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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-44.豆まき

「あー! ラフィオずるい!」

「悠馬置いてかないで!」

「お前らが変な言い争いするからだぞ!」

「バーサーカーだって同じレベルの争いしてたじゃん!」

「オレたちが同レベルだって!?」

「それは違うけど! 悠馬ラブ度ではわたしが一番だけど!」

「なんなのよそれは。馬鹿な指数は」


 三人も慌てて追いかけてきた。醜い言い争いをしている間も、俺のことは油断なく見ていたのか。器用なのか不器用なのか。


 豚座家は俺の家とも近い場所にある。帰宅に時間はかからなかった。愛奈も退勤済で、そのまま帰宅という流れ。麻美に、特に何事もなく終わったと電話していた。近くまで来てたのか。

 俺もようやく、足に装備していた無駄なものを外すことができた。本当に、終わってみればなんの意味もなかったな。ただ俺が死にかけただけだった。




「鬼は外ー!」


 つむぎとラフィオは、夕飯を食べる前にベランダに出て、以前から買っていた炒り豆を外に投げていた。

 ラフィオは早く夕飯を作りたそうだったけど、無理やり付き合わされてる形だ。それでも楽しそうではあった。


 近所迷惑にならないように、少量だ。道に落ちたそれはハトの餌になるのだろう。


「モフは内ー」


 それから室内にも、豆を数個床にコロコロと転がした。


 食べ物を粗末にしないし、散らかすこともない。時勢に即した豆まきだ。うん、モフなんだな。福じゃなくて。


「楽しそうねー。炒り豆で飲む酒って言うのも悪くないわね。高くないし、量があるし」


 駄目な酒飲みが、未成年者はあまり興味を示さない炒り豆を摘んでいる。俺たちのおやつにするには渋すぎるけど、酒の肴にはいいのかも。


「悠馬ー。ビールのおかわり持ってきて!」

「自分でしろ」


 リビングから声をかける愛奈。けど俺は忙しいんだ。


 ラフィオがベランダにいるから、遥が夕飯作りに勤しんでいる。

 買ってきた材料から、献立がハンバーグと太巻きだと悟った遥が、俺とアユムを伴ってキッチンに立っているというわけだ。


「合うのか? ハンバーグと巻き寿司って」

「わからないけど。ちょうど節分だし太巻きは食べたいな」

「だなー」


 太巻きと言っても、海鮮はほとんどない。ネギトロのパックが買われてるくらいだ。あとはカンピョウとキュウリと桜でんぶ。それに卵焼き。


「アユムちゃんはハンバーグの空気抜いてね。悠馬はキュウリ切っておいて。ゆっくりでいいからねー」

「おう! 任せろ! うおおおおおおおお!」


 猛烈な勢いでハンバーグをぺしぺしと手の上で動かすアユム。頑張ってる姿が、なんかいいな。


 俺もキュウリを細長く切る作業に集中しないと。輪切りにするよりずっと難しい。ちゃんと抑えてないと転がるし、間違って手を切りそうだ。

 だから、酔っ払いの相手をしている暇はないんだ。


 ちらりと横を見れば、遥は片足でなんでもないように卵焼きを作っている。


「器用だよなあ」

「えへへー。そう? いいお嫁さんになれるよね?」

「なれると思う」

「悠馬のお嫁さんには?」

「どうかな……」

「おい! そこまでだ! オレの隣でそういう話をするな。てか腕が疲れてきた!」

「最初から全力出すから。そんな頑張らなくてもいいのに」

「料理は手を抜くのが正義だからな」

「そうだね。どこを抜けばいい感じに楽に美味しくできるかを見極められるようになれば、料理が上達と言えるかなー」

「わ、わかった。とりあえず空気抜くのに全力出さないことから覚える……」

「悠馬ー。お酒ー」


 愛奈は黙ってろ。


 ところが。


「あ。樋口さん今日も来るって」

「ほんとだ! おーい、樋口さんいらっしゃい!」


 豆まきは終わったけど、道路に落ちた豆をモフモフの鳩が食べに来ないか期待しているのか、つむぎはまだベランダにいた。


 本当に鳩が来た場合、ベランダから飛び出してモフりに行きかねない。それを阻止するために、結局ラフィオはキッチンには行けなかった。

 そして今日も樋口は来ていて、来るって連絡をマンションの前でやっていたらしい。訪問を拒否されることは一切考えてない、素晴らしい態度だ。


「今日はご苦労さま。はい、ビール買ってきたわよ。あと太巻きを人数分買う予算はなかったけど、細巻き買ったから良かったら食べて」

「太巻き、今作ってるんだけど」

「じゃあ、愛奈の肴にしなさい」

「やったー。わたしネギトロの細巻き大好き」


 ネギトロが被ってしまった。安いもんな。


 ややあってハンバーグも焼けて太巻きもできて、つむぎも街頭に照らされた道路に鳩がいるのをベランダから眺めて満足したらしい。ラフィオに連れられて室内に戻ってきた。

 愛奈と樋口が乾杯して、みんなで夕飯を食べる。


「豚座の件は解決したと見ていいわ」


 一番知りたい情報を樋口が教えてくれた。


「あなたたちが去った後、公安で一家を保護した。あの男も含めてね。彼は茫然自失って感じだったわ」

「それは、俺に殴られて脅されたからか? それとも家に怪物が出て怖かったから? ……オタクグッズが破壊されたからか?」

「全部よ。色々重なって、精神が限界を迎えたの。あと、親から怒られるっていうのも追加ね」

「怒られ……」

「現場で保護する際に、警官が豚座に尋ねたのよ。怪物を作る者と話したかって。なぜここに怪物が出たのか原因はわかるかって。豚座は答えなかったわ。けど知ってるはず。ネットの書き込みが原因だとね」


 キエラたちは豚座の書き込みを見たのだろうな。そして、人間がやるよりもずっと簡単に書き込み主の所在を突き止めることが出来そうだ。魔法というやつでな。


 そして接触した。仲間に引き入れたいとか、魔法少女のことを詳しく知りたいとかの目的で。

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