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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-2.落ち着きたくはない

「ありえない。遥が戦う? 左足はどうしたんだよ。なんで足が生えてるんだ。というか危険すぎる。これ以上遥に障害が残るようなことがあれば……」


 自身を見ているセイバーが笑みを浮かべていることに、悠馬は怪訝な顔をした。


「なんだよ」

「記憶が無くなっても、悠馬は悠馬だなって。遥ちゃんが戦うって決めた時も、悠馬はその心配をしていた」

「そう……なのか?」

「魔法少女のこと、もっと教えるわね。この白い動物はラフィオ。異世界から来た、魔法少女の妖精だって。つむぎちゃんの彼氏でもあるのよ」

「……たしかに、つむぎのタイプだな」

「でしょ? 緑の魔法少女の正体も、悠馬の知り合いなの。女川アユムちゃんって覚えてる? お祖母ちゃんが亡くなった時、わたし以外の家族が田舎に行った時に会ってるはず」

「アユム……ああ。覚えてる。そうか、そうなのか……」


 愛奈が知るはずのないアユムの名前を聞いて、悠馬はようやく納得したらしい。


「みんな魔法少女に変身できるなんてな。ミラクルフォースみたいに」

「そうね。そんな感じね。そしてこの制服姿で覆面被って戦っているのが」

「まさか、俺?」

「そう」

「……」


 ベッドの上で身を起こしていた悠馬は、許容限界を迎えてしまったらしい。バタンと倒れた。

 まあ、受け入れろと言われて容易にできることではないよね。気絶したわけではないから、まだ立派だ。脱力しただけらしい。


「マジか……信じられない」

「もう少し、話しておくことがあるのよ。この樋口さんはね……」


 悠馬にお見舞いにくるはずの人間について説明するけれど、悠馬は半分も聞けてないようだ。樋口は一旦病室から出て、電話をかける。

 遥たちに連絡しなきゃいけないから。


 どんな反応するのだろうか。混乱するだろうな。悲しむかな。それから、悠馬の記憶を戻す方法を考えるだろうな。

 明日の朝、一斉に病院に駆けつけるような真似はさせられない。彼女たちには学校に行ってもらわないと。お見舞いも順番に、ひとりずつだ。


 スマホを手にして遥にかける。


「みんなに伝えたいことだから、スピーカーモードにして。落ち着いて聞いてね。悠馬が、ここ一年の出来事限定で記憶喪失になった」



――――



「なんでなんだよおい! どうなってんだ! おかしいだろ! 普通そんなこと起こらないだろ! 記憶喪失って! なんかこう! うあー!」


 アユムが感情のままに叫ぶのを、遥は冷めた目で見つめていた。


 電話に出た時、樋口の深刻そうな口調から最悪の事態が頭を過ぎったのは事実。それは避けられた安堵と、悠馬が記憶喪失になってしまった事実に驚愕していた。

 できるなら、自分だってアユムみたいに叫びたかった。けど理性がそれを止めた。


 わたしはアユムちゃんよりも冷静だから。それに、悠馬の彼女なんだから。


 そうとも。たとえこの一年の記憶がなかったとしても、遥は悠馬の彼女だ。それは周りから見ても明らかだ。むしろ、周りがそれを証明している。

 この場にいるアユムやラフィオやつむぎが、それが真実じゃなかったと知っていたとしても。


 あの時、悠馬が言い残すように遥に好きだと言ったことを、自分だけが知っている状況になってしまったとしても。



「悠馬さん、大丈夫かな? わたしたちのこと覚えてくれてるかな?」

「つむぎのことは覚えてるだろ。僕のことは忘れてるかもしれないけど。愛奈たちが説明してるだろう?」

「でも、悠馬さんもう戦えない?」

「それは……どうかな」


 つむぎとラフィオが話している。ふたりの心配はそこだな。まず最初に悠馬の心配。それから、これからの戦いの心配だった。ああ、悠馬が誰を好きとか、あまり気にしてないとこうなるよね。


「みんな、落ち着いて」


 遥は一同に声をかけた。


 本当は、遥自身が落ち着きたくなかった。悠馬が心配で、今からでも車椅子で病院まで駆けつけたかった。電車もそろそろ無くなる時間とか、そんなのは関係ない。腕力で動かせる車椅子だけで、行きたかった。

 それが無理なのもわかっていた。


 だから遥は、これも悠馬のためと自分に言い聞かせながら、みんなに語りかける。


「樋口さんの言うとおりだよ。今、悠馬の所に行っても混乱させるだけ。わたしたちが騒いでも、悠馬が困るだけ。きっと記憶は戻るよ。それを静かに待とう」

「そ、そうだな。なあ、見舞いはどうすればいい?」


 落ち着いてはいないけど、とりあえず静かになったアユムが訊く。

 そんなことわからない。


「えっと。とりあえず、明日は普通に学校に行こう。で、夕方お見舞いに行く」


 朝から行きたかったけど、学生の身分ではそれが許されない。


 とにかくこの場は一度収まった。樋口から、ここ一年の出来事を悠馬に話せば思い出すかも、みたいなことは聞いていた。

 たぶん愛菜がやってることだろう。それでうまく行くと信じるしかないかな。





 翌日。方針通り、遥とアユムはバスに乗って学校へと行く。


 つむぎはラフィオを抱えて小学校だ。あのふたりも、不安そうな顔をしつつも日常を過ごすことになるんだな。ラフィオを掴む手に、ちょっと力が入っているようだった。可愛そうだから優しく持ってあげなさい。


 アユムも車椅子を押すのがだいぶうまくなってきた。けど、悠馬ほど安定感はないかな。あと、ちょっと荒っぽい。

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