表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

674/746

14-15.懐が大きいチョコツクレル

 さて、これからどうしよう。こんなことがあったら、なんとなくデートを続ける気にはなれない。みんなと一緒に帰ることになるかなと考えていた。

 すると、拍手の音が聞こえてきた。


「素晴らしい! これが魔法少女の戦いか! エネルギッシュでエキサイティングで! 生で見ることでしか得られないインスピレーションが次々に浮かんでくる! これぞ生きるということなんだな!」


 チョコツクレル氏が興奮した様子で駆け寄ってくる。その後ろを、澁谷が困った様子でついてきた。


「初めまして! わたしはロベルト・チョコツクレル。ニューヨークを拠点に、スイーツ作りをしています。わたしの使命はスイーツを通して世界の美しさを表現すること!」

「ごめんなさい皆さん。チョコツクレルさんと一緒に隠れて様子を見てたんですけど、どうしても話がしたいと強引に出てきて」


 澁谷が申し訳なさそうに頭をさげる。


 パティシエという仕事は体力勝負なものらしい。彼も人間としてはタフな方なんだろう。無理やり出ようとすれば、澁谷にも止められないだろう。


「皆さん、あなたたちの戦いは素晴らしかった。できればもっと話を聞きたい。じっくり取材させてもらえないだろうか!?」

「えーっと……」

「チョコツクレルさん、魔法少女の皆さんにもプライベートがあります。あまり引き止めるのは」

「いいですよー」

「おい」


 澁谷が気を利かせてくれたのに、セイバーがちらっと俺の方を見てから了承した。待てこら。


「わたしと覆面くん、デートの途中で怪物騒ぎに巻き込まれちゃったのよね。わたしたち、付き合ってるから。付き合ってるから!」

「ちょっ! 何言ってるんですか!? お姉さんはゆう、覆面さんの弟です!」

「姉弟だけど付き合ってるのよねー」

「付き合ってるのはわたしです!」

「ふたりとも。チョコツクレルが困ってるだろ」

「いや、彼女たちのエネルギッシュな関係が見えて素晴らしいよ」

「マジかよ」


 これを肯定できる人間、まともじゃないだろ。


「でね、チョコツクレルさん。覆面くんの制服のズボンが汚れちゃったから、ここで新しいのを買いたいなって。デパートならいいの売ってそうだし! それを選んでお金を出してくれるなら、その間はインタビューに応じてあげる」


 こいつはなんてことを言い出すんだ。けど、このズボンが気持ち悪いのは事実。


 あと、チョコツクレルの熱意は本物みたいで、拒絶しても簡単に諦めるとは思えない。無下にするのもあれだしなあ。


「それから。チョコツクレルさんのチョコ、バレンタイン用にちょっと欲しいなーって思いました!」

「おい」


 それが理由か。結婚する友達にあげるってやつ。たしかに話題になってるし、あげたら喜ばれるだろうな。


「もちろんだ! 魔法少女の力になれるというなら協力は惜しまない! 店員に連絡する。営業再開までは時間がかかるだろが、対応できないか取り次いでみよう! チョコレートは、今日用意したのは売れないな。怪物の巻き添えを食ってしまったから。新しいのを用意しよう。どこに送ればいいかな?」

「澁谷さんのテレビもふもふに」

「わたしですか!? ……まあ、窓口になるのは構いませんけれど。その代わり、今からやる買い物はうちのクルーも同行させてもらいますから」

「ええ。いいわよー。ちゃんと撮ってね」


 たぶん、澁谷への義理立てもあるんだろうな。ここでちゃんとチョコツクレルに話しをすれば、彼とこれ以上関わることはなくなる。


「というわけで、ライナーたちはさっさと帰りなさい」

「いやいや、そうもいかないから!」

「そうだ! オレたちだって覆面とデートしたい」

「来週やりなさい! 帰れ帰れ。元々わたしたちがデートしてたのよ」

「うー!」


 剣をブンブン振ってライナーたちを遠ざけるセイバー。ライナーたちは納得行かないようだけど、俺と愛奈がデート中だったのも事実。


「みんな! 帰りましょう! 早くラフィオを乾かさないと!」


 ハンターが戻ってきた。頭にラフィオを乗せている。全身ずぶ濡れになって、モフモフではなくなっていた。

 犬がするように体をぷるぷる震わせて周りに水飛沫を飛ばす。けど濡れてる状態は変わらなかった。


 体についたプリンは洗い落とせたんだろうな。いくらプリン好きでも、それでお腹がベトベトになるのは嫌か。


「僕としては、しばらくここで買い物をしてもいいんだけどね。プリンとか売ってそうだし」

「それはまた今度! 今はラフィオをモフモフに戻さなきゃ駄目なの!」

「そういうわけだ。帰るぞ」


 ラフィオに運んでもらうのではなく、自分の足で外に出て家に向うハンター。


「ああもう! セイバー! 今日は譲ってあげますけど! 今日だけですから!」

「あ、おい待てライナー!」


 ライナーとバーサーカーも、ハンターに続いていった。

 騒がしかったのがようやく収まった。


「慌ただしくてごめんねー。じゃあ行きましょうか」

「いいとも。デパートの人にも連絡はついた。紳士服売り場を特別に開けてもらうそうだ。来てくれ」

「そういうこと。行くわよ覆面くん。あ、このプリン無事そう。ラフィオに持って帰ろうかしら」

「やめとけ」


 洋菓子店のブースだろうか。無残な形になっていた。ガラスケースが割れて商品に破片が降り注いでいる。


 カップに入ったプリンは無事そうだけど、破片の影響が無いとは限らない。チョコツクレルが今日売っていたチョコレートを魔法少女たちに渡さないのも似た理由だ。


 破片を浴びた商品を売るわけにいかないんだよ。それが接客精神ってやつだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ