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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第14章 好きの行方

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14-2.チョコツクレル氏

 ロベルト氏はたくさんのカメラに囲まれた状況でも落ち着いていて、まるで最初からこうなることはわかっていたかのようにインタビューに応じた。


『日本の文化は興味深く、いつかこの目で見てインスピレーションを得ようと思ったんだ。バレンタインデーというイベントで、自分の力を試してみたいとも思っていたんだよ』


 流暢な日本語で受け答えしていた。

 なんというか、日本人受けするために頑張って習得したって感じがするな。


 日本のメディア関係者のひとりが、なぜ日本の中で模布市を選んだのかを尋ねると。


『この街の人間は実にエネルギッシュで、タフだ。怪物が暴れまわっている街から、逃げ出すことなく住み続けている。自分たちを襲う悪意に負けないという強い意思が、この街の人間にはあるんだ。その姿を直接見たい。そうしなければ出来ない表現があるんだ』


 外国人ってなんで、喋るときに表情の変化を強調させるんだろう。わざとらしく目を見開いてみたり。


 別にこの男が胡散臭いわけではないけど。ロベルト氏はさらに続けて。


『それに魔法少女だ。彼女たちは美しい。容姿だけではない。人々のために戦っている高潔な精神が僕を魅了させる。是非とも、一度会ってみたいね』

「澁谷さん、パティシエさんはいい人だと思いますけど、魔法少女に会わせるみたいな企画は遠慮したいです、っと」


 つむきがまたスマホを操作している。片手でラフィオとモフ鳥さんを離そうとはしないのがさすがだ。


 そしてこのパティシエと、そんなに関わりたくないって気持ちがあるのはラフィオと意見が一致しているらしい。

 まあ、面倒なのは間違いないよね。魔法少女が出るということはフィアイーターが暴れているわけで。そんな最中にパティシエの相手なんかしたくない。


 平時に変身はできるけど、お菓子作りの参考にと言われても困るよなあ。


 たぶん、澁谷はそれをわかってると思う。ロベルト氏とこちらを引き合わせようとは思わないはず。けどテレビ局の上層部がどう動くか、わからないんだよな。

 有名なパティシエが、日本で腕をふるって経済を回してくれるのはいいんだけど。それで終わりにしてほしい。


「なんかこのパティシエさん、日本のチョコは低レベルデースって言ってそうで嫌だねー」

「さすがにそれは偏見がすぎる」


 アメリカ人への偏見だ。この人はちゃんと日本語を習得して、真剣にお菓子作りに向き合ってると思うから。

 まあ、同じアメリカ人で日本語を話していても、とんでもない奴がいたっていうのはラフィオも覚えてるけど。さすがにクローヴスとこいつを同一視はしないぞ。


「わたしはラフィオへのチョコ、ちゃんと手作りするから安心してね! この人からは買わないから!」

「そうか。嬉しいよ」

「溶かして固め直すだけだから簡単だよね!」

「そんなに単純でもないと思うけどね。でも頑張ってね」


 いつの間にか中継も終って、テレビは別のコーナーに移っていた。


 悠馬たちもそろそろ帰る頃かな。



――――



 アユムは俺に意味深な態度で囁いた後、すぐにいつもの調子に戻った。少なくとも俺にはそう見えた。ニコニコしながら遥の方を向いて、頑張れと声をかける。


 義足の訓練にはまだまだ時間がかかるそう。先生の見てない所で義足で歩こうとして転ぶと危ないから、まだこれを日常でつけることは許可されない。義足は先生に預けて帰る。

 この調子なら、新年度を迎えるくらいにはゆっくりだけど歩けるようになるとのことだ。膝が残ってない欠損は、義足にしても歩けるようになるには時間がかかる。だから遥ちゃんは頑張ってるし偉い。


 先生が何度か言ってたことをまた繰り返して励まして、遥はそれを聞いて頷く。


「本当は走れるようになりたいんだけどねー。まずは歩きを完璧にすることからだって。走る用の義足作るのは、まだまだだねー」


 車椅子を自力で動かして近づいてくる遥が楽観的なのは、ちゃんと前進しているから。あと先生に、競技用の義足も欲しいとちゃんとお願いしているから。

 未来は開けていると確信している故の楽観だ。


「悠馬、車椅子押してー」

「あ、オレがやるよ」

「お?」


 俺よりも先にアユムが動いて、車椅子のハンドルを握る。


 誰が押してもいいのだから、別に気にすることでもないけどな。実際、遥もちょっと首を傾げながらも、何も言わなかった。

 先生と遥の母親がお金の話をしているのが終わるのを待ってから、俺たちは一緒に病院を出る。


「バレンタインデーだねー」


 病院の最寄り駅の前にはちょっとした商店街があり、バレンタイン商戦に向けて小さな小売業もしのぎを削っていた。

 金儲けの欲望を甘いチョコとハートで隠して、街を華やかな景色にする。そういうのは嫌いではない。


 そして遥はそういうのに目ざとく反応する。


「お母さん、今年もチョコレートくれるの?」

「ええ。買ったものだけどね」

「結局それが一番美味しいんだよねー。お母さんの手作りチョコも美味しいと思うけど」

「量を作るの大変だから。お菓子作りって体力使うのよ」


 量なのか。やっぱりあの家は量重視なのか。

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