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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-26.離れてこそ想う

 避難していた店員や客や、にわかに集まってきた野次馬たちの歓声を背に俺たちは退去していく。追いかけてくる奴もいたけど、普段通りに振り切った。

 そしていつものように家に帰る。


「お昼ごはんにしよっかー。作らなきゃねー。悠馬はテレビでも見てて」

「手伝うけど」

「まだバレンタインデーではないので」


 はいはい。男子禁制な。


 ここ数日、魔法少女たちはさらにチョコレート作りに勤しんでいた。

 試作品を俺は食べさせられ続けている。もう既にチョコレートを貰いまくっているのではと思うのだけど、本人たちにとってはノーカンらしい。


 チョコレートおいしいから、いいけど。初日に出してきた、石みたいに硬いチョコから、レベルはだんだん上がって行った。柔らかいし、味も深みがあるし。形もアルミカップに頼る段階から脱していた。

 完成品がどうなるのか、ちょっと楽しみではあった。


 そういうわけで、俺はやることもなくてソファに座ってテレビを眺めていた。


 一応、愛奈にはメッセージを送っておいた。戦いは無事に終わったと。


「ラフィオー。モフモフー。すりすりー」


 同じくソファに座っている少年姿のラフィオに、つむぎがすり寄ってきている。今度は猫っぽいな。ラフィオはといえば、少しうざったそうな顔をしながらも口元は笑っていた。そしてつむぎの頭を撫でている。

 ふたりの時間が楽しいのだろうな。邪魔しないでおこう。


『私は魔法少女の戦いの場に立ち会った。先日の戦いだ。本当に素晴らしかった。そして彼女たちは今日も戦ってくれた。見てくれ、この戦闘の跡の凄まじさを。そして、店を立て直そうとするスタッフの動きも見てくれ。この惨状に挫けていない。実にタフだ。強い人たちだ』


 テレビの中でチョコツクレルが熱く語っていた。魔法少女が出たと聞いて現場に駆けつけて、そしてテレビの取材を受けたらしい。


 この人も本当に好きだな。悪意がないことはよくわかるけど。


 俺たちの戦いが、なんのインスピレーションを与えるのか、よくわからない。けど天才にはビジョンが見えているらしい。

 スマホが震えた。愛奈からだった。


 お疲れ様。今日のうちに帰ります。そんな文面だった。



――――



 花嫁からの手紙とか、近親者からのスピーチとか、写真撮影とか。一通りのイベントをこなして結婚式は無事に終わった。出された料理もおいしかった。

 花嫁姿は本当に綺麗で、憧れる気持ちも愛奈には少しだけあった。ほんの少しだけだった。



 式が終わってようやく、さっきの警報の詳細を調べることができた。同じく模布市住みの友人たちもスマホに向き合う。家族の心配をしているのだろう。


 魔法少女たちの活躍により、人的被害は無く事態は終結したとニュースサイトに書かれている。悠馬からも、みんな無事だとメッセージが来ていた。

 遥からもだ。お姉さんがいなくても勝てましたと得意げな文面。姉ではないと返しておいた。


 けど、包丁のフィアイーターか。それはたしかに、わたしが相手するべきだったな。行けなかったのは仕方ないとしても、ちょっと悪い気がした。


 うん、あの子たちにはやっぱり、わたしがいないとね。


 式の二次会にも参加した。昨日話した佐野くんとは連絡先を交換した。あの話、是非受けてほしいと。東京はいいところだし、悪いようにはしないと言われた。

 ああ、東京はいいところだな。佐野くんの言葉も本当だろう。仮に付き合うとしたら、大切にしてくれるだろうな。


 でも。


 東京在住組が三次会がどうとか言ってるのを名残惜しく断りながら、模布市組は固まって駅まで向う。


 花嫁姿良かったねとか良い式だったとか、あんまり中身のない感想を語り合ったり、高校時代の思い出話に花を咲かせたりしつつ、スマホで家族と連絡を取り合ったりもした。

 みんな、なんとなく昼間の怪物騒ぎを気にしていた。家族に何かあったらどうしよう、と。すぐに駆けつけられない場所にいるのがもどかしかったようだ。


 愛奈の場合は、みんなか無事なことは確信していた。けど、やっぱり恋しいと思ったのは間違いなかった。


 悠馬だけじゃない。遥たちにも、早く会いたいと思った。週末、少しの間家から離れているだけなのにな。休日はほとんどの場合、部屋に引きこもって寝てて、遥たちと顔を合わせることは少ないのにな。

 近くにいれば何とも思わないのに、離れたら会いたくなるって。


 これを家族と言うんじゃないかな。


 東京駅には店がたくさんある。お土産はもう買ったからいいとしても、目移りはどうしてもしてしまうもので。


「ここでもチョコレートって売ってるのね」


 バレンタインが近いからな。チョコツクレルほど有名じゃないけれど、名の知られたパティシエ監修のチョコのポップアップストアがあった。

 なんとなく、足がそっちに向かっていった。



――――



 フィアイーターを倒した後は、特に変哲もない日曜日が過ぎていく。


 チョコ作りもそんなに長いことやるものではなく、遥たちは夕飯作りに切り替えていた。俺はやることもないからぼーっと過ごしていた。少し、部屋で勉強するくらいだ。

 夜になれば国営放送で歴史ドラマをやってるのを見る。別にこの家の誰も歴史に興味はないけど、なんとなくみんな見ていた。戦国武将が乱世の無情さに涙しているシーンだ。


 戦をやらなければならないが、そのための犠牲が悲しすぎるとかどうとか。こういう性格の人間は戦国武将やってられないものだよな。けど、こんなのでも有力武将として後世に名を残すのが不思議なものだ。

 敵は倒さなければならない。それは、自分が庇護する領地の民のためでもある。けど戦闘狂であっては戦士としては二流。優しさも持たないといけない。


 戦う者っていうのは大変だな。強いだけじゃなくて優しさも持ってないといけないんだから。


 魔法少女たちは実践できているのだからすごい。


 するとスマホが鳴った。愛奈からメッセージだ。

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