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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-31.学校でのバレンタインデー

 校舎の入口で膝立ちになりながら天を仰ぎ叫び続ける沢木にかける言葉が見つからず、俺たちは横を通り過ぎて校舎に入る。

 向こうは俺に恨みがましい目を向けてたけど。そうだよな。彼女持ちは敵だよな。しかも別に女を連れてるし。こいつにとっては許されざる行為なんだろうな。


 下足箱にローファーを入れて上履きに着替える。同じクラスの男子が、自分の下足箱を開ける際に緊張した顔をしているのが目に入った。

 中にチョコレートが入ってないか期待してるのかな。そんな所に食べ物が入ってても気持ち悪いだけだろ。


 どうやら結果は撃沈だったようだ。周りを見れば、同じような生徒は大勢いた。なんなんだ。



「みんな。ちょうど良かった。おはよう」

「あ。剛先輩。おはようございます」


 俺たちが来るのを待ち構えていたのかな。剛が声をかけてきた。俺たちそれぞれ、おはようございますと返事をする。


「三人一緒に渡せて良かったよ。ハッピーバレンタイン」

「え、あ。ありがとうございます。……逆チョコ?」


 小さな透明ビニールの袋でラッピングされたクッキーを俺たちに手渡した。


「友チョコだよ。みんなにはいつもお世話になってるからね」


 そう言ってから、剛はウィンクしてみせた。中性顔の剛にされると、ちょっとドキッとしたのは内緒だ。


「知り合いみんなにチョコレートくばったら、麻美さんが嫉妬しません?」

「麻美にはちゃんと特別なのを用意しているよ」

「ならいいんですけど。ていうか、受験生なのにこんなことしてる暇は」

「こう見えて志望校には合格圏内の判定だから」

「うあー。先輩が眩しい。そうだ。友達みんなに配ってるなら、あそこに沢木がいるのであげてください。少しは静かになると思うので」

「彼は今日、特に騒がしいみたいだね。行ってくるよ」


 ははっと笑って、剛は校舎前に向かった。沢木の叫びはここまで聞こえてくる。叫んでるってことは、今この瞬間も貰えてないのだろうな。


「先輩、お菓子作りもできるんだなー。すごいよね」

「オレたちより慣れてそうだ」

「わたしたち、この何日かで頑張っただけだもんね。あー、麻美さんが羨ましい」


 車椅子の遥をアユムが押しながら話している。

 仲がいいな。


 教室で、それぞれの席に座ればお互いに会話がない。教室内でもチョコを貰えたとか貰えないとか、もうすぐ卒業する先輩に渡していい返事を貰えたとか。それぞれの青春の光景が広がっていた。


 やがてそれも、担任が来てホームルームが始まったら静かになる。

 すると、スマホにメッセージが来た。遥からだった。


『放課後、校舎裏に来てください。アユムちゃんも一緒にいます』


 そんな内容。


 対面で言わず、スマホに送ってくる意味がわからない俺ではなかった。



――――



 小学生にもバレンタインデーというイベントは大切なものらしい。むしろ、背伸びして恋だとか愛だとか言いたい子供たちにとっては、大人よりも心ときめくものかもしれない。

 お菓子を持ってくるいい機会みたいな捉え方もしてるかも。


 そういうわけで、ラフィオが隠れて鞄から眺める前で、チョコレートやクッキーが飛び交っていた。先生が来たら途端に静かになるのだから、統率がとれている。小学生も侮れないな。


 ちなみにチョコレートは、つむぎたちが最初に作っていた、溶かして固めただけのやつが多かった。小学生だから凝ったものをつくれるわけではないか。


 男子にあげるだけではなく、友達同士で似たようなチョコレートを交換してる様子も見られた。

 みんなそれぞれ、夜には歯が折れそうな思いをするのだろうな。


 小学校のバレンタインデーは平和に終わって、当然だけど自分にチョコレートが渡される機会が無いことに少しの寂しさを覚えながら、ラフィオは鞄の中に隠れ続けた。

 そして放課後。


「あのねラフィオ。家に帰る前に、また石を拾いに行きたいなー」

「なんでだい? まだ必要ないと思うんだけど」

「行きたいの。もうすぐ完成するんだよね? なんかこう、こまめに様子を見に行くことって大事だと思うな。行こう行こう」

「……」


 日曜日に、みんなで拠点としている家に行ったところだ。そこでお昼ごはんも食べた。そして石を交換した。

 拾った石から魔力が抜けきるまで、まだ時間がある。もう少し放置してもいいけど、つむぎはどうしても行きたいらしい。


 たぶん、別の用事があるんだな。それが何なのか察せられたラフィオだけど、わざわざ言うのは粋ではないことも知っていた。

 下校ルートを、妖精姿のラフィオを抱えて上機嫌で歩くつむぎ。ニコニコと笑顔を見せる様子は愛らしかった。


 事実、拠点としている家に着いたつむぎは、少年の姿に変化したラフィオに石なんか放っておいて椅子に座るように言った。そして自分はキッチンへと向う。

 週末にここに来たとき、材料は持ち込んでいた。それに紛れて、何か用意してたとしても不思議はない。


 つむぎが準備している間、ラフィオは床に描かれた魔法陣を見ていた。


 キエラたちが住むエデルード世界へ行くために必要な石は、もうすぐ完成しそうだ。

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