな男の子がきっと出来るから』

「おおう。妹の成長は早い……まあ、そんな感じで。わたしは戦わなきゃいけないんです。わたしの戦いは、その他多くの人のため。……ごめんね。だからまだ、家には帰れない。お父さんやお母さんにも、そう伝えてくれるかな?」

「そっか。わかった。……お姉ちゃん」

「うん」

『がんばってね。あ、そうだ。こういう動画がネットに投稿されてるよ』

「動画?」


 メッセージで、彼方からURLが送られてきた。動画投稿サイトのものだ。


 タイトルは「わたしは魔法少女に助けられました」動画のチャンネルは見たことがないもの。有名でもない。けどなんとなく、どんな組織かは察せられる。

 難しい名前の難病を患っている人のコミュニティだ。


 動画を再生すると、見知った顔が車椅子に座ってカメラを見ていた。


『わたしは遠藤更紗。手足の筋肉が動かなくなる病気で、車椅子生活をしています。去年の夏まで模布市に住んでいました。怪物騒ぎにも巻き込まれて、危ない目に遭ったこともありました』

「更紗ちゃん……」


 東京へと引っ越した彼女が、カメラに向かって神妙な顔をして語りかけている。


『その当時のわたしは、とても失礼な性格をしていました。自分だけが可哀想だと思いこんで、手を貸してくれる人たちの親切を当たり前だと思っていました。そんな時、怪物に襲われて。魔法少女や覆面の男から、大切なことを学びました』


 過去の自分の愚かさについて話すのは、どれだけ勇気がいるだろう。けれど更紗はもう逃げたりはしなかった。


『覆面の男からは、人に感謝することの大切さ。それから魔法少女からは、障害と向き合うことについて。……わたしも、魔法少女の正体について、世間があれこれ言っていることは知っています。黄色い魔法少女の正体が、車椅子の女の子なことも』


 やっぱり自分のこと、世間に知られちゃったんだ。わかってたことだけど、更紗に言われてちょっとだけ気が沈んだ。けれど更紗はさらに続けた。


『あの時わたしは、車椅子のあの人は障害者としてまだ恵まれてると、とても失礼なことを言ってしまって。でもあの人はそれでもわたしを見捨てなかった。正面から向き合って、わたしがどう生きるべきか教えてくれた。こんな体のわたしでも、普通に生きていいって教えてくれた。……魔法少女って、そういう人なんです。だからみんな、魔法少女たちのことを見守っていてください。悪く言わないでください。礼儀をもって付き合えば、あの人たちは友達になれます。……みんなも、わたしの友達と、ちゃんと接してあげてください』


 頭を下げることはできず、動画の中の更紗は僅かに顔を伏せるだけだった。

 でも、言うべきことは言ってくれた。


『お姉ちゃん。ネットでどう書かれても関係ないよ。更紗の言うことが正しいし、こういう意見の方がずっと多いよ。だからお姉ちゃん、胸を張って。……わたしの自慢のお姉ちゃんでい続けて』

「うん! そうだよね! ……まさか更紗ちゃんに助けられる時が来るなんてなー。立派になったね、あの子。……すごく嬉しい。彼方、わたし頑張るよ。あのね、魔法少女としての戦いは、たぶん明日終わる。一番大きな戦いになって、終わる」

『わかった。頑張って。応援以外に、わたしにできることはある?』

「無事でいて」

『うん。わかった。あのねお姉ちゃん。他にも、魔法少女を応援する動画は色々投稿されててね――』

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