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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-20.同窓会にて

「あ、そうだ。今のうちにお土産買っておかなきゃ」


 明日はバタバタしてそうだし。駅のショップへ行って、早めに買い物を済ませよう。


「あ。こういうのもあるんだ」


 世界的に有名なゲーム作品のキャラクターを扱ったショップを見つけた。黄色いネズミのキャラが人気。そして、東京駅限定デザインのぬいぐるみが売られていた。

 つむぎちゃん喜ぶだろうな。電気ネズミさんのぬいぐるみ自体は持ってても、このバージョンはないはず。買ってあげよう。他のみんなにも、それぞれ何か買ってあげてもいいかな。何がいいかは、よくわからないけど。


 模布市の家族の顔が思い浮かんで、愛奈の口元に自然と笑みが浮かんだ。


 家族。そうだ。家族だな。悠馬だけじゃない。遥たちも含めて、今は家族なのよね。

 東京駅の構内をあちこち歩き回りながらも、愛奈の心は模布市に向いていた。


「あれ? 愛奈?」

「え? あ。花凛?」

「わー! 久しぶり! そっか愛奈も結婚式招待されてたんだね!」


 ふと声を掛けられる。高校の同級生だった。こっちを見つけて駆け寄ってきた彼女も、去年結婚している。模布市でいい旦那を見つけて、名字を変えて幸せにやってるそうだ。薬指の指輪が光っている。

 彼女も新幹線でここまで来たんだろうな。


「ねえねえ。今夜みんなで集まろっかって話してるんだけど、愛奈も来る? ちょっとした同窓会みたいな感じで」

「行くわ。ホテルにチェックインしてからね」

「ええ。場所、後で連絡するから。また後で!」


 花凛はバタバタとせわしなく走り去って行った。誰かと会う予定があるとかかな。今夜の同窓会も、彼女が主催とかなんだろう。

 高校時代から、みんなの注目を浴びていた、クラスの中心人物。相変わらずだな。


 同窓会って誰が来るんだろ。学年の同窓生全員に連絡してるわけじゃないだろうし。仲のいい子に声をかけたって程度かな。

 まあいいや。すぐにわかるだろうし。みんなにお土産を買って、そしてホテルにチェックインしてからスマホに送られたメッセージに記載のあった場所へと向う。


 普通の居酒屋だ。広めの座敷席があって、会社の忘年会とかにも使えるらしい。もちろん同窓会も可能。

 そんなスペースに、懐かしい顔が十数人集まっていた。男女比が半々くらいだった。結婚する当人は来てなかった。前日だし忙しいよね。


 愛奈の登場に、おおと声が上がる。久しぶりだとか、元気にしてたかとか。


 幹事である花凛の音頭で乾杯して、後は懐かしい思い出話だ。


「双里さん聞いたよ。ご両親のことは残念だったね」


 高校卒業して以来合ってない同級生から話しかけられた。愛奈にとっては何年も前のことだけど、この子にとっては直接お悔やみを言う初めての機会。触れないというのも変な話題だし気遣いだ。

 ありがたく受け取っておこう。


 周りのみんなも、次々に声をかけてきた。なんでわたしが主役みたいになってるのよ。


「みんなありがとうね。もう慣れたから大丈夫よ。みんな飲みましょ」


 そう言ってビールを煽る。いい飲みっぷりに、周りから驚嘆の声が上がる。


「飲まなきゃやってられないわよ! ほら! みんな飲め!」

「愛奈ちゃん相変わらずねー。普段から頑張ってるんだから、今日くらいは楽しんで」

「ご両親亡くなって、弟さんの世話もしながら働いてるんでしょ? 大変だよね」

「双里さん偉い!」

「だからわたしの話題じゃなくて! 結婚するあいつの話をしろ! ……あとわたし、どっちかというと弟にお世話されてる側だから!」

「えー。弟さん高校生よね? もしかしてご飯とか?」

「作ってる!」


 正確には魔法少女の妖精や、弟の彼女を名乗る片足の女子高生が作ってるのだけど。本当のことを言うわけにはいかない。


 弟さんすごい、みたいな声が上がる。そうよ。もっと悠馬を褒めなさい。わたしの理想の弟なんだから。


「そうなると、双里さん結婚はしばらくできないね」


 ふと、元クラスメイトの男が正面に来て話しかけた。


 びしっとしたスーツ姿。高いやつなのはわかる。ネクタイピンには小さな宝石がつけられていた。

 こういう居酒屋には似合わなそうな格好だな。いい会社に就職して稼いでるのはわかるけど。


「そうねー。結婚は無理ね。というか、もう弟と結婚したい」


 元同級生たちの前でそんな言葉を出したのは、酒の勢いのせいかな。

 正面の彼は、ふっと笑顔を見せた。


「弟と結婚か。現実的じゃないな」

「それはそう! 結婚は無理! けど、一生添い遂げるのはありだと思います!」

「たしかにね。けど、弟の方はどう思ってるんだろう」

「んーとね……」



 悠馬は姉のこと、好きでいてくれるだろうか。


 関係性は良好だ。普通の姉弟以上に仲がいい。たったひとりの肉親なのだし。

 けど、それが恋愛感情に結びつくことはあるだろうか。


 愛奈だって薄々気づいている。それはありえないと。


 悠馬は常識的な人間だから、姉と結婚なんかしない。愛し合うことはない。一生添い遂げることも、たぶんない。

 それはそうとして、他の女に取られるのは嫌だから妨害してるけど。


 けどそれ以上にわからないことがある。

 悠馬は、誰かに恋愛感情を抱くことはあるのだろうか。


 彼の周りには女の子が多く、好意を隠さずに向けている。


 先週だってそうだ。悠馬がアユムから好きだと言われたこと、愛奈はしっかりと聞いていた。悠馬に運ばれている感覚が心地よかったから、眠ったふりをしていただけ。

 そして悠馬は、さしたる反応を見せなかった。


 彼は健全な男の子で、女の子から好意を向けられたら嬉しいと思うのではないだろうか。遥だってアユムだって、かわいいし良い子だ。魅力的だ。告白されたら即座に了承するという男の子は多いだろう。

 なのに悠馬は違う。なんでだろう。


 女の子に興味がない? いやまさか。それは違う。


 じゃあ、今は恋愛なんかしてる暇はないとか、そういうことだろうか。


 あるかもしれない。他のことに忙しいから、女の子と付き合うことはできないと。

 じゃあ、何に忙しいのだろう。


 まさか、手のかかる姉の世話だとか?


 わたしの存在が、悠馬の幸せの妨げになっているとしたら?

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