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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-9.巨体が倒れる

「はい。わかりました。愛奈さん叩き起こしますね!」


 麻美がスマホで話している。ネットでも戦闘の様子がなかなかわからないと思っていたけど、魔法少女の側からなんとか澁谷に連絡を取ったらしい。苦戦しているのか。

 剛は、自分も出る必要性を感じて着替え始めた。魔法少女シャイニーファイターの姿に。


「よし、やるか。悠馬くんほど上手くできるかわからないけど。やります! 先輩! 起きてください!」


 フライパンの底をお玉で叩く。けたたましい音がした。


「ぎゃああああああ!」


 あ。起きた。


「先輩すいません! フィアイーターが出ました! ほら着替えとかいいから、さっさと変身してください! それから剛くんを運んでください! あ、あんまりいやらしい運び方しちゃいけませんから!」

「起きがけにそんなに喋らないで! まだ疲れてるのよ! てかいやらしい運び方ってなに!?」

「お姫様抱っことか!」

「別にいいでしょそれくらい! やらないけど! 普通に背負うけど!」


 なんの話をしてるんだろう。


 ややあって、部屋の中で変身したらしいセイバーがリビングまで来た。


「行くわよ剛! 背負ってあげるから!」

「はい。失礼します」

「飛ばすわよ! しっかり掴まって!」


 すっかり日が暮れて夜になった街の屋根を、セイバーが駆ける。夜でも明るい都市部、模布駅の方へと急いだ。振り通されないよう、剛はセイバーの肩にかけた手を強めた。


 魔法少女に背負われるってこんな感覚だったんだ。今まで知らなかった感覚に剛は内心でかなり驚いていた。悠馬はこれを日常的に経験しているんだな。かなり慣れてないと、本当に落とされそうで。背負われることを躊躇いなく選べる悠馬はすごいな。


「見えた! あれね! モモちゃん人形があんなことに」


 セイバーの声に反応して、目を開けて様子を見る。黒タイツはいなくなって、フィアイーターだけが暴れていた。しかし魔法少女たちは苦戦している様子。ラフィオとバーサーカーが足元を動き回っているのは、踏み潰されないよう逃げているのか。


 その努力のおかげで、フィアイーターは道路の真ん中でうろうろしていて、アスファルトに負荷がかかる以外の被害は出てないけど。


「セイバー、あれ!」

「おー。レールガンも来てるのね」


 野次馬たちが遠巻きに見ている道路上に、古びた電源車の姿があった。野次馬やら乗り捨てられた車やらのおかげで、それ以上の接近ができなさそうだ。


「ラフィオ! あそこに電源車が来てるから! 使って! ハンターの腕なら問題なく当てられると思う!」


 道路上に着地して剛を降ろしながら声をかければ、ラフィオは頷いてそちらに向かう。フィアイーターの足止めはセイバーが引き継ぐことに。

 剛自身は少し下がった。敵が大きすぎる。生身の人間が不用意に近づけば大怪我しかねない。黒タイツもいなくなった今、出番が来るまでは下がっていよう。


「この! こいつ硬いわね! 知ってたけど!」

「剣で切れそうか!?」

「傷はつけられる! けどそんなに大きくは無理!」

「やっぱり押し倒すしかなさそうだな! そうすればセイバーが傷を作ってオレが広げることができるのに!」

「ええ! その方針でやるべきね! こいつ体幹が意外にいいわね!」


 スネのあたりを剣でガンガン叩くセイバーだけど、フィアイーターの方はあまり痛がっていない。単に大きすぎて小さな人間が下でなにをしても関係ないってだけで、体幹とはまた別の問題もするけれど。


 その時、空を引き裂くように弾丸が飛んだ。少し離れた場所で電源車の上から放たれたレールガンの弾は、セイバーやバーサーカーがちょこまかと動き回るのをうざったそうにしていたフィアイーターの膝を正確に撃ち抜いた。

 相変わらずすごいな。フィアイーター自身も、結構動いてたのに。


 膝に完全に穴が開いているし、どうやら貫通したらしい。穴から中の闇が見える。そこにさらに矢が放たれて、穴の縁の脆くヒビが入った箇所に刺さって傷口を広げる。あるいは再生を阻害した。

 いかに巨体といえども、片方の膝が使えなくなったら立つことはできない。フィアイーターはなおも無事な片足で踏ん張ろうとしたけれど、それはつまり足を動かせないという意味でもある。


「おら! 倒れろ!」


 バーサーカーがそこにタックル。剛もまた、動くとしたら今だと駆け出してバーサーカーの隣で白い足にぶつかった。

 巨体が揺らぎ、倒れる。街路樹が一本なぎ倒されるという尊い犠牲と共に、フィアイーターは仰向けに横になった。


「よし! チャンス! バーサーカー! 頭の方に穴を開けるからそこからコアを見つけて!」

「ああわかった! いや待て! 無理だこいつ暴れてる!」

「まあそうなるでしょうねー」


 倒れたとしても、体の大部分は無事。こちらを振払おうと手足をバタつかせて接近を許さない。


「とりあえず片手ずつ潰すわよ! こいつの指を掴んで折るの!」

「おお!? わかった!」


 ブンブン振られているフィアイーターの手をよく観察して、掴む。そして体重をかけて奴の人差し指を折った。


 巨体と言えども、さすがに指は細い。元々細身のスタイルだったからな。硬い素材故に折れたら本体と切断された状態になり、バーサーカーはそれを投げ捨てた。

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