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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-10.ナンパ男に絡まれるイベント

 爆速で食べる愛奈は店の回転率をほんの少しだけ上げたらしい。俺たちは周りの客に比べれば、短い時間で会計までたどり着いた。


 愛奈曰く高めの値段設定だけど、会計時にそれを口にするような真似はしなかった。店の雰囲気に合わない早歩きで退店しただけだ。


「次はなにしようかしら。カラオケ。そうだカラオケ行きましょう」

「いいぞ」

「わたし、最近の曲とか知らないけど」

「テレビはいつも見てるだろ。そこでかかる曲は歌えるだろ」

「全部は歌えません! テレビで流れてる所だけです!」

「よくそれでカラオケ行く気になれるな」

「制服デートっぽいことをしたくて!」


 まあ、愛奈のやりたいようにはさせるけど。


 俺たちは以前、布栄で戦ったことがある。カラオケ店に出たマイクのフィアイーターを相手に、アユムが初めて変身することになった戦いだ。

 そのカラオケ店がどうなったか気になって行ってみた。ちゃんと健在なようでなにより。壁をぶち抜く激しい戦闘だったけど、ちゃんと元通りになって営業再開していた。


 この街の人間は強いな。タフだ。


「へー。この時間からお酒飲み放題やってるんだー」

「だから」


 酒を見ると興味を持ってしまうのはやめろ。


 普通に高校生カップルらしく、ドリンク飲み放題のプランを選択して部屋に入る。


「食べ物とか頼んでいいわよー。お姉ちゃんが全部出してあげる」

「社会人の財布ってありがたいよな。格好は変だけど」

「そして悠馬から歌って」

「ここは年上を立てたい。姉ちゃんから」

「えー。でも知ってる曲なんて本当にないから……。あ、これなら歌えるかも」


 リモコンを操作して選曲したのは。


『ミラクルハッピービスーストバイト!』

「ミラクルフォースの曲!?」

「つむぎちゃんたち毎週見てるから、なんか覚えちゃって! いっくよー! ラッキーゴー! ミラクルファイト! ビーストー!」


 歌ってる。歌が上手いか下手かは、ここでは言及しないでおこう。


 同じ変身ヒロイン同士で思うことがあるのか、愛奈は全力でそして楽しそうにマイクを握っている。

 一曲歌えばギアが入ったのか、愛奈は割と楽しそうに歌い出す。最近の曲は知らなくても、本当の高校時代とか大学の時に流行ってた曲はわかるらしい。


 ちょっと懐かしいアイドルソングを、振り付け込みで歌っていた。すごい。年甲斐が無いとかは言わない。


 もちろん、そんなことするものだから。


「つ、疲れた……ちょっと休憩。悠馬、飲み物持ってきて。ウーロン茶」

「はいはい」


 椅子に座り込んで少し咳き込んでいる愛奈に呆れつつ、言うとおりにコップを持ってドリンクバーへ向かう。

 ウーロン茶だな。今から酒と言わないだけ立派だ。


 そして部屋に戻ると、違和感に気づいた。扉が開いてる。俺が出た時には閉めたはずだ。


 さらに、中から会話が聞こえてきた。


「ねー。いいじゃん。ヒトカラとかつまんないでしょ? 俺らと遊ぼうよ」

「てかめっちゃかわいくね?」

「いいでしょ? 一緒に楽しもうぜ?」


 男三人組が愛奈を取り囲んでいた。後ろ姿から察するに、大学生くらいかな。社会人ではないだろう。


 当然愛奈よりも体格が良くて、三人で迫れば威圧感がすごそうだ。


 そして高校生姿の愛奈はといえば。


「えー。そんなにわたしかわいいですかー? JKだったら誰にでも言ってるだけじゃないですかー?」


 なんで嬉しそうなんだよ。


「いやいや。違うって。君ほんとかわいいから」

「てか名前は? 学校どこ? 連絡先教えて」

「んー。どうしよっかなー。かわいいって言われるのは嬉しいけど、わたし彼氏とデート中だから」

「おい」


 ドスの利いた声が出てしまった。今のは、弟を平然と彼氏だと言い張った愛奈に対しての「おい」だ。

 けど男たちにとっては、彼氏が不埒な男を咎めている声に聞こえただろう。


 三人、揃って振り返った。


「あー? 君が彼氏?」

「悪いけど、彼女ちゃんは俺らと行くことになったから」

「ほら。邪魔者は帰った帰った」


 好き勝手言いやがって。俺は愛奈の方を見た。

 ニコニコした顔で頷いてきた。いやどういう意味だ。男らしいところ見せろとか言いたいのか?


 まったく。


「おい、お前ら。天井のあそこを見てみろ。監視カメラがあるだろ? 何かトラブルがあればすぐに店員が来るし、暴力行為があれば警察に話が行く。まあ俺は、警察に知り合いがいるし捕まることはないけどな」


 言いながら、手をわざとらしく震わせて床にウーロン茶をこぼす。男たちはニヤニヤしてこっちを見ていた。


 高校生のガキが強がってデタラメ言って、けど内心はビビってるのが手の震えに出てるとか思ってるのだろう。俺がそう思わせてるのだけど。


「だからさ、クソ男ども。俺は暴力無しでこの場を切り抜けたいんだ」


 言いながら男のひとりの目の前に立ち、奴の体でカメラが死角になる位置を計算しつつ、コップの中のウーロン茶を全部床にぶちまけながら、そいつの腹をぶん殴った。

 まさかビビり倒して暴力無しで済ませたいと言った奴が直後に暴力を振るうとは思ってなかったらしく、男はそれをまともに食らった。


 俺はさらに数歩後ずさりながら、そいつの服を引っ張り床に引き倒す。ウーロン茶が広がる床に顔面から激突することになった。歯か鼻が折れてたら嬉しいけど。


「あー。もう。ドジだな。床に溢れたウーロン茶で転ぶなんて! おい! 誰か来てくれ! 怪我人がいる! 俺の姉ちゃんをナンパしようとした男が転んだ!」


 床が濡れて滑りやすくなっているから、俺は転んだ男の体を容易く引きずって部屋の外に出す。大声を出したのはわざとだ。

 絡んでくる面倒な相手を追い払うにはどうすればいいか。揉め事を外に喧伝して第三者を連れてくるに限る。こっちにやましい事が無いときは有効な手段だ。

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悠馬、相変わらず無茶苦茶するな……将来が心配だ……
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