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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-18.不意打ち

 こういう時は。


「姉ちゃん! もっと飲め!」

「えー? いいの? いつもは飲むなって言ってるのに。今日の悠馬やさしー」


 別の缶のプルタブを開けて、愛奈の口に押し付けるように差し出す。


 すでに酔っ払ってる愛奈は、なんの疑いもなくビールを一気飲みする。


 酔わせてしまえばこっちのものだ。無力化した愛奈は、ふわふわした表情で虚空を見つめていた。


「あー。星がきれいだなー」

「見えてないだろ」

「あれはきっと織姫と彦星の星ねー。ロマンチックよね」

「季節が違う」

「ういー。もう一杯」

「ああ。飲め」


 いつもの習慣で、コンビニでは大量のビールを買っていた。おかわりはいくらでもある。


 マンション入口の廊下で、壁を背にして地べたに座りながら飲み続ける愛奈は、完全に女子高生ではなかった。

 やがて酔い潰れて、隣に座る俺の肩に頭を預ける。まあ、くっつくにしてもそれくらいなら良い。


 いいんだけど、ここから愛奈を家まで連れて帰るのは大変だな。今回は特に荷物が多い。テレビもふもふで買ったものに、コンビニで買った酒の残りに、ブランドものの服を着るから脱ぐことになった俺の制服。

 こういう時に女に頼るのは最悪だとわかってる。わかってるけど、頼らざるをえない。


「もしもし、アユム? 頼みがあって。ちょっと外まで来てくれないか」


 電話するまで躊躇いはなかった。



 アユムはすぐに来てくれて、状況に呆れた顔を見せた。


「どうなってるんだ、これ」

「姉ちゃんが俺とふたりで飲みたいって言うから、ここで飲んだ。制服姿で店はまずいからな。で、案の定めちゃくちゃ飲んで、勝手に酔い潰れた」

「愛奈に言われたまま付き合ったのか?」

「まあ、そうなるかな」

「楽しかったか?」

「嫌ではなかった」


 愛奈は相変わらずたちの悪い酔っ払いだけど、夜空の下で飲む愛奈は幸せそうで。それを嫌だとは言えなかった。


「そうか。こっちの夜なんて、夜でも明るくて雰囲気ないけどな。星も見えない」

「田舎の方が雰囲気はありそうだな」

「でも、楽しかったのか。そうか」


 少し寂しそうな顔のアユムは、自分が呼ばれた理由がわかっている様子で、荷物をいくつか持つ。俺も愛奈をお姫様抱っこした。


「スカート。お尻のところ押さえておけよ。横から丸見えになるから」

「見る人いないだろ」

「オレに見えるんだよ」


 見えちゃ困るのか? 言われた通りに、愛奈のスカートを押さえて下に垂れないようにする。


 そのまま、無言でエレベーターに乗り込んだ。横抱きしている愛奈のせいで、なんか狭い感じがする。


「なあ、悠馬」

「うん」


 ふと、アユムが話しかけてきた。世間話でもするみたいに。

 そして。


「悠馬。オレ、お前のことが好きだ」



 告白した。



 俺にとってもアユムにとっても今更なこと。けど、今だった。不意打ちだった。


「……そうか」


 だから俺は、中身のない相槌しかできなかった。

 そんな情けない俺に、アユムは笑顔を向けてくれて。


「いきなり言われても困るよな。返事は今度聞かせてくれ。バレンタインの日とかに。初めて作ったチョコは失敗だったけど、当日まではうまく作るから」


 ちょうど開いたエレベーターのドアから出たアユムは、いつもの調子に戻っていて。玄関を開けて中に声をかけた。


「おーい。遥、聞いてくれ。愛奈のやつ酔っ払って、悠馬に抱かれてるぞ」

「ちょっ!? なんで!? てか酔っ払いってどういうこと!?」


 バタバタと片足だけの足音が聞こえる。


 けど、アユムのさっきのあれが、聞き間違いじゃないことはわかっている。

 いずれちゃんと返事をしないといけないことも。


 ていうか、チョコ作りが失敗ってどういうことだ?



――――



 悠馬たちが帰ってくる前のこと。


 ラフィオと一緒に家に戻ったハンターは、すぐさま御共つむぎに戻って洗面所へと向かった。

 相変わらず濡れたままのラフィオにドライヤーを当ててブラッシングすることでモフモフを取り戻すためだ。


 モフモフになったらモフモフされるわけで。ラフィオにとってはあまり嬉しいことではない。でもまあ、濡れたままも気持ち悪いからな。ドライヤーからの熱風をおとなしく受ける。

 ラフィオは全身を乾かされて、モフリストつむぎによる丁寧なブラッシングによって元のモフモフに戻っていく。


「わーい! モフモフー!」

「おい! やめろ! せっかく整えた毛並みが乱れる!」

「乱れたらまた整えてモフモフしてあげる!」

「終わりが見えない!」


 つむぎの手に掴まれてもみくちゃにされながら、ラフィオはつむぎに洗面所から連れ出された。

 リビングでは、遥とアユムが冷蔵庫を開けていた。


「あ、つむぎちゃん。チョコ固まったよ」

「本当ですか!? 見せてください」


 ラフィオを掴んだまま、キッチンに入って冷蔵庫から出てきたチョコを見る。おい。キッチンは男子禁制じゃなかったか。


 アルミカップに入った、固まったチョコ。ご丁寧にハート型のカップもあるぞ。

 単に固めただけではなく、上にチョコスプレーやアラザンが散りばめられている。ハート型のチョコスプレーも混ざってて、なかなか可愛らしい。


「じゃあラフィオ、食べて!」

「バレンタインデーにはまだ早いぞ」

「本番にはちゃんとしたのを渡すから!」

「そうか」


 つむぎの手からすり抜けて、少年の姿に変身するラフィオ。つむぎから受け取ったチョコをカップから抜いて噛んでみて。


「硬い! 歯が折れるかと思ったぞ!?」

「え? え?」


 まさかの感触に驚きの声を上げた。

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