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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-23.包丁のフィアイーター

「みんな。行くぞ」


 一足先にフィアイーターの出現を察知していたラフィオが巨大化しながら言う。俺は玄関まで走って遥の車椅子からナイフを回収してから覆面をかぶる。

 戻ってきたら、魔法少女たちはみんな変身していた。


「悠馬乗れ。行くぞ」

「あー! 待って! わたしが運びたかった!」

「オレだって!」


 こいつらは毎回飽きもせずに。


 俺は迷いなくラフィオに飛び乗った。そして全員で現場に急行。

 市内にあるホームセンターにフィアイーターは現れたらしい。何でも売ってるってイメージの店だから、フィアイーターが何なのか予想がつかない。


 弱そうな奴なら嬉しいんだけど。


「ラフィオ、そこで下ろしてくれ」


 入口でいいものを見つけた俺は、それを手に取る。細い鉄パイプ。長さもちょうどいい。棒術を披露するのにもってこいだ。


「あー。悠馬。見て。あれがフィアイーター」

「おおう……」


 ライナーが指差した先には、大人の背丈くらいまで巨大化した包丁がいた。

 柄の部分から手足もしっかり生えている。素材は木だろうか。


 頭の部分はもちろん刃になっていて、身を曲げながらそれを振った。陳列棚が斜めに切り裂かれて、上の方がずれていきながら落下した。


 フィアイーターは両手にも包丁を持っていた。売り物を回収したのだろうな。新品だから切れ味は最高だろう。

 さらに。


「フィー」

「フィー!」


 黒タイツたちも包丁を握っていた。さすがに全員分はなかったのから、何人かは電動ドリルとかを握ってたけど。それはそれで強そうだな。


「ねえ! なんで愛奈さんいない時に限って! あんなの出てくるの!? あれってセイバーが相手するべきタイプじゃん!」

「まあ。そうだな」


 刃物には刃物をぶつけるという発想は安易かもしれないけど、でもセイバー向きの相手ではある。


「ていうか! わたしの武器は足だよ! あれで包丁を受け止められると思う!?」

「ライナーの足は頑丈だからなんとかなるだろ」

「試したくないです!」

「お前ら伏せろ!」


 背後からバーサーカーの声。何事かと思いつつもしゃがんだら、彼女は身の丈以上の大きさがあるベニヤ板をぶん投げた。


 それ、売り物だよなあ。勝手に使うのはどうかと思うけど。まあ今更か。俺も鉄パイプ持ってるわけだし。

 ベニヤ板は黒タイツの群れに直撃。何体かが重さと激突の衝撃によって倒れた。


 そこにすかさずハンターが矢を射掛ける。


「よーし! ラフィオ突撃!」

「わかってるよ! みんなも続け」

「そういうことだ。行くぞライナー」

「むあー! わかった! 愛奈さんがいなくてもなんとかできるって見せつけてやるから! うおおおおおおおお!」


 刃物を持った相手に怯むことなく突っ込んだライナーは、考えなしというわけではなかった。


 黒タイツが振ったナイフをちゃんと見切った上で、懐に潜り込みながら膝蹴り。急所は外れたものの大きくよろめいた黒タイツの頭を思いっきり踏みつけて止めを刺す。


「殺人キックの威力を見たかー!」


 なんでそんな変なテンションなんだ。


「おら! 死ね! ぶっ殺してやる!」


 物騒な物言いのバーサーカーは、売り場からアルミ製の脚立を見つけて振り回していた。


 相当な大きさと重さがあるそれは、黒タイツたちの包丁よりもよほど威力があった。というか包丁が届く前に、巨大な金属に打ちのめされることになる。

 間違った脚立の使い方によって、黒タイツたちは陳列棚に押し付けられ、商品と共に床に崩れ落ちることになる。


「バーサーカー! ちゃんと止め刺せよ!」

「とりあえず無力化させるから、あとは悠馬がなんとかしてくれ!」

「俺もそれどころじゃない!」


 黒タイツは俺にも襲いかかってくる。魔法少女ほどパワフルでも機敏でもない俺は、もちろん包丁で斬られたり刺されたりすれば命に関わる。けど、こっちだって包丁よりもずっとリーチのある武器を持ってるわけで。

 冷静に対処すれば怖いことはない。


 黒タイツがこちらに包丁を向けて突進してくるのを見極め、鉄パイプを振る。包丁をすくい上げるようにして軌道を逸しながら、さらにパイプで突く。

 腹部にパイプの先端が激突した黒タイツは痛みに叫び、包丁を取り落とした。俺はすかさずパイプを縦に持って邪魔にならないようにしつつ、ポケットからナイフを出して奴の首に刺す。


 背後から足音が聞こえてきたから、振り返りながらそいつにパイプを振る。手元に当てて包丁を叩き落としながら、そいつにもパイプの先端を突きつけた。


 首に刺さるように向きを調整して、黒タイツを大きく咳込ませる。少なくともそんな仕草にした。口は無いけど叫べるのだから、咳もするだろう。

 後退って逃れようとする黒タイツだけど、俺は一旦パイプを床に落としながらナイフを両手で握って突っ込んでいく。

 奴の腹にしっかりと刺さった。刺殺っていうのはこうやるんだよ。


 なんて、悦に浸ってる暇はなくて。黒タイツが二体こっちに向かって来るのが見えた。


 即座にパイプを拾いなおして、さらに別方向から襲われないように陳列棚を背に立つ。そしてパイプをぶんぶん振って、黒タイツ二体を牽制する。

 もちろん奴らが踏み込んでくるまでの時間稼ぎはあまり長くはできない。だから俺から動かないといけない。

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