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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-43.姉の怒り

「悠馬!? 悠馬しっかりして!」


 ライナーの声が聞こえて、バーサーカーはそちらの方を向いた。腕に込めた力はそのまま。気を抜けばフィアイーターに押しつぶされそうだ。

 それより、悠馬がどうした?


 声のした方を見れば、ライナーがティアラと戦っていた。その横に、消えかけている黒タイツの下敷きになっている悠馬の姿。

 動かない。なんでだ? 怪我をした?


 助けに行かなきゃいけないのに、フィアイーターが離してくれない。


「こんの! どきやがれ!」

「フィアアァァァァァァ!」

「うるっせえ! おらっ!」


 体を捻り、フィアイーターがかけていた力を横に流す。いきなりそんなことされたものだから、フィアイーターはそのまま地面に転倒した。


「手間かけさせやがって! この! この! こいつ固ぇなおい!」


 この日限定で設置されるやつじゃなかったか? 捨てやすい素材じゃだめなのか? 鉄製ではないにしても、簡単には壊せない素材だ。

 安っぽい素材を使って日本の人たちをがっかりさせたくないっていう、チョコツクレルの心遣いが完全に裏目に出ていた。


 倒れたフィアイーターを爪先でガンガン蹴っていたけど、奴はすぐに起き上がった。そこに。


「ラフィオ突撃! うおー!」

「そのテンションはどこから来るんだ!?」

「嬉しさかな!」

「なんの!?」

「ラフィオがわたしのために、キエラに本気で怒ってくれたこととか! わたしのこと助けてくれたこととか!」

「そんなの当たり前のことだろ!」

「当たり前が嬉しいの!」


 相変わらずの仲の良さのふたりが迫ってきた。起き上がったばかりのフィアイーターにラフィオが突進。今度は奴を仰向けに倒した。


「ラフィオ! こいつ固いから、なんとか壊してくれ! 体のどこかに穴開けるとか!」

「無茶言ってくれるね!」


 そうは言いつつ、ラフィオはハート型のオブジェに噛み付いた。ハート型の縁に牙を立てて、なんとか穴を開けようとする。


「おい! セイバーも来てるんだろ! 手伝ってくれ!」

「いるけど! ちょっと人使い荒くないかしら!?」

「セイバーの剣でこいつを切り裂くのが一番早いんだ! 早くしてくれ悠馬が大変なんだよ!」

「ちょっとそれどういうことよ!?」

「悠馬さんになにがあったんですか!?」

「オレもよくわかってねえんだけど!」


 あとから来たセイバーたちは悠馬が倒れていることを知らない。セイバーは血相を変えて周りを見回し、悠馬が倒れていることに気づいた。


「悠馬!」

「あ! おい! だから!」

「バーサーカー! こいつの穴を広げろ!」

「ああもう! わかった!」


 ラフィオの牙によって硬いプラスチックに穴が開いた。バーサーカーはそこに指を突っ込んで、力を込めてバキバキと音を立てながら広げていく。


 プラスチックで成形されたオブジェは、中は空洞だった。フィアイーターでもそれは同じらしい。とはいえプラスチックの中には闇が広がっていたのだけど。


 ちらっと悠馬たちの方を見た。ライナーに剣を刺そうとするティアラだけど、その動きをライナーは完全に見切っていた。繰り出される突きを回避しつつ、その動きの流れのまま回し蹴りを食らわせる。ティアラの腕をしっかり捉えて、彼女は剣を取り落としてしまった。


 さらに踏み込んでくるライナーに、ティアラは反応しきれなかった。その体に蹴りが炸裂して、数メートル飛ばされる。

 そして悠馬たちの近くに落ちた。


 悠馬に必死に呼びかけていたセイバーがそれに気づき、剣を構えて弟を庇うように前に立つ。バーサーカーからは彼女の背中しか見えないために表情はわからないけれど、怒りの形相を見せているのかもしれない。

 ティアラは明らかに引いていた。


「あなたのこと、助けなければ良かったって思ったこと、あるわ。弟だけ助けて、あなたは見捨てればって」

「そう。彼も似たようなこと言ってた」

「弟とあまり話さないで」

「向こうが話しかけてきたの」


 命の恩人たちに対して淡々と返事をするティアラは、しかし剣を突きつけているセイバーを警戒している様子で。


 話している暇はないとばかりに、セイバーが踏み込んで剣を振る。ティアラはそれを受けることもできずに後ろに下がった。勝てないと悟っているのだろう。


 フィアイーターの中でも強力な方の特別製だから、真正面からの一撃を避けることは容易だった。けど一瞬、彼女はなにかに気を取られたのか反応が遅れた。

 ティアラの肩からお腹までがバッサリと斬られる。しかしコアを傷つけるには至っていない。地面に倒れ込んだティアラは、そのまま転がるようにしてセイバーから離れる。


 そして地面に穴を作ったと思えば、そこに落ちるようにして入って向こうの世界に逃げた。


「もう! 逃げ足だけ早いんだから! ううんそれより! 悠馬!」


 本気で悔しがってそうなセイバーは、我に返って悠馬の方へ駆け寄った。

 悠馬が心配なのはバーサーカーも同じで、だから目の前の敵をさっさと片付けなきゃいけない。別にサボってるわけじゃない。


「さっさと! ぶっ壊れろやぁ!」


 改めて気合いを入れ直し、フィアイーターに開いた穴に力を込める。


 バリバリとプラスチックが割れる音がして、表皮が剥けていく。


 闇そのものと言えるような中の光景の中に、コアを見つけた。拳を大きく振り上げてぶん殴ればコアは砕けて、暴れていたフィアイーターの動きが止まる。黒い粒子が巨大なハートから空中に拡散されていき、横倒しになった壊れたオブジェが残される。

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