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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-46.双里悠馬

「神様! どこですか!? どこにいるの!? わたしはこんなに苦しんでいるのに! なぜ何も言ってくれないのですか!?」

「待って! 落ち着いて!」


 チョコレートの箱を踏みつぶしながら、キエラは小屋から出てしまう。見渡す限りの草原と青い空。まだ作られていない、何もない世界。

 数少ない例外が、ふたりのいる丸太小屋と。


「あ……」


 キエラが目にした、大きなコアだった。


 ずっとそこにあるコアの様子は、ティアラからすれば全く変わった様子が見えない。けど、キエラには魔力の流れというのが見えるらしい。


「完成が近い……そっか! そういうことなのね神様! これで世界を破壊しろってことですね! もう少し! もう少し恐怖を集めれば勝てる! わたしたちは勝てるの! ティアラ!」


 急に上機嫌になったキエラがティアラに抱きついた。


「あんな世界! いらない! 魔法少女も嫌い! ぶっ殺してやる! ラフィオは誰にも渡さない! 絶対に! 絶対に!」


 ああ。キエラが壊れかけている。ラフィオに相当強く叩かれたのだろうな。恐怖を感じるほどの怒りを向けられた。だから、から元気を出して自分を誤魔化している。


 ラフィオがキエラのことを好きになるなんてありえない。キエラはその事実から必死に目を逸している。

 でも、そんなキエラのことをティアラは好きだった。力になりたかった。


「あのねキエラ。さっき戦ってた時に、面白いものを見つけたの」

「なにかしら」

「覆面男の学生証」


 制服の胸を突いた時、硬いそれに阻まれて切っ先が心臓を捉えるのに遅れた。そのせいで覆面男は命拾いした。


 彼の名前がユウマというのは知っている。セイバーとは姉弟なのもわかっていた。普段使っている駅も知っている。けど、それ以上に情報がなかった。制服姿だけど、どこの学校なのかなど知らなかった。


 けど、今はわかる。「双里悠馬」という氏名と、あの日怪物から逃げようとするのに手を貸してくれた男の子の名前。それから通ってる学校も。


「へえ。覆面ってこんな顔してるんだ。ラフィオ程じゃないけど、格好いいわね。けど、この顔どこかで見た気がするのよね」

「どこかって? 街で?」

「いいえ。テレビで。いつだったかしら。去年の夏とかだったと思うんだけど……」

「さっきこの子、魔法少女のライナーにハルカって呼びかけてた」

「そう。調べてみましょう。あ、でも。メインコアを完成させるのが先かもしれないわね。ふふっ。やることが多いわ。けどわたしたちの戦いの終わりも近い。もう少し頑張りましょう」


 ああ。この笑顔。キエラが笑うために、わたしは戦ってるんだな。



――――



 双里家のマンションで愛奈の着替えを受け取って、車で病院まで戻った樋口は、病室が騒がしいことに気づいた。

 愛奈が騒がしいのはいつものこと。けど今の状況ということは。


「悠馬! 良かった! 本当に!」


 さすがね。しばらくしたら目覚めると医者は言ってたけど、その日のうちとは思わなかった。やっぱりこの子は強い。微笑みを浮かべながら、樋口は病室に入る。

 上半身を起こした悠馬は状況がわからないのか混乱した様子だった。少し目が虚ろ。まあ、倒れて気がついたら病院ってのは、慣れるものではない。


「姉ちゃん。ここは」

「病院! 頭を打って倒れたから」

「そっか。ごめん。心配かけて」

「いいの。悠馬が無事で本当に良かった……」

「でも、なんで倒れたりなんか」

「ティアラのせいよ。あの女。悠馬を本気で殺しにかかるんだから」

「ティアラ……?」

「ええ。フィアイーターを作って出てきて、さっさといなくなればいいのに。今日はずっと居座って戦い続けた」

「ま、待ってくれ姉ちゃん。フィアイーター? 戦いってなんだ?」

「……え?」


 様子がおかしい。どうなっている?


「悠馬。いいかしら」

「……?」


 樋口が声をかけると、悠馬は怪訝な顔を見せた。


 まるで、知らない人間がなぜか自分の名前を知っているという状況に困惑してるようだ。


「この映像に心当たりは?」


 スマホを操作して動画投稿サイトで魔法少女と検索。模布市内の有名な場所で魔法少女や悠馬がフィアイーターと戦う様子を、誰かが隠れて撮影したものらしい。

 画面の中の悠馬は覆面を被っているけれど、制服姿だ。


 これがあなたと言って、どんな反応をするだろうか。けど尋ねる前に悠馬の方から訊いてきた。


「なんだ、これ。映画とか? にしてはリアルすぎる」


 よく知っている場所を壊しながらの戦い。カメラアングルは素人丸出しで、映像作品として作られたとすれば出来が悪すぎる。なのに写っているものは本物っぽい。

 これは現実の光景なのだけど、見ている悠馬はそれが信じられない様子。制服姿で戦うのが自分だとも思ってもいないのだろう。


 間違いない。これは。


「悠馬。今日の日付はわかる?」

「二月、くらいだったと思うけど……」

「あなたの学年は?」

「高一。もうすぐ二年にあがる」

「……愛奈。悠馬はどうやら記憶喪失ね。この一年の記憶が全部飛んでる」


 背後で、愛奈の息を呑む声が聞こえた。

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