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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-19.いつもの感じ

 とりあえず面倒なことにはならないと、ライナーたちも安堵した様子で、ほっとした顔を見せた。

 そうだ。


「バーサーカー。この子、魔法少女の中ではお前が推しらしいぞ」

「へー。良かったじゃん。付き合ってあげなよ」

「やめろそういうことは。……でもありがとうな。握手するか?」

「うん! バーサーカーさん、強くて格好良くて尊敬してます! 街を守ってくれてありがとうございます!」


 立ち直ったらしいバーサーカーと、彼女のことを推してるのは本当らしい少年が固い握手をする。いい光景だな。


「あ。昼休み終わっちゃう。バーサーカー、帰るよ。悠馬、また夜にね!」

「おい待て! 告白のこと詳しく聞かせてもらうからな!」

「いいよー。放課後にねー!」

「休み時間他にもあるだろ!」

「あははー!」

「くっそ余裕あるなムカつく!」


 本当に、騒がしいなあ。けど、俺が知ってるふたりだった。よく知っている雰囲気。


 こういう騒がしさを見た時の心地よさまでも、俺はちゃんと覚えている。



 そのまま、歩きにくい少年に手を貸して階段を下ろしてやって病室まで連れて行ってやる。

 院内は、戦いが終わったことを察した様子で職員たちが戻ってき始めていた。俺たちは逃げ遅れた患者ということでお互い話をつけていて、魔法少女と関わったことも内緒にしておく。


 秘密を共有する快感を覚えてしまった少年は、何事もなく大人の質問を乗り切ってベッドに眠ってしまった。

 そして俺も自分の病室に戻る。


 そこに、いつの間にか戦いを終えていた愛奈が待ち構えていた。


 愛奈だって本当は逃げなきゃいけない一般人のはずだけど、怪物騒ぎが終わるまで院内に隠れていたで押し通したらしかった。

 とにかく。


「悠馬!」


 愛奈は自分の病室に戻った俺を見るなり抱きついてきた。


 セイバーとして戦いを終えてから、すぐにこっちに戻ってきたのだろう。俺を追いかけるよりも魔法少女としての戦いを優先して院内の黒タイツを倒していって人々の安全を守ったのはさすがだ。

 それはそうとして、俺のことは心配してたはず。だから無事な俺を見て、ぎゅっと抱きしめた。


「姉ちゃん、ごめん。屋上に仲良くなった患者がいて。満足に動けない体してるから、助けに行かないとって思って」

「だったら言ってくれればいいのに。わたしが助けに行ったわよ」

「うん。姉ちゃんはそうしてくれる。けど、駄目なんだ。俺じゃないと。姉ちゃんには、もっと大勢を助けてほしいから。魔法少女として」

「……悠馬は偉いわね」

「それは……うん、ありがとう。なあ姉ちゃん。俺、全部思い出したよ。魔法少女と一緒に戦ってたことも。この一年の思い出も」

「本当?」

「本当だ。戦ってたら思い出した」

「そう。なんというか、悠馬らしい……って言うべきではないのかもしれないけど。でも良かったわ」

「うん。それで。俺、遥と付き合うことにした。正式に」

「ほんと?」


 抱きついていた俺から少し離れて、顔をまじまじと見つめてきた。


「本当だ。さっきライナーたちが俺の戦ってる所に来てくれたから、好きだって伝えた。アユムも承知してる」

「そう。ならいいんだけど。わたしが戦ってる間に屋上でいちゃいちゃしてたことは、ちょっと気になるけど」

「してないから」


 いや、してたかもしれないな。


 とにかく愛奈は、俺の決断に反対することはなさそうで。


「なるほどねー。遥ちゃんか。まあいいんじゃない? 元から付き合ってたみたいなものだったし。面倒がなくていいわね」

「面倒とかで相手を決めるわけじゃないからな。俺は、遥と支え合う関係をこれからも続けたいって思ったんだよ」

「立派ねー。でもわたしも助かるわ」

「……なにが?」


 料理作ってくれることとか?


 いや、愛奈はもっと先を見ていた。


「あの子、本格的に義足にして、大学入ったら義足のアスリート目指すんでしょう? それこそパラリンピックとか」

「らしいな」

「有名人になれるわよ。テレビの取材とかたくさん来て、引退してからも義足タレントとして有名になったりして。そうでなくてもアスリートとして儲けたり、そこから指導者として立派な仕事をしたり。仮にアスリートとしての道が立ち行かなくなっても、あの子のことだから悠馬の専業主婦とかにはならなくて、自分の力で収入を得ようとする」

「……つまり?」

「悠馬と遥ちゃん。ダブルインカムの世帯に、養ってもらうことを考えれば、わたしもう働かなくてもいいかな」

「働け」

「やだー!」


 こいつは。どこまで本気で言ってるのかな。


 でも、こういう姉がいることが、幸せだって思えることは間違いなかった。



――――



 小学校が給食の後の休み時間に入るのと同時に、つむぎはラフィオを手に取って校舎から出た。先生のスマホが警報を鳴らして、フィアイーターが出たことはつむぎも知っているから。

 幸いにして、既にフィアイーターはいなくなった。他の魔法少女が頑張ったのだろう。


 三十分休みの時間に外に飛び出て全力のドッジボールを始めるエネルギッシュな子供たちを見ながら、つむぎはラフィオの体を服の中に隠しながら目立たない場所へ行く。


 いいんだけどね。なんというか。好きな人のお腹に押し付けられて真っ暗な場所で揺られるっていうの、なんか変な気分だ。いつものことなんだけど。

 とにかく、周りに人目がないことを確認してから、ラフィオはつむぎの服から這い出して獣化した。


「乗れ」

「ラフィオ。フィアイーターはもう倒されたんだよね?」

「うん。そこの心配はいらない。けど急がないと。宝石の完成を」


 キエラがこうもフィアイーターによる恐怖集めを急いでいるのには理由があるはず。そして考えられる可能性は多くはない。

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