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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-25.着信履歴

 樋口が言っていた通り、飲み食いする時間は程々で終わり、みんなさっさと寝ることになった。

 明日は決戦だからな。寝不足で臨むわけにはいかない。


 リビングの隣にある和室で、ラフィオとつむぎは一緒に寝ることになった。

 魔法陣のすぐ近くにいたいラフィオと、それから離れたくないと主張するつむぎ。こうなってしまったら仕方がない。

 一緒に夜を過ごそう。


「うん。大丈夫だよ。悠馬さんの家に人が集まったりはしてない。うん、近所の人への取材とかも来てないから。大丈夫。わかった。チャイムが鳴っても出ないね」


 つむぎがスマホで話している。母親とだ。


 彼女の両親も、親しくしているお隣さんが魔法少女と深く関わっていると知ってしまったらしい。仕事熱心でも、地元の大ニュースを見逃すことはないか。

 幸い、お隣さんと自分の娘が結びつくことはなかった。遥やアユムとはお正月に対面してたけど、悠馬の知り合いが一度に来ただけという認識でしかなかった。


 むしろ、マスコミが自宅を特定して押しかけて、取材と称してお隣さんのつむぎに話しかけたりする心配の方が勝っているらしい。


 今夜も両親は帰れないらしいな。だから、家にいないつむぎに気づくことはない。娘が魔法少女であることにも気づかない。


「ねえ、ラフィオ」

「なんだい?」

「お父さんもお母さんも、わたしが魔法少女なのを知らない。でも、ずっと隠してるわけにはいかないよね」

「それは、どうして?」

「ラフィオのこと、彼氏ですって紹介しないといけない」

「…………」

「将来のこと、考えるにはまだ早いと思うよ。結婚とか、ラフィオがいつも言ってるように気が早い。でも、わたしはラフィオとずっと一緒にいたいの」

「うん。それは僕も同じ気持ちだ」

「だったら、ラフィオのことをちゃんと、お父さんたちに話さないと」


 つむぎがこちらに寄りかかってくる。少年の姿のラフィオは、それを支えてやった。


 その通りだ。ラフィオは妖精で、一緒に住むとなったらその事実を隠すのは難しい。というか、つむぎの両親に一生嘘を付き続けるのも嫌だ。


 それに、ラフィオ自身にも思うことはあった。

 この戦いが終わっても、ラフィオはこの世界に居続けるつもりだ。けど、ここの世界に戸籍はない。


 日陰者として生きるのは辛い。結婚もできない。事実婚ってのも世の中にはあるらしいけど、できたらそういうのは正式なのでしたい。


 世間に、ラフィオがこの街で普段どう過ごしているのか、人間としての姿を世間に明かしてもいいと思う。テレビには、獣か妖精の姿でしか出てこなかったけど、人間として出てもいいかな。そして、堂々とこの街で過ごすようになって、あと市民にしてもらえるように市長とかにお願いしよう。

 そうしたら、つむぎと一緒に堂々と学校に通えるだろうな。それは楽しそうだ。結婚は気が早いにしても、そういう普通の人間の日々を過ごしたかった。


 だから世間にラフィオという存在をちゃんと見せるべき。そう考えていた。


 その第一歩として、まずはつむぎの両親に自分のことを明かす。


「いいと思うよ。戦いが終わったら、僕は両親に挨拶する」

「うんっ!」


 ぎゅっと抱きしめられて、その感触がとても幸せに思えた。




――――



 一軒家だから、寝室はそれなりにある。とはいえ魔法少女全員に個室を与えるほどではない。元々は三人家族用の家だったし。

今日も遥はアユムと一緒の部屋で寝る。


「あー。クラスの奴らから連絡大量に来てる。電話もメッセも。今は落ち着いてるけどな」


 アユムが切っていたスマホの電源をようやく入れて、その通知の多さにうんざりした声を上げた。

 それでもアユムの場合は、まだマシだと思う。実家には魔法少女のこと知られてないから。悠馬という男と知り合いのアユムってことしかキエラは言ってなくて、地元の知り合いしか反応ない。

 家族から連絡があっても、都会なんだから同じ名前の子なんて大勢いるでごまかせる。


 遥の場合は違った。家族にバレている。そこからひっきりなしに電話してくるはずだ。

 そして、テレビに出演したこともあるから、顔が広いって面もある。今頃、あのドキュメンタリーのキャプチャ画面とか切り取り動画がネットで拡散されているに違いない。


 片足の無い車椅子の少女。そんな目立つ姿の遥が魔法少女だと、模布市民の多くが認識したことだろう。


「うー。陸上部のみんなには、剛先輩が説得してくれるとして……家族には連絡取らないとだよね」

「そうだなー。いけるか?」

「わかんない」


 こっちを気遣ってくれるアユムをありがたく思いながら、遥は意を決してスマホの電源を入れた。


 大量の通知が来ているのがわかる。ほとんどが、こちらの心配をするもの。

 中学時代のそんなに仲良くなかった知り合いからもメッセージが来てたな。これも心配なのだろうけど、話題の人にコンタクトを取って情報を引き出したいとか思ってそうだ。ネットに投稿して再生数稼ぎに使わせる気にはならない。


 そして、家族から何度も電話が来ていた。メッセージも。今どこにいるのか。電話に出てくれ。心配している。そんな内容。

 両親の今の気持ちを考えると、胸が痛くなる。


 でも、話したら戻ってこいって言われるだろうな。危ないことはするなって。


 そうもいかない。わたしは戦わなきゃいけないから。


 そんな逡巡をしながらメッセージを見ていくと、ひとつだけ異質なものがあった。

 妹からだった。


『わたしはお姉ちゃんが魔法少女だったこと、前から知ってたよ』

『ニコニコ園の時から』

「えっ! ちょっ!? どういうこと!?」


 思わず彼方のスマホに電話をかけた。

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