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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-33.告白

 ちょっと迷っていると、スマホにメッセージ。


『先客がいたから、校舎裏はやめとこう。やっぱりみんな告白したいんだねー。校門前まで来て』


 なんなんだ。


 言われた通りの場所まで行けば、遥とアユムが待っていた。


 遥は車椅子に座っていて、そのハンドルを握るのはアユムで。ふたりともニヤニヤと笑みを浮かべているけど、やはり少し緊張しているようにも見えて。


「やー。びっくりだよ。学校の人目につかなさそうな所、どこも人がいてさ。邪魔するのも悪いし、いなくなるまで見てるわけにもいかないから、早々に退散させてもらいました。うん、ムードを邪魔しちゃいけないからね!」


 口数が多いなあ。しかも早口でまくし立てるような言い方。


「学校の外なら、どこか人がいない所もあるだろうから。そこ行こっか」

「わかった」

「ところでさ、悠馬。今日の学校、どうだった? みんななんか、緊張してた気がしない? 告白しますって人も多かったし、なんかこう……悠馬も恋したいなって思ったりした?」

「どうかな。わからない」


 そう濁しておいたけど、今日一日の学校の様子や、バレンタインデーというイベントに振り回される人々の姿を見て、その流れに身投じたいとはあまり思えなかったというのが事実だ。


 とはいえ俺も健全な高校生。そういうのが嫌いというわけではない。

 誰が俺を好きとか、俺が誰かに恋をするとか、そういうことを意識したのはもっと前で……。


「ここがいいかなー」


 遥が見つけたのは、小さな公園。

 冬の日は落ちるのが早くて、既に空は赤く染まっていて。もう少し早い時間帯ならば子供たちの遊ぶ声なんかが聞こえてるのだろうけど、今は静かだった。


「アユムちゃん、どっちから行く?」

「そういえば決めてなかったな」

「先行、譲ってもいいよー?」

「そうか。じゃあオレから行く」


 ヒソヒソ話をしながら、全部俺に聞こえていた。

 大事な話なのに。なんか緊張感がないんだよな。


 とにかくアユムが俺に向き直り、遥は自分で車椅子を動かして下がった。というか、俺たちの会話が聞こえない場所まで行った。


「悠馬。ハッピーバレンタイン。やるよ」

「ありがとう」


 チョコの入った箱を手渡した。ハート型で、かわいいリボンまでついている。


「は、ハートの形のチョコなんて似合わないと思ってるだろ!」

「思ってないから。かわいいから」

「そ、そうか。けどオレ、こんな性格だし。料理とか頑張ってるけど、遥ほどうまくできないし」

「それは俺の方が駄目だからなー。アユムの場合は、小さい頃からそういう性格だったし、俺は嫌いじゃない」

「小さい頃から、な……なあ悠馬。ガキの頃、田舎で会った時はオレのこと、しばらく男だって思ってたんだよな?」

「そうだ。申し訳ないことにな」

「いいんだ。気にするな。オレも悪かった。悠馬をあちこち連れまわってさ。オレが男みたいな振る舞いをしてたからなんだよ。けどさ、オレの方はなんというか、楽しかった」

「楽しかったのは俺も一緒だ」

「ううん。違う。男の子とこんな風に仲良く遊ぶのが楽しかったんだ。オレ、あの時既に悠馬に恋してた。好きだった。だから夏祭りの日に浴衣を着て。それから今までずっと好きだった」

「…………」

「悠馬。オレはこんなだけど、悠馬のことを好きな気持ちは誰にも負けない。オレを彼女にしてくれ」

「……」

「ああ。返事は言うな。遥との約束だからな。あいつの話も聞いてくれ。けど、オレを選んでくれたら嬉しい」


 笑顔を見せたけど、やはりどこか不安そうだった。


 そしてアユムは遥に向けて手を振った。会話は聞かないけど、様子は見てるってことか。


 今度は逆に、アユムが俺から離れていく。遥が車椅子を動かしてこっちに来た。膝にはチョコレートの箱。四角かった。


「やー。アユムちゃん、ハート型の箱なんていつの間に用意したんだろうね。びっくりだよ」

「見てたのか」

「まあねー。そして実は、わたしもハート型は考えてたんだけどね。貰った側の悠馬が恥ずかしがるかと思って、やめておきました。というわけでチョコあげる」

「あんまり気にしないけどな。ありがとう」


 バレンタインのチョコとすれば、かなりシンプルな柄の箱だった。リボンとかもついてない。


「えー? でも男の子がハート型の箱持ってたら、恥ずかしくない?」

「今日に限っては誇らしい日なんだよ。男にとっては」

「それもそっか。えっと、それでね。わたしたち、思えばずっと同じ学校に行ってたんだよね。小学生の頃から。同じクラスになったことも多い」

「そうだな。あんまり話はしてなかったけど。……たまにはあったか?」

「ちょっとだけね。つまり、アユムちゃんよりもずっと前から悠馬と知り合いだった」

「それはそうだ」

「まあ、好きでいた期間はアユムちゃんには負けるけどね」

「遥お前、アユムとの話し聞いてたのか?」

「え、聞いてない聞いてない。一緒にチョコ作ってた時に話して、思ったこと」

「そうか」

「アユムちゃんは良い子だよね。元気でかわいいし。強いし」

「それは遥も同じだろ?」

「まあねー。……でね、悠馬。わたしが悠馬のことを好きになったのは、車椅子を押してもらい始めた頃なんだけど、知ってるよね?」

「ああ」


 なんとなく想像はついていた。仲良くなったのはその頃からだし。

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