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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-14.プリンまみれ

「もー! お姉さんなにやってるんですか!? プリンで転ぶとか恥ずかしすぎですよ!」

「うるさいわね。わたしはさっき、ウーロン茶で転んだことにされた男を見たのよ。あいつどうなったのかしら」

「なんのことかわからないです。とにかく立ってください!」


 ライナーに助け起こされたセイバーは、揃ってフィアイーターと対峙する。


「悠馬! 無事そうだな!」


 バーサーカーも一緒に来ていた。そして俺の近くに駆け寄ると、黒タイツに強烈な張り手を食らわせていた。痛そうだなあ。


「助かった。狭い場所で襲われて、大変だったんだ」

「おう。オレ、頼りになるだろ? それで悠馬。デートはどんな感じだった?」

「姉ちゃんと一緒に過ごすと飽きない」

「そうか」


 この返事にどんな思いが込められてるかは知らない。バーサーカーは黒タイツの一体を持ち上げて、思いっきりぶん投げた。なにかの店に激突して盛大に破壊する。


「あ。やべっ」

「もう少し気をつけろよ。ほら行くぞ」

「おう!」


 バーサーカーの肩を叩き、別の黒タイツへと対峙した。


 俺が相手だといい勝負をするかもしれないけど、魔法少女が出てきたら黒タイツには勝ち目はない。でかい包丁を持ったフィアイーターが襲いかかってきたけど、バーサーカーはそいつの腕を掴んで捻りあげ、武器を落とさせながら腹を蹴った。


 うずくまった黒タイツの顔面に膝蹴りを食らわせて沈黙させる。


「お前は強いな」

「知ってる。次行くぜ」


 俺が包丁を拾って新しい武器にしている間に、バーサーカーは他の黒タイツを殺していた。



 黒タイツの数が減るにつれて、フィアイーターが直接戦わなければならなくなる。


 比較的柔らかい材質でできているから、セイバーの剣で切り裂くのも容易そう。だから対峙しているセイバーもライナーも楽観的な様子だったけど。


「わぎゃー!?」


 ライナーが変な悲鳴と共に転んだ。フィアイーターの股を駆け抜けて、セイバーと前後から挟み撃ちにしようと試みて、床にぶちまけられたプリンに滑ってしまったらしい。


「なにやってんのよ! わたしと同じことしないで! あとお姉さんじゃないから!」

「時間差で訂正しないでください! このフィアイーター! わたしと相性悪すぎです!」


 プリンが落ちてる床では走れないもんな。脚力を封じられたライナーは、そりゃ戦いにくいだろう。


「フィアアアアァァァァ」

「うわー!?」


 転んだライナーを踏みしめようと足を動かすフィアイーター。ライナーはその場でゴロゴロ転がってなんとか回避した。

 その間もフィアイーターは辺りにプリンの欠片を撒き散らしていて、足元がツルツルに滑る最悪な状況を作り出していた。


「これ、どうするべきかな」

「わたしがなんとかしてみるよー。足元が滑りやすいってことは、フィアイーターも滑るってことだよね!」


 ハンターはこんな時でも冷静で、少し呑気そう。ラフィオの上に乗ったまま、フィアイーターの足を狙う。

 透明プラスチック製の膝に矢が刺さった。


「フィアッ!?」


 痛みと驚きで、フィアイーターはバランスを崩しかける。なんとかその場に踏み留まろうとして、自分が撒いたプリンに足を滑らせた。


「フィァァー!?」

「よし! ラフィオ突進! プリンに乗りながら!」

「はいはい。後でベタベタになるから嫌なんだけど」

「後で一緒にお風呂入ろうね!」

「嫌なんだけどなあ」


 文句を言いながら、ラフィオ床にダイブした。プリンまみれの床を滑ってフィアイーターの足元に激突。これがとどめになって、巨大なプリンカップは床に倒れた。


「うわー! 待って待って! ひえー!」


 その下敷きになりかけたライナーが、床に手をついたままジタバタ動いてなんとか退避した。


「おら! 死ね! コアはどこだ!?」


 フィアイーターの上にアユムが飛び乗る。手には巨大なパンの模型。どこかの店の装飾品だろうな。勝手に持っていくのはやめなさい。


 それを容赦なくプラスチックカップにぶつけると、巨大パンが粉々に砕ける代わりにカップにもヒビが入った。そこに指を突っ込み、強引に広げる。バキバキと音が響き渡る。

 フィアイーターが抵抗している。俺は奴の腕にしがみついて動かないようにして、バーサーカーを助ける。ハンターがその腕の関節部を射抜いていって動けなくしていった。


 バーサーカーはといえば、両手をプリンまみれにしながら、フィアイーターの胴に開いた穴から中身を書き出していた。周りにプリンが飛び散る。


「見つけた! 喰らえ!」


 プリンの中に埋まっていたコアを見つけたのか、それに向って拳を突き出す。

 俺が抑えていた腕を始めとして、巨体から黒い粒子が発散されて、フィアイーターは小さなプリンへと戻っていく。

 床のプリンはそのままだった。


「ああ! ベトベトだ! 魔法少女たちは変身を解いたら元に戻るけど、僕はそうはいかないんだからな!」

「わ! ラフィオ待って!」


 小さい妖精姿になったラフィオがどこかに駆け出していく。プリンまみれの床を腹這いで滑ってたからな。水場を探してるのだろう。ハンターが慌てて追いかけている。

 俺も自分の服を見た。魔法少女たちほどじゃないけど、ズボンの膝のところがプリンで汚れている。制服なんだけどな、これ。クリーニング出さなきゃ。


 まあ、バーサーカーは両腕がプリンまみれだし、セイバーもプリンに足を取られて転んでるし、プリンまみれの床で転げまわったライナーに関してはコメントするのが不憫なほど汚れていた。


「うへー! わたし、良いところ全然なかったじゃん!」


 ライナーはまだ床に横たわりながら不満そうな声をあげる。元気そうだから、怪我したとかではないらしい。


「そう言うな。ライナーだって黒タイツ何体か倒してるし、役に立ってる」

「でも! 悠馬にみっともないところ見せちゃった。こんな派手に転ぶなんて」

「ほら、とりあえず起き上がれ」

「うん」


 手を差し伸べて助け起こす。プリンの匂いがした。

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