表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

728/746

15-23.あの時のプリン

「すっごくよくわからないことになってるけど、困った時はとりあえずご飯食べて、お腹いっぱいにしたら幸せになれるよ。どうするかは、その後考えればいいってさ。みんなー。ラフィオが戻って来ました!」


 ラフィオの手を引いて玄関を上がる。リビングには、確かに食卓が並んでいた。


「おう。おかえり」

「いきなり飛び出したって聞いて慌てたわよー。でも帰ってきてくれたのね」

「頑張ったんでしょ? お腹空いてるよね?」

「オレたちも大変だけど、ラフィオが一番大変な思いしてるんだよな。とりあえず食え」


 悠馬と魔法少女たちが笑顔で待っていた。


 違う。君たちが一番大変なはずなんだ。


「み、みんなが魔法少女と覆面男だってバレて、それで、その」

「まあねー。さっきからスマホ鳴りっぱなし。友達や家族から。心配になってるのはわかるけど、ひとつひとつ相手はしてられないので、とりあえず電源落としました!」

「都会に来てスマホの便利さを知ったけど、たまには使わないのもありだな。なんか、そういう都会の言葉もあるらしいし」

「デジタルデトックスってやつね。まあ、スマホ以外にもデジタルはうちにあるけど。とりあえずテレビも消して、世間がわたしたちをどう思ってるかなんか忘れましょう」


 おずおずと席についたラフィオの頭を、愛奈はそっと撫でた。


「こういう時こそ、家族で過ごすべきよね」

「家族……僕は、君たちの家族でいいのかい?」

「ラフィオ、プリン食べるか?」


 悠馬がキッチンへ行って、冷蔵庫からプリンを出して渡してきた。


「プリン……嬉しいけど、食べてる場合なのかい?」

「もちろん。……ラフィオと出会って初めて俺の家に来たとき、プリンを美味しそうに食べる様子を見て、俺たちも幸せになった」

「?」

「死んだ兄貴、春馬がな、好きだったんだよ。プリン。ラフィオと同じように、ニコニコしながら食べてた」

「それは……本当に?」

「そうだ。じゃないと、墓参りにプリンを供えたりしない」

「あ……」


 そうだ。愛奈と悠馬は、家族の墓に行く際、確かにプリンを買ってお供えしていた。


 そもそも、初めてラフィオがプリンを食べた時の状況も謎だった。なんで食生活に無頓着だった双里家の冷蔵庫に、悠馬も愛奈も別に好きではないプリンがあったのか。

 亡くなった春馬の好物だから、無意識に買ってしまっていたんだろうな。死後何年も経ってるのに、どうしても思い出してしまって。


「兄貴が帰ってきたとは思わない。けど確かに、あの時俺は家族がまた増えたと思ったんだ。失うだけが家族じゃない。家族はまた作れる。ラフィオ、お前を見て思ったんだよ」

「……僕は、君たちの家族なんだね」


 最初から、ずっとそうだった。


 スプーンですくって食べるプリンは、どこにでも売ってるようなメーカー製の安いやつ。

 でも、一番おいしかった。


「僕は幸せ者だな」

「いや、幸せなのは俺の方だよ」

「……幸せはみんなで分け合えるものなんだね」

「ああ、そのとおりだ」

「さ、ご飯食べましょう。今夜は飲んでいいかしら」

「いいんじゃないですか? 飲み過ぎは駄目ですけど」

「遥ちゃん優しいー」

「お義姉さんのこと、大切にしたいので」

「なんか、お姉さんの言い方変じゃなかった?」

「変じゃないです。これが普通なんです」

「そっかー。じゃあ飲むわよー。乾杯!」

「いただきます」


 酒を飲むのは愛奈だけだ。けど、一緒に食卓を囲んでいるのは同じ。

 幸せだった。



――――



「はぁ……はぁ……ふぃ、ふぃあ……」


 エデルード世界の草原に、巨大なシャチホコが横たわっていた。

 シャチホコと言うべきかはよくわからない。ティアラは模布市の人間だけど、正直シャチホコの実物は見たことがなかった。お出かけなんて、お母さんは連れて行ってくれなかったから。


 テレビとかで時々見るシャチホコは、こんな形だった気がする。ティアラと混ざっているけれど。


「なんで。なんでこんなことに……」

「キエラ、わたしと話せる?」

「ええ。なんとかね」

「苦しい?」

「それは、かなりマシになった、ふぃあ。その代わり変な感じ。自分の体が自分じゃないみたい。言葉も、時々変に……ふぃあ」

「元の体に戻れそう?」

「わからない。フィアイーターの分離なんて考えたこともない。……でもできるかも。ううん、方法は見つけてみせる……」


 じゃないと、ラフィオと一緒になれないものね。この世界を作ることもできない。神様だっけ。それとの約束が果たせない。


「世界を壊すには、こっちの姿の方が都合がいいわ。だから攻め込むつもり。でも……ああ。ラフィオ……」


 キエラがこんな姿になったのはラフィオのせいだ。

 こんなことするなんて。キエラはそう本気で悲しんでいた。


「ふぃあ……なんとか目を覚まさせないと。わたしがやるの。母親で、妻なのだから。やらないと。あの子に言って聞かせないと……」

「うん。そうだよね。キエラがやらないといけないんだよ。いける?」

「この体に慣れて、自由に動けるようになったら、あの世界に攻め込むわ。見てなさい魔法少女たち……」


 フィアイーターになってもキエラはキエラで、何も諦めてはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ