表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

694/746

14-35.バレンタインを襲う

 人間たちは、外国から来た有名なチョコ職人、チョコツクレルさんの話題に夢中らしい。

 港の近くの広場に大きなハート型のオブジェが飾られている。それだけじゃない。その近くのお店で、チョコツクレルが作った渾身の作品が飾られているらしい。


 それを見に来た客たちにチョコツクレルのお菓子を売るという、プロモーション的な目的のものらしいな。


「素敵! これをフィアイーターにしましょう!」

「えっと、どっち?」

「どっちも! 手分けしてやりましょう! ティアラはハート型のオブジェの方をお願い!」


 鏡には、海と巨大なハートを背景にして写真を撮っている若い人たちが写っていた。高さ三メートルほどのピンクのハート。なにがどうありがたいのか、ティアラにはわからなかった。でも、SNS映えするらしい。だからみんなこぞって撮りに行く。


 幸せそうだな。ティアラが得られなかった幸せだ。だからってわけじゃないけど、壊しに行きたいと思った。


「わたしは、チョコレートの方に行くわ。ふふっ。ついでに売られてるチョコを貰っていくから!」


 鏡の光景が切り替わる。お店の中らしい。


 ガラスケースの中に、細かな細工が程越されたチョコレートが飾られていた。

 恐ろしい怪物を前に立ち向かう、剣の魔法少女を模したものだった。チョコレートでシャイニーセイバーとフィアイーターが表現されている。さほど大きなサイズではないが、細かな装飾なんかも再現されていてきれいだった。


 なぜ、フィアイーターがカップに入ったプリンなのかは知らない。セイバーと比べて小さく作られていて、主役であるセイバーを目立たせていた。

 つまり添え物だ。正義のヒロインである魔法少女の引き立て役。


 よく見ると地面を模していると思われるチョコの台座にも、サブイーターたちが倒された姿がいくつか作られていた。


「引き立て役なんてひどい! こんなもの! フィアイーターにして暴れさせてやるんだから!」


 と、キエラは随分と憤った様子を見せながら、穴を作って人間の世界へ向かった。


 ティアラも、もうひとつのフィアイーターを作るために穴を通った。


 平日だけど、夕方の臨海公園には人手が多かった。高校生から大学生くらいの、若いお姉さんが多いな。あとはカップルも。

 ティアラは単独行動だけど、この雰囲気にうまく溶け込むことができた。ひとりで行動してる人はあまりいないけど、ゼロじゃない。ほら、あそこにワンピース姿の綺麗なお姉さんがいる。公園の木の下で、誰かを待っているようだ。


 いいなあ。これからデートなのかな。


 ハートは目立っていたからすぐに見つかった。大きなピンク色のハートになんの価値があるのか、ティアラにはいまいちわからない。けど、世間の人々はこの前で写真を撮るべく行列を作っていた。

 そこに並ぶ気などもちろんなくて、ティアラはハートに後ろから近づきながら、それに向けてコアを投げつけた。


 周囲一体が闇に包まれる。多分カメラを起動させているスマホも黒一色になったことだろう。


 闇が晴れた時には、ハートに手足が生えていた。それから周りには多くのサブイーターも。


 周囲はあっという間に大混乱に陥って、人々は前触れなく出てきた怪物から逃げようと、我先にと駆け出した。いい光景だ。

 お店の方でも同じ光景が繰り広げられているのだろうな。ティアラの足は自然とそっちに向いていく。あの子のことだから、混乱のなかでチョコレート選びに夢中になっているかも。それはかわいらしいのだけど、その隙に魔法少女にやられちゃったら困るから。



――――



 つむぎに見られながら延々とプリンを食べる幸せな時間は、ラフィオ自身がフィアイーターの出現を察知したために終わった。直後につむぎのスマホも鳴る。


「えー! なんでこの日に!?」

「向こうはこっちの事情を考えてくれないなあ」

「ほんとだよー。バレンタインデーなのに」

「案外、キエラもバレンタインを狙ってるのかもしれないね」

「ラフィオにチョコレートを渡すとか?」

「嫌なことを言わないでくれ」


 とはいえ、本当にそうしてくる可能性はあった。


 つむぎのこういう勘は当たる。というか、モフモフであるキエラの考えのトレースがうまい。


「そんなこと絶対にさせないから! ラフィオ! 行くよ! デストロイ! シャイニーハンター!」


 髪留めにしている青い宝石を手に取って、握りながら叫ぶ。少女の体が光に包まれた。

 変身はあっという間に終わった。


「闇を射抜く精緻なる狩人! 魔法少女シャイニーハンター!」


 青い魔法少女を前に、ラフィオも獣となって姿勢を低くする。ハンターはすぐにそれに飛び乗った。

 場所は海の方か。そういえばチョコツクレルがなんかやってたんだっけ。



――――



 愛奈と麻美もまた、定時で素早く退社したところで警報を聞くことになった。


「麻美。臨海公園に出たらしいわ。ちょっと行ってくるから、麻美は剛とのデート楽しんできて」

「あの。デートの場所が臨海公園なんです」

「え!?」

「そこで待ち合わせして、フォトジェニックなハート型オブジェクトで写真撮ろっか、みたいな話してて。たぶん彼、もう向こうにいます!」

「じゃあ、今頃魔法少女のコスプレして戦ってるってこと!? ひとりで!?」

「そういうことになりますね。先輩! わたしも連れて行ってください! 剛を助けないと」


 麻美はいつになく必死な様子だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ