表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

703/746

14-44.告白の返事

 戦いが終わった、なんて感慨に浸っている暇はなくて。


「悠馬!」

「悠馬さん!」


 ラフィオとハンターが駆けていくのを、バーサーカーは慌ててついていった。


「樋口さんには連絡してある。救急車が来てくれるそうだ。戦いに巻き込まれた一般人として病院に搬送することになる」


 いつの間にか戻ってきた剛が、コスプレ姿のままスマホを握っていた。ついでに戦いを見守っていた麻美も一緒にいる。


「そうね。それがいいわ。わたしが病院に付き添う」

「そ、そうですね」


 普段ならライナーは、自分がと言いそうなもの。けど今日はなぜか素直に譲った。


 高校生の恋人よりは、実の姉の方がこういう場には相応しいと考えたのだろうか。セイバーはすぐに愛奈に戻った。

 姉弟で出掛けて巻き込まれて、魔法少女に助けてもらったとか。救急隊員にはそう説明するつもりなのだろう。


「制服の胸の内ポケット、完全に破れてるね。中に何か入ってたりしてたかい?」

「スマホと財布はいつもズボンのポケットに入れてるし、無事みたいだね。悠馬が内ポケット使ってるところ、見たことないなー」

「そっか。何かが入っていて、それがギリギリ剣を受け止めたから、悠馬は心臓を刺されることがなかった、みたいに見えたんだけど」

「ポケットに懐中時計が入ってた、みたいな? 何か入れてたのかもしれないね。よくわからないけど……」


 ラフィオと話しながら、ライナーはどこか別のことが気になってるみたいで。


 けど、みんな悠馬の方が心配だから、そっちに意識が向いていた。


 それからすぐに救急車が来て、悠馬と愛奈を乗せて病院まで行った。たぶんいつもの病院だろう。魔法少女たちは、自分たちも一緒に行くわけにもいかず、その場に留まっていた。

 樋口も駆けつけてきた。遥の車椅子を押している。ちゃんと持ってきてくれたのか。外に放置もできないもんな。座面には三人分の鞄もあった。


「ほら。後のことは医者に任せなさい。あなたたちは帰って。市民が戻ってきて、バレンタインデーの夜を過ごすのだから」

「そ、そうだな。オレたちがいたら、まだ戦ってるって思われるかも」

「そういうこと。わたしも今から病院に行って状況は伝えるわ」


 樋口は慌ただしく去っていく。


「しょうがない。僕たちも帰るぞ」

「あ、ラフィオ。テーブルの上にプリン出しっぱなし。片付けなきゃ」

「そうだね。僕たちは拠点に寄る。すぐに戻るから」


 ラフィオもハンターを乗せて走り去った。


「わたしは剛くんを送って行くわ」

「デートはまた今度ですね」

「ええ。仕方ないけど。あなたの受験が終わったらね」


 麻美と剛も一緒に行ってしまった。後にはバーサーカーとライナーが残されて。


「わたしたちも帰ろっか。電車移動になるかな」

「車椅子運んで走るのは嫌か?」

「嫌じゃないけど、今はそんな気分。アユムちゃん、押して」

「ああ」


 ふたり揃って変身解除。人が戻りかけてきた公園から、そっと出ていく。


 近くの駅まで、ふたりしばらく無言だった。口を開けば、あの話題をになってしまうのは間違いないから。カップルが二組、ふたりきりで先に行ってしまったのを見た後だから、なおさらだ。

 先に無言に耐えられなくなったのはアユムの方で。


「悠馬に告った返事、訊けないままだったな」

「う、うん。そうだね。悠馬が目を覚ますまで、無理だね」

「覚ましてもそれどころじゃないだろうしなー。あー! チョコ作り頑張ったのに! 告白の言葉も、昨日頑張って考えたのに!」


 アユムは本気を悠馬にぶつけていた。暑苦しい感じを悠馬は好きではないのは知っているから、冷静に。けど全力の気持ちをぶつけた。


 こういうのは遥の方が得意だろうなとは、わかっている。けどやり切った。どんな結果になっても後悔はしないつもりだった。

 答えが聞けないままになるとは思わなかったし、戦いの中で悠馬を守れなかったことに後悔することになるとは。


 バーサーカーが一番悠馬の近くにいたんだ。なのにフィアイーターとの力比べにかまけて、そちらに注意を向けれなかった。必要なことだったとはいえ、別のやり方もあったかもと、どうしても考える。


「悠馬、大丈夫だよな?」

「うん。息はあった。心臓も動いてた。だから死んだりはしないよ。お医者さんに任せよ?」

「あ、ああ。そうだよな。オレたちがどうにかできることじゃない、よな……」


 そのまま電車に乗り、家の最寄り駅まで向う。スマホを見ると、ラフィオたちは先に帰っていて、夕飯の準備を進めているところらしい。

 そっか。バレンタインデーが終わったから、キッチンの男子禁制も解除か。こんな不本意な形で終わるなんて思ってもなかった。



「ラフィオ、手伝おっか?」

「いや、もう出来上がるから。運んでくれ」

「うん。洗い物はわたしがやるね」


 妙に落ち着いていて、けど何か別のことを考えている様子の遥が、アユムには気がかりだった。


 そして夕飯の最中に、樋口からメッセージがきた。悠馬の容態についてだった。



――――



「大したことなくて、本当に良かったわ。しばらくしたら目を覚ますはずですって」

「そう……良かった」


 樋口から医者の見解を聞いた愛奈は安堵の息を吐いた。


 悠馬は今、病院の個室で眠っていた。そこに愛奈がずっと付き添っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ