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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-25.包丁で包丁を切る

 バランスを崩したフィアイーターはなんとか踏みとどまろうとしたけど、直後膝に矢が刺さった。これによって転倒。

 もちろん脚立に掴まっていたバーサーカーもだ。


「うわー!?」


 情けない悲鳴と共に、何かの陳列棚に突っ込んでいくバーサーカー。無事かな。たぶん無事だろう。

「奴の手から包丁を奪え!」


 そう指示を出しながら、俺も鉄パイプの先端で倒れたフィアイーターの手を叩く。数度繰り返せば奴の手が開いたから、包丁を蹴って遠くへやる。

 もう片方の手に、光る矢がグサグサと刺さっていった。力が入らなくなったその手にラフィオが接近して噛みつき、完全に自由を奪って包丁を振れなくする。


「えい! えい! 割れろ! コアを見せなさい!」


 ライナーがフィアイーターの胴、あるいは柄と呼ぶべき箇所を何度も蹴っていた。木製の表面が削れて、段々と中の闇が見えていく。

 俺も奴の胴体を押さえながら、拾った包丁を突き立てて傷をつけていった。包丁を包丁で切るという経験をする日が来るとは思わなかったが、新品で切れ味のいい包丁は木製の柄にしっかりと切り傷をつけていく。


「ライナー。この傷を思いっきり蹴ってくれ!」

「よしきたー!」


 俺がフィアイーターの体を押さえてるのを見ながら、ライナーは傷の辺りを思いっきり踏みしめた。

 バキッと大きな音がして、フィアイーターの胴が折れた。そしてコアも見つかった。


「あった! 食らえ! ライナーキック!」


 なんでとどめを刺す時だけ殺人と言わないんだろう。気分の問題とかかな。

 とにかくライナーの蹴りによってコアは砕け、フィアイーターは黒い粒子を撒き散らしながら壊れた包丁へと戻っていく。


「ふー。勝ったねー。セイバーがいないと厳しそうな敵だったけど、わたしたちでもなんとかなります! うん! いける!」

「おいライナー! 助けるにしても! 他にやり方あっただろ!」


 バーサーカーが怒った顔をしてずんずんと近づいてきた。


 無事そうでなによりだ。


「え。あ。うん。チャンスだって思って突っ込みました!」

「オレは大変だったんだよ!」

「持ち上げられた時点で、手を離して自分から降りれば良かったじゃん」

「そ、それはそうだけど! なんか怖かったから! 高いところ!」

「気持ちはわかる。振り回されてる時に冷静な判断とかできないよな」

「だよな! ほら悠馬もそう言ってる!」

「悠馬! わたしの扱い雑じゃない!? さっきも言ったけど!」

「今日はライナーも、ちゃんとフィアイーターと戦えてた。偉いぞ」

「あ……」


 なんとなく、彼女はこれを望んでいるとわかったから、ライナーの頭を撫でてあげた。


 表情を見るに間違いではないらしい。蕩けたような、ふにゃりと締りのない笑顔を見せた。


「雑魚狩りも立派な仕事だし、ちゃんと強敵とも戦える。ライナーのおかげで助かってるよ」

「えへへ。そっかー。悠馬の役に立ってるなら、わたしもっと頑張っちゃおっかなー」

「お、おい悠馬。オレも撫でてくれ!」

「悠馬。もっと撫でてー」

「まったく……」


 手はふたつある。片手ずつ、それぞれの頭に乗せて撫でる。何やってるんだ、俺は。



「ねえラフィオ! わたしもなでなでして!」


 ハンターの声が聞こえた。定位置であるラフィオの上から珍しく降りて、彼の前で座る。犬みたいな座り方だな。


「いや、なんでだ」

「わたしいつもラフィオをなでなでしてるけど、たまにはラフィオに撫でてほしいの!」

「なでなでじゃなくてモフモフだろ? それに、僕は別に撫でたくないし」

「でも、ラフィオに頑張ったって言ってほしくて」

「はいはい。わかった。ハンターはいつも頑張ってる。敵も一番倒してる。偉い」


 少しうんざりした様子ながら、言ってることに嘘はなさそうなラフィオが、ハンターの頭に前足を乗せる。

 前かがみになって撫でやすいようにしてるハンターは、本当に幸せそうで。


「頭撫でられるのって、気持ちいいのか?」

「好きな相手にされるから良いんだよー」

「そういうものか」


 俺にはよくわからない。恋をしたらわかるのかな。


 今の俺にわかるのは、戦いが終わったのに魔法少女たちが居座り続けるのは良くないってことだ。ふたりの頭から手を離す。


「みんな帰るぞ。ラフィオ、乗せてくれ」

「ああ。わかった」

「ラフィオー。帰った後もなでなでしてー」

「わかった。わかったから」


 ハンターは座ったまま、ラフィオの足に体をすり寄せていた。今度はなんか、猫みたいだなあ。


 俺がラフィオの上に乗ると、定位置は譲らないとばかりにハンターも立ち上がって俺の前に乗る。

 店内が静かになったことに気づいた店員たちが、恐る恐るこっちにやってきた。戦いは終わったと告げると感謝の言葉を返された。


 店がめちゃくちゃなのは申し訳ない気持ちがあるけど、全部フィアイーターのせいだと考えよう。

 俺が振り回していた鉄パイプも返しておいたぞ。バーサーカーが振り回してた脚立と合わせて、魔法少女たちの戦いを助けた武器として店頭に展示しておくと、店の責任者が言っていた。


 それが客を引き寄せて店の復興の手伝いになるなら、それでいいんだけど。

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