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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-45.彼女になれる、はず

 頭を打ったショックで気絶しているが、特に問題はない。検査もちゃんとしたけれど異常は見つからなかった。だから心配することはない。

 医者からそう言われても、心配を止めることはできない。今夜は病院に泊まると主張する愛奈を咎めることはできなかった。


「明日は会社も休みなさい。弟が怪我したなら、会社の方から休めって言ってくるでしょ」

「仕事したくない人間に優しいこともあるのね、樋口さんも」

「家族を愛するお姉ちゃんに優しいだけよ。待ってなさい着換え持ってくるわね」

「ええ。ありがとう」


 病室を出た樋口は、待合場のテレビがつけっぱなしになっているのに気づいた。見舞い客の面会時間は終わって、患者たちも来なくなる時間帯。今日は怪物騒ぎのおかげで搬送者が少しだけ多いとかで、この病院も少し忙しかったのかな。


 ニュース番組で、早速今日の戦いが扱われていた。怪物が現れて魔法少女が退治してくれた。それだけ。


 高校生の男の子がひとり怪我をしたことは話題にもならない……と思ったら、怪我人のインタビューが映された。

 足を捻っただけの軽傷の、制服姿の女の子だった。赤い魔法少女が助けてくれたと感謝の言葉を述べていた。これが市民たちの意見の代表なのだろう。


 画面が切り替わり、今度はチョコツクレルが映し出された。資料映像みたいな感じで、来日時のインタビューの場面をスローで流しながら、彼がマスコミ向けに発表した文面をナレーターが読む。


『私のイベントを襲った怪物を、魔法少女は見事に倒してくれた。彼女たちこそ真の英雄だ。彼女や、それを支えて応援する市民たちを、今度は私が支えなければならない』


 胡散臭い名前と顔の外国人だし、アメリカ人の来日に樋口はいい思い出がない。罪のない少女を救えなかったこと含めて。


 けど、チョコツクレルは悪人ではなかったな。ちょっと癖の強い人物だけど。そんなのは樋口の周りにもいる。そして信頼できる。


 チョコツクレルはニューヨークに帰るが、店の収益の一定比率を模布市に寄付すると語っていた。復興支援と、台無しになったバレンタインデーの代わりの楽しいイベントの費用に使ってくれとのことだ。

 アメリカ人にも良い人はいるのねと笑みを浮かべながら、樋口は病院から出ていった。



――――



 とりあえず悠馬は大したことがない。その知らせを受けた遥たちも、安堵していた。

 いずれ起きる。そして。


「返事してられる状態になってくれるかな?」

「なってくれるでしょ」


 遥とアユムの戦いの決着も、いずれつく。少なくともアユムの方は、かなり緊張しているようだった。

 続いて樋口から、愛奈の着替えを持っていきたいから用意してくれとのメッセージが来た。


「よし。愛奈さんの部屋入っちゃいますかー」

「オレがやろうか? 愛奈の部屋、なんか散らかってて足元悪いし」

「それは確かに。じゃあアユムちゃんお願いね! わたしは洗い物するから!」


 愛奈の部屋に向かっていくアユムの背を見送りながら、遥はキッチンへと向う。

 ひとりになって、それから考える。



――遥! ……好きだ!



 頭を打って気を失う直前、悠馬は確かにそう言った。聞き間違えじゃないはず。

 なんであのタイミングなんだろう。死ぬかもしれないから、そう伝えたかったとか?


 あれは、わたしを本物の彼女と認めてくれるってことでいいのかな?


 とにかく、わたしは勝った……のだと思う。


 気がかりなのは、悠馬が頭を打ったこと。このまま永遠に目覚めないとかはないと思う。目が覚めたら改めて聞き直して、そしてちゃんと恋人になろう。

 そうなるよう、遥は強く願った。



――――



 戦いで疲れたのか、つむぎはソファに座ってテレビを見ているうちにウトウトし始めた。そこから、隣に座るラフィオの膝を枕にして眠るまで時間はかからなかった。

 つけっぱなしのテレビでチョコツクレル氏がコメントを出しているけど、ラフィオにはあんまり興味はなかった。もう少ししたら、つむぎを起こしてあげよう。お風呂に入らせてそのまま寝させよう。


 それから明日、河原に行って石を拾いに行こう。


 つむぎがチョコプリンを用意している間、ラフィオは魔法陣の方に目を向けていた。他の誰にも見ることができない魔力の流れを。

 魔法陣の中心に置かれている石は、かなり完成に近づいていた。


 たぶん、次の石拾いが最後だ。魔法石を完成させて、こちらからエデルード世界に行く手段を確立させる。

 戦いを終わらせよう。


「んん……ラフィオ……」

「なんだい?」


 話しかけられて返事したけど、つむぎの目は閉じたまま。ラフィオの膝を掴むようにしながら寝息を立てていた。夢の中でもモフモフしてるのかな。


「もう少しで僕らの勝ちだ。それまで頑張ってくれよな。僕も頑張るから」


 起こさないように、つむぎの頭を優しく撫でながら、小さく語りかけた。



――――



 ティアラがエデルード世界に戻ると、丸太小屋の中にキエラは既に帰っていた。

 お店で調達したらしいチョコレートの箱は、どうも手当たり次第に投げ込んだためか、雑然と散らかった状態。


 その中で、キエラは呆然とした様子で座り込んでいた。


「キエラ、どうしたの?」

「ラフィオが……わたしを殴った。怒っていた」


 小さく呟く。そしてこっちに目を向けた。


「なんで? ねえなんでなの? ラフィオはわたしが産んだの。そして結ばれなきゃいけないの。神様がそう命じたの。なのにラフィオは他の女と。なんで? なんであいつら、神様の言うことが聞けないの?」

「それは……神様を知らないから、じゃないかな。わたしも見たことがないし」

「神様っ! 聞いていますか!? このままじゃ世界を作れません! ラフィオの目を覚まさせてください!」

「キエラ!?」


 急に立ち上がったキエラは、虚空を向きながら見えない何かに呼びかけた。しかし彼女には、木製の天井しか見えない様子だ。

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