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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-3.バレンタインデーの予定

 さすがに娘たちに渡すチョコレートは、なんかこの時期デパートとかで売ってそうなオシャレなやつだと思う。けど父親に渡すのは、なんかでかいのだろうな。オシャレなの少しとは別に、なんか大容量のやつ。

 愛なんだろうな。


「アユムちゃんの田舎にも、バレンタインデーってあったの?」

「あったよ。さすがにそれくらいは知ってるよ。テレビとかでやってるし」

「そっかそっか。チョコレート贈るんだよね?」

「おう。チョコレート買う場所が限られてるから、店で売ってるやつ買って渡したら周りと被ること多いんだよな。だからみんな手作りしてた」


 田舎町の小さな商店か、バスで行くショッピングモールだけだもんな。商店の方で、そんなものは大して扱ってないだろうし、あのショッピングモールも大した規模じゃない。

 中高生に手が出せる物となれば、選択肢はさらに狭まるだろうし。


「え。もしかしてアユムちゃんも手作りで」

「してねえよ。渡す相手がいなかったから。周りが騒いでただけだ。……オレは他に好きな男がいたからな」


 ちらりとこちらを見た。おいやめろ。ついてきている遥の母親は、俺と遥が付き合ってると思ってるんだ。余計なことをするな。


「それにオレは、お菓子作りなんてできないからな。なんかこう、無理だった」

「料理も苦手だったしねー」

「そうだなー。母さんに、女なんだから早めに出来るようにならないと将来苦労するって言われてたけど、キッチンには意地でも立たなかった」

「考え方は人それぞれだけど、そんなこと言われたら嫌だよねー」

「遥に教えてもらって料理するのは楽しいぜ」

「それは良かった。わたしも嬉しい」


 アユムが車椅子を押している都合上、ふたりの距離が近くて会話も弾む。


「なあ。遥はチョコレート作るのか?」

「うん! 作るよ! 彼氏がいるんだもん。渡さないわけにはいかないでしょ」

「そうか。なあ、チョコ作りオレにも教えてくれないか? 世話になってる人に渡したい。悠馬だけじゃないぞ。遥お前にもだ」

「えー。嬉しい。けどそういうの、渡す相手にはサプライズで隠しておかなきゃいけないんじゃないの?」

「あの家のキッチンを使う限り、遥に隠すのは無理だろ」

「それもそっかー。というわけで悠馬、バレンタインデーの前日はキッチンに入るの禁止だから!」

「なんでだよ」

「悠馬にはサプライズで渡したいの!」

「渡すって言ってしまってる」


 意味はわかるけど。何渡すのかは内緒にしたいんだろう。


 この時期だ。俺だって貰えるかもと期待する気持ちはある。向こうもそれは折り込み済ってことだ。


「それはいいし、当日までにアユムと練習するのもいいけど、あんまり専有するなよ。夕飯もラフィオが作らないといけないんだから」

「あー。それはもう、この期間中はわたしが全部やります。というか、アユムちゃんにも本格的に料理を教えながらチョコ作りも教えるよー。というわけで、しばらくは男子禁制です」

「朝は?」

「せっかくだから朝もわたしたちでやろっかー」

「お、おう? わかった……なんか思ったより大変そうだぞ」


 あっさりとラフィオがキッチン出禁になってしまって、さらにアユムはお菓子作りの他にも労働が追加されてしまった。予想外の展開に戸惑いながらも、アユムの横顔はちょっと嬉しそうで。


「なあ遥。料理教えてくれるなら俺も習いたいんだけど」

「駄目。バレンタインデー終わってからね」


 なんで家主である俺が除け者なんだよ。


「いいじゃん。悠馬は彼氏なんだから。わたしの、彼氏、なんだから。これからもいつでも教えられるよ」


 妙に彼氏を強調する遥は、振り返るように俺を見ながら、横目ではアユムに睨みをきかせてるようで。


 仲良く料理とお菓子作りを教えるみたいな雰囲気だけど、バチバチに睨み合ってるようにも見えて。

 面倒だなあ。


「ふふっ。青春ね。わたしも若い頃、お父さんにどんなチョコを渡せばいいか悩んだものよ。結局、自分が渡して幸せなものが一番ってことに気づいたの」


 俺たちの様子を見て、母親が昔を懐かしむような顔をする。

 その理屈はわからないけど、あの夫婦独特の感性みたいなのはあるのだと思う。


 たぶんそれは、誰にでもあるもの。けど俺の場合は。


「悠馬はさ、バレンタインデーに思い出とかある? 誰からチョコ貰ったりとか」


 振り返ったままの遥が、なんの気無しって感じで尋ねた。

 そうだな。


「何もない」


 ちょっと思い返してみたけど、本当に何もなかった。


「え? そうなの? ……あー」


 母親から貰うってイベントは、俺にはないからな。それを察した遥が気まずそうな声を上げた。

 学校で女友達から貰うことも、今までなかったはずだ。


「そうだ。愛奈さんからは? あの人がチョコレート作りとかは絶対にないでしょうけど、でも買ったやつ渡すとかは」

「なかった。一度も」

「あー。まあそうだよねー。愛奈さんそういうの興味なさそう」

「バレンタインデー自体は知ってるんだけどな。基本会社が男だらけだから、なんとなく同僚からチョコもらえないかの期待が集まってきて、ウザかったって言ってた。姉ちゃん顔だけは美人だから」

「へー」


 まあそれも入社して一年目のこと。それ以降は、愛奈がどんな人間か会社の人たちも把握してきたから、期待の目はなくなったようだ。


「こいつ、姉のこと普通に美人って言ったぞ」

「うん。全然恥ずかしそうじゃなかったよね」

「本気で美人って思ってないと言えないよな」


 このふたりは何を話してるんだ。

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