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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-37.セイバーのフィアイーター

 ただのコスプレイヤー相手に駆け寄る黒タイツの首が次々に射抜かれていく。ファイターや女の子に誤射することはない。ラフィオの方はもう一体のフィアイーターを確認するため、商業施設の方へ駆けて遠ざかっているのにだ。

 やがてファイターの進路上にライナーが来た。後はそっちに任せよう。それに。


「ラフィオ!」

「セイバー! あのハートのやつ以外にも、あっちにもフィアイーターがいるらしいんだ!」

「二体!? 本当に、バレンタインデーだってのに面倒ね! 剛は無事!?」

「コスプレして戦ってる! 無事だ!」

「なら良し! 良くないけど! 麻美とデートするつもりだったらしいわ!」

「あのハートの前で写真とか撮るつもりだったのかしら!」

「フィァァァァァァァ!」


 映えるオブジェは、今は醜い怪物になってしまっていた。


「たぶんそうだろうね。羨ましいかい?」

「ちょっとだけ!」

「セイバーも悠馬と一緒に撮りたいかい?」

「撮りたいわ! 今はそれどころじゃないけど!」


 商業施設の入口に到達。黒タイツの一体が外に出ようとしていて、鉢合わせした。セイバーがすかさずバッサリ斬り捨てる。


「フィアイーターはどこ!?」

「あそこだ!」

「あれは……わたし?」

「みたいですね! チョコでできたセイバーです!」

「なんでそうなるのよ!」

「フィァァァァァァ!」


 セイバーを模した、等身大サイズのチョコレート。肌や服の質感なんかを本物に近づける技量を見せつつ、けどチョコレートであることは一目でわかる作りをしている。そして細部を見れば装飾の細かさに目を見張ることになる。


 セイバーと対峙するプリンのフィアイーターは、セイバーを際立たせるためにシンプルな造形。下に倒れている黒タイツたちも同じだ。

 稀代の天才パティシエ、ロベルト・チョコツクレル氏がバレンタインデーに合わせて腕によりをかけて作った、芸術作品だ。


「いや! なんでよ! なんでわたしなの!?」

「君たちの戦いからインスピレーションを受けて作品を作った。それだけだよ」

「こらそこ! 他人事みたいに言わない! ラフィオが一番当事者だから!」

「この前のデパートでの戦いの、セイバーの姿がよほど鮮烈だったんだろうね」

「だからって! わたしを作らないでよ! フィアイーターにしないでよ!」

「フィァァァァァァ!」


 フィアイーターはそんな文句を聞き入れたりはしない。チョコ製の剣を振り回して、周りの棚を殴打し破壊していた。


 チョコ製の台座に足が固定されているのか、歩みは台座ごとなのが面白い。もちろん、プリンのフィアイーターも一緒についていくことになる。セイバーの胸くらいまでの高さしかないそれも、手足をブンブン振り回して破壊行為に加わっていた。


 ここでチョコツクレル氏のお菓子の販売をしていたんだろうな。この前のデパートの件もそうだけど、なぜか彼の行く先々にフィアイーターが現れる。商売あがったりだ。


 まあ、本人は嬉しいのかもしれないけど。怪物との戦いに巻き込まれながらも強く生きる市民たちや、なにより魔法少女たちが好きらしいから。

 実際。


「ああっ! やはり来てくれた! さすがだ魔法少女! ああ神よ、二度に渡り魔法少女と相まみえることが出来る幸運に感謝します」

「なんであんたがいるのよ!?」

「来てくれたお客様たちの避難誘導をしていたら逃げ遅れてしまったんだ! ここは私に任せて先に行け! とみんなを先に逃した!」

「すごく立派なこと言ってるのにムカつくのはなぜかしら!?」


 床にうずくまって頭を庇いながら、黒タイツに周りを囲まれガシガシと蹴られているチョコツクレル氏がいた。彼の言葉は本当のようで、周りに他の人間はおらず、彼を除いて避難は完了したらしい。


 ハンターが黒タイツたちの首を狙って次々に殺していったから、とりあえずチョコツクレルが蹴り殺されることは避けられた。


 立派な行いをしたのは間違いないんだけど、彼が逃げなかったのは魔法少女に会いたかったがためで。実際、黒タイツから解放された彼は逃げる様子を見せなかった。

 セイバーが呆れる気持ちもわかるとも。


 そして今度はラフィオが呆れる番が来た。魔法少女に会いたい者がいるのと同時に、ラフィオに会いたい者が出てきたのだから。


「ラフィオ! 会いたかった!」

「げっ」


 聞きたくない声が聞こえてきた。見れば少女の姿のキエラが売り場のチョコレートを片っ端から穴の向うに放り投げているところだった。

 いや、なんのために。


 そんな彼女もラフィオの存在を認めて満面の笑顔になった。


「やっぱりラフィオに会うにはフィアイーターに限るわよね! ねえ知ってる!? 今日は恋人にチョコレートをあげる日なんだって! はいこれ!」


 キエラの無事な方の手には、チョコレートの包み。店頭に置いてあった物を無断で拝借したのだろうなあ。


「死ね!」


 ラフィオに乗ってるハンターが物騒なことを言いながら、その包みを矢で射抜いた。いや、それやるなら本人の心臓を狙え。死ねって言ってるんだし。避けられるかもしれないけれど。


 キエラ本人よりも、それが差し出すプレゼントの方が大事なのか。そうなのかもしれないな。

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― 新着の感想 ―
「私に任せて先に行け!」とかカッコいい事言ったのに、黒タイツに周りを囲まれガシガシと蹴られているチョコツクレル氏が笑えます! ハンターが矢で射抜いたのがチョコの包みだったところもクスリとしてしまいます…
なんかもうめちゃくちゃ治安の悪いバレンタインだしみんな言ってること物騒だしひどすぎるw チョコツクレルも何気にあと数分助けが遅かったら死んでたよな……
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