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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-7.モモちゃん人形

 いずれにせよ、やるべきことはひとつだ。


「戦いに行くのか?」


 悠馬がこちらを見ながら尋ねた。


「そうだよ。これが魔法少女の役目だから」

「俺も行く」

「駄目だよ悠馬」


 困惑に声を上げていた遥も、すぐに落ち着いて車椅子をベッドに近づけながら言った。


「悠馬が出ても戦えないよ。それに入院中に病院抜け出したらお医者さんに怒られちゃう。前に愛奈さんがフィアイーターと戦うために病院から飛び出したら、大変なことになったでしょう?」

「……いや、その話は知らない」

「そっかそっか。豚座っていう、とんでもない男がストーカーし始めてね。ううん、その話はまた後で。すぐに戻るから。みんな、変身して」


 遥の声掛けに、みんなそれぞれ宝石に触れて変身。あまり広いとは言えない病室で、魔法少女三人と巨体な獣が姿を表した。


 ラフィオの上にハンターとバーサーカーが乗る。自分で走りたがるライナーは、今日もその方針を貫くつもり。窓を開けて、ぴょんぴょんとその場で軽く跳ねて体を温める。


「……遥」

「なあに?」


 変身したライナーに魔法少女としての名前で呼ぶ慣習も忘れたらしい悠馬が話しかけた。


「自分の足で走れる遥、すごく綺麗だと思う」

「だよね! うん、そこの感覚は変わってないなー」

「悠馬、前にそんなこと言ってたか?」

「言ってた言ってた! 言ってないかもしれないけど思ってたはず!」


 そして上機嫌になったライナーは、よく見てとばかりにその場でくるりと一回転してから窓から飛び降りた。ラフィオもそれについていく。

 その様子を、悠馬は自然に目で追っているように見えた。



「フィアイーター、どっちの方にいるんだっけ!?」

「模布駅の方だ! あの白い人形がフィアイーターになってるらしい!」

「モモちゃん人形だよね! 街の人気者なのに許せない! ももちゃんやっつけてやる!」

「それ、友達の前では言うなよ」

「わかってる!」


 友達と同じ名前の人形が怪物になるって、どんな気分なんだろうな。まあ、あのモモちゃんとももちゃんは別物とよくわかってるだろうし、気にしないものだと思うけど。


「いた! あれ!」

「大きいな……」

「元々大きな人形だからねー! 見上げるくらい大きいっていうか、足の間をくぐれるサイズ感だし」

「けど、さらに大きくなってる」


 模布駅周辺の、金時計と並ぶ待ち合わせの定番スポット。百貨店のマスコットキャラクターで、イベントや広告に合わせてコスブレすることでも有名な身長六メートル超えの人形が、フィアイーターになっていた。

 元々細長かった手足がさらに伸びて、身長が一メートルほど高くなってるらしかった。純白のスレンダーボディをしなやかに動かしながら、逃げ惑う人々を追いかけたり建物にパンチを食らわせていた。


「大きいな。レールガン必要かも」

「そうですね! 悠馬さん! 澁谷さんに連絡してレールガンが……」


 悠馬がいない。スマホを持ってる者がいない。


「ちょっ! どうしよう!?」

「とりあえず戦うしかないですよ! 苦戦してたら澁谷さんもそのうち来るはずです!」

「それはそうだけど! うあー! やってやる! とりゃー!」


 黒タイツたちがこちらに気づいて、十数体が一斉に突進してきた。ライナーは既に片っ端から弓で攻撃している。


「ライナー! いつもみたいに!」

「散らばった黒タイツの片付けね! けど今日は大変そう!」


 外だし、周りに建物も多い。走り回る箇所が多すぎる。


 まずは目の前の大群を何とかする所から始める。ライナーが一体に回し蹴りを食らわせて殺して。


「これ、フィアイーターを真っ先に倒した方が早いんじゃないかな!?」


 己の役割の変更を口にした。けれど。


「フィァァァァァァァ!」

「あー。やっぱりそれも大変かも! とりあえず避難が完了するまで黒タイツの片付けしなきゃ!」


 フィアイーターが一定範囲から出ないようにしてしまえば、人が近くにいない状況になるか恐怖がそれ以上集まることはない。

 馬鹿がジャーナリズム精神を発揮して不用意に近づくことはあるかもしれないけど。というかあったけど、それは例外ってことで。


 フィアイーターを封じ込める魔法少女の防壁をすり抜けた黒タイツを掃討しに、ライナーは走る。


「とりあえず百貨店の中を見て、それから隣の電気屋を確認して、道路を挟んだ向かいの建物にもいるかもしれないし! ちょっと範囲が大きすぎ!」

「都会だもんなあ」

「そう! 都会は面倒! 田舎なら建物が少ないから見回りも楽!」

「それでもオレは都会が好きだぜ!」

「わかったわかった! バーサーカーはフィアイーターを足止めしてて! そこの黒タイツ! 銀行強盗ごっこはやめなさい!」


 百貨店の近くの銀行に黒タイツが複数乗り込んで、中で暴れていた。警備員を殴り倒して、カウンターの上に乗ったり待合用の椅子を振り回したり、やりたい放題だ。お金がどこにあるのかの知識はないようで、強盗を出来てるとは言い難いけど。


 とにかく周辺店舗に早速被害が出ていることを知ったライナーは、その銀行へと急行。自動ドアが開くよりも早く突っ込んでおでこを軽くぶつけながら、カウンターに乗ってる黒タイツに飛び蹴りを食らわせて派手に殺した。


 こっちも自分たちのやるべきことをしないと。百貨店の外壁を殴り続けているフィアイーターを、なんとか道路の方に押し出そうとした。物的被害は止めないとね。駅の近くだから太い道路がある。そこなら広々と戦えるから。

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