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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-20.メインコア

 メインコアに恐怖が集まりきるのが近いのだろう。凶悪なるフィアイーターを作って世界を滅ぼす。その日はすぐに来るはずだ。下手をすれば明日かもしれない。

 こちらからも攻め込む準備をしないと。


 だからふたりは拠点としている家へと向かった。


 魔法陣に置かれている石を回収して、それを河原に戻して新しい石と交換する。

 繰り返しやっている作業だけど、休み時間の間に終わらせないとな。


「ねえ、ラフィオ」

「なんだい?」

「メインコアから生まれるフィアイーターって、どんなのなの?」

「基本はフィアイーターだから、この世界の物と融合させて作る。だから姿はキエラ次第さ。けど、かなり強いらしい。それに巨大だ」

「そっか。倒せるの?」

「戦うしかないさ。きっと大丈夫」

「うん」


 そう思うしかなかった。


 石を交換して、すぐに小学校へと戻っていく。そして表面的には、何も変わらない日常へと戻っていった。



――――



「見ちゃった! 見ちゃった! 悠馬って奴、こっちに見られてるとも知らないで素顔出して戦ってるし! しかも魔法少女と抱き合って! 馬鹿みたい! けど確定ね! 覆面男が悠馬で遥って奴と恋人! あと緑の奴はアユムって名前なのね! 三人は知り合い! こんなのもう、個人特定したみたいなものじゃない!」


 無人の屋上で、妖精姿のキエラは仰向けになり、手足をバタつかせて喜びを表現していた。


 フィアイーターを作った後に屋上へ残ったのは、恐怖が集まる様をちゃんと見ておきたいから。あまり考えなかったから、人の少ない場所で作ってしまったけれど、病院内でしっかり恐怖は集まった。

 そこに、思ったよりも早く覆面男、悠馬が来たのは想定外。偶然にも彼の近くにフィアイーターを出現させてしまったようだ。


 うん。偶然だけど、きっとこれは運命だ。あるいは、自分に利のある選択を無意識にしてしまう、天才の所業とかだ。我ながら素晴らしいわね。


 なんの事情があったのかは知らないけれど、悠馬は素顔で戦っていた。油断してるとしか言いようがない。とにかく、奴らの情報は手に入った。


 肝心の青い魔法少女。ラフィオの恋人を名乗る極悪人の名前だけは、どうしてもわからないままだけれど。本当にムカつく。なんであいつだけ。


「キエラ」

「あら、ティアラどうしたの?」


 ふと、自分の横に穴が作られて、ティアラが顔を出した。


「どうしたのって。コアの様子が変わったから教えに来たの。なんか、すごく光ってる。黒い光」

「そう! ついに恐怖が集まったのね! やったやった!」


 こんなに良いことばかり続くなんて。


 キエラはさっそくエデルード世界へと戻った。小屋の近くに浮いている、大きなコア。直径一メートルほどの大きさがあるそれは、確かに光を放っていた。

 黒い光。奇妙な表現だけど、そう呼ぶしかないものだった。


「さーて。これで最強のフィアイーターを作るわよ。何から作るのがいいかしら。ねえティアラ。あなたの街に、怪物はいない?」

「怪物?」

「ええ。フィアイーターにするのにふさわしい、怪物みたいなもの」

「ええっと。モモちゃん人形は昨日壊れちゃったし……」

「そうね。あの人形みたいな、恐ろしくて大きな怪物」

「だったら……あれかなあ。模布城のてっぺんにね、金色の魚? みたいなのがあるの。シャチホコって言うんだけど。模布市のシンボルみたいなもの」

「なにそれ素敵! いいわね! この街のシンボルを怪物に変えてしまったら、人間たちは絶望する! わたしたちの力の前にひれ伏すのよ! それってすごく素敵だと思うわ!」

「ひれ伏せさせて、どうするの?」

「……それはもちろん、滅ぼすのよ。人間は皆殺し! フィアイーターに世界を蹂躙させるの! そうしたらこんな世界を守るとか、ラフィオも言わなくなるわ!」

「なるほど……え、じゃあひれ伏すとか別にどっちでもいい気がするけど」

「いいえティアラ。大事なことよ。人々が絶望したら、抵抗する気力もなくなる。魔法少女もね。それにこのフィアイーターは恐怖で強くなるの。これまでのフィアイーターとは違って、集めた恐怖がちゃんと自分の所に入る。そりゃ暴れがいがあるってことじゃない」

「そっか。そうだよね。うん、やろう。すぐにやろう!」

「ええ。でもその前に準備が必要ね。すぐに終わるけど、人間たちへの宣戦布告よ」



――――



 俺の記憶が戻った以上は、入院し続ける意味はない。


 お医者さんにもう一度体を診てもらって、異常がないことは確認済だ。明日の朝にも退院できると言ってもらった。

 さすがに今日は病院に泊まることになるけれど。


 愛奈も、明日からは仕事へ行かなきゃいけないという事実を残念がりながらも、戻った日常を喜んでいる。

 しかしこの手の日常は、やはり簡単に崩れ去るものらしい。


「今日のフィアイーターの件、ニュースであんまり扱ってないわねー」

「被害が少なかったからな」

「この病院の中で完結しちゃったものね」


 病室のテレビで夕方のローカル番組を、ふたりで眺めていた。澁谷が出ているやつだ。

 魔法少女関連の話は早々に切り上げられて、県内の話題のスイーツ店の取材の模様なんかが放送される。VTRが終わって、その店のスイーツがスタジオに持ち込まれて、澁谷含めた出演者たちが食べて感想を言い合う穏やかな時間が流れている。


 すると突然、スタジオ内の空間に穴が開いた。何度も目にしてきたものだ。キエラたちが、向こうの世界からこちらの世界へ行き来するための穴だ。


 それを、生放送中のテレビカメラの前で堂々とやってのけた。

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