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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-16.体が動く

 こういうのが日常の愛おしさなんだと思って、自然と笑みが溢れて。入院はともかく、こういうのがずっと続いてほしい気持ちはよくわかって。

 けど、世界はそれを許してはくれなかった。


 スマホから警報音が鳴った。フィアイーターが出たらしい。


「ちょっと! 昨日も出たでしょ! なんでこう! 毎日毎日! 悠馬、行ってくるわね! あなたはじっとしてて! てか出てきたのはここ!?」


 スマホの画面を見ながら愛奈が驚いてる。それを裏付けるように、館内にアナウンスが流れた。

 この病院の上階に怪物が現れたので、皆さん避難を開始してください、と。


「あー。避難かー。悠馬、あなたはお医者さんたちの指示に従って、外に出て。フィアイーターはお姉ちゃんに任せなさい」

「そうはいかない!」

「え、ちょっ!?」


 屋上ってことは、あの子がまだいるかもしれない。足の怪我で逃げることもできずに襲われているかも。


 既にコーラを飲みきって、退屈な病室に戻ってるかもしれなかった。けど、確かめないわけにはいかなかった。


 病室から飛び出した俺を追いかける愛奈。ちらりと振り返れば、胸元のブローチに触れながら微かな笑みを浮かべていた。

 どういう意味かはわからなかった。



――――



 高校の昼休み。


 学年が変わろうとしている時期で、学年末テストの予感なんかをひしひしと感じながらも、生徒たちは変わらぬ日常が変わらないものと信じて青春を謳歌していた。

 遥とアユムも、悠馬がいないから普段よりも少し寂しい雰囲気でお弁当を食べていると、スマホが警報を鳴らした。


「なんでだよ。なんで毎日毎日。悠馬が動けない時に限って出てくるんだ」


 アユムがうんざりした声をあげる。気持ちはわかるなあ。

 周りの生徒たちは一瞬ざわめきながらも、怪物が出たのは学校から離れているとわかった途端に日常に戻った。


 呑気なものだ。こっちは動かないといけないのに。


「キエラたち、絶対になにか企んでる」

「なにかって、なに?」

「それは……わからねえけど」

「でも、恐怖を集めるのを急いでるってことだよね」


 ということは、考えられる可能性はあまり多くない。


「向こうも戦いを終わらせに来てるんだね。よし、アユムちゃん行こう。恐怖は渡さない」

「おう。そうだな」


 これから戦いに行くなんて雰囲気は出さずに、揃って教室から出ると物陰で変身。校舎の窓から飛び出した。


 さっきスマホで見て、怪物が出た位置はわかってる。偶然なんだろうけれど、悠馬の入院している病院だった。

 今の悠馬は戦えない。早く助けに行かないとね。



――――



 ラフィオもフィアイーターの出現は察知していた。つむぎを現場に送りたい気持ちはある。けど、今は無理だ。

 給食の時間だから。


 ああ。給食はいい文化だな。日本の子供たちに食の素晴らしさを教える。単なる昼食ではなく、これも教育の一環らしい。


 いい匂いがする教室の雰囲気に目を向けながら、ラフィオも鞄の中に入れていたパンを食べる。当然だけど、ラフィオに給食は用意されてないから。というか、この学校にラフィオが来てることを、つむぎしか知らないから。公にはいない存在だから。


 美味しそうだなあ、かやくうどん。食べたくなってきた。今日の晩ごはんこれにしようかな。でも、給食と夕飯が同じメニューだと、つむぎも飽きるよな。


 なんてことを考えながら、ラフィオは給食が終わるのを待った。この後、掃除と三十分の休み時間だ。それまでに他の魔法少女に倒されないほど強いフィアイーターだったら、つむぎを連れて行こう。



――――



 屋上に向けて階段を駆け上がる。俺自身が想像していたよりもずっと、この慣れない運動が楽にできた。

 魔法少女と一緒に戦うようになってから、体を鍛え始めたらしいな。ランニングが日課になってると聞いた。俺のことなのに全く覚えていないから半信半疑だったけど、今は確信が持てた。

 体は鍛えていた頃のまま。だから、こんなに走っても思っていたよりも疲れない。まだまだ動ける。


 避難していく患者や職員と逆走する方向に走ったけれど、元々人もあまりいなかったようでスムーズに上階へと行けた。


 途中、真っ黒な姿をした敵の戦闘員、いわゆる黒タイツに遭遇した。向こうも俺を見つけたようだ。


「フィー!」

「っ!?」


 大声でこちらを威嚇する黒タイツに戸惑い、足が止まる。どうする? 逃げないと。こっちは戦えないんだから。

 けど、体が言うことを聞かなかった。足が動かないとか、そういう意味じゃない。


 迫ってくる黒タイツに向けて、勝手に一歩踏み出した。


 両手を前に出してこちらに掴みかかってくる黒タイツの動きが、俺には読めた。まるで何度も対峙してきたかのように。

 奴の動きを見定め、迫ってくる手をすり抜けて懐に潜り、腹を殴る。姿勢が崩れたところを足払いして転倒させた上で、首を狙って足で踏む。


 嫌な感触がした。首が折れる時の感触だ。けど、不思議と体に馴染んでいた。


 既に黒タイツたちは病院内に散らばっている。つまり、俺と対峙する敵の密度は薄い。ああ、大量の黒タイツを相手にする必要がないのは助かるな。


 もしそうなっても、なんとかなるだろうけど。

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