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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-33.なんとかしよう

 成人女性ふたりが、こっちに温かい目を向けていた。やめろ。こっちを見るな。話すべきことがあるだろ。


「樋口。この男をどうにかできないのかい? ネットで騒いでるだけとはいえ、聞いた様子じゃいつ行動を起こすかわからないのだろう?」

「ええ。それはそう。けど、行動って何するのかしら」

「前と同じように、僕たちの戦いに突っ込んでいくとか」

「ありそうね。それで邪魔されて、なにか支障はある?」

「正直言うと、ない」


 あの男は弱すぎる。黒タイツにも勝てない。


 アカウントの書き込みを見ると、自分は覆面男よりも強いとか、いつかあいつを倒して自分が仲間に成り代わりたいとかの、ありえない妄言が綴られていた。


「無理だろ。悠馬があいつに負けるわけがない」

「そう。だから心配しないでいいんじゃない?」

「そうはいかない」


 樋口も良くわかってるだろうに。


 真正面からぶつかっても悠馬は負けない。けど、そんな状況ばかりとは限らない。


 覆面男が現れるということは敵と戦っているわけで。強敵と戦って疲労困憊している状態の悠馬に襲いかかるとか。一瞬も油断のならない相手と睨みあって隙を見つけようとしているところを襲ってくるとか。そんな状況から危険になりかねない。

 そうじゃなくても部外者が乱入してきたら、即刻排除しなきゃいけない。じゃないとその男は死ぬから。


 死んでも同情したい相手ではないけど、死んでほしいとは思わない。死者が出れば市民に恐怖が蔓延する要因にもなる。


 そして、救出という名の排除に人手を割かれて戦況が不利になるのも御免だ。


「なんとかできないかい? 逮捕するとか」

「逮捕は難しい。罪を犯したわけじゃないから。警察が再度の厳重注意をするのも、根拠がないから無理ね。ネットで大口叩いてるだけの人間に構うほど、警察も暇じゃない。世間的にはそうなの」

「じゃあ、どうすればいい?」

「奴の見張りは継続するわ。そして不用意に魔法少女に近づこうとしたら、制服警官に注意させる。これであなたたちの邪魔になることはないでしょう」

「それはそうだけど……」


 ラフィオとしては、そんな危険人物はとっとといなくなってほしかった。


 奴の執着が、セイバーや悠馬に向いてるだけで終わるとは思わない。あいつの欲望はもっと欲深い。


 ラフィオも、例の男の姿を見ていた。あいつは女ならなんだって好きだ。小さい女の子であっても欲望の対象にしてしまう種類の人間だ。


 ちらりと隣を見た。大人たちの話にあまり興味がない様子のつむぎは、ぬいぐるみを抱きながらつけっぱなしのテレビの方に向いている。

 あの男の興味がこっちに移るのは嫌だ。それを許すつもりはなかった。


「なんとかしたい」

「そう。確かに、あんな小物をずっと気に留めておくのも嫌よね。どうにかしましょう」

「ただいまー」


「……ちょうど、悠馬たちも帰ってきたみたいだしね」



――――



 これ以上は食えないってくらいの夕飯をしっかり頂いてから、俺たちは神箸邸を辞した。遥ももちろん連れてだ。


「なんというか、もう唐揚げはいいってくらい食べた。しばらくは見たくない……」


 アユムも苦しそうだ。


「ふたりともごめんねー。お母さんほんと張り切っちゃって。お客さんが来るとこういうこと多いんだよ。お父さんの会社の後輩とか来たら、もうすごいよ」


 本当にすごいんだろうな。先輩の手前、勧めてくるものを断るわけにもいかずに、頑張って食べる。顔も名前も知らない会社の後輩とやらに同情した。

 少し苦しそうな俺たちの手を借りるわけにはいかないと、遥は自分で車椅子を動かしている。少し急なスロープとかになれば押してやらなきゃいけないけれど、普通の道なら問題ない。


 義足で歩けるようになるには、まだまだ時間がかかるらしい。膝が残ってない欠損の場合は、特に。


「それが普通らしいよー。義足にしてもすぐ歩けるわけじゃない。車椅子と併用して使っていくものなんだよ。世の中の義足の人も、そういう人も多い。やりやすい感じでやればいいんだよー」


 それは前に聞いたことがある。

 遥の足だ。遥の好きにさせてやるのが一番だな。


 マンションエレベーターに三人で乗って、アパートの扉を開ける。


 樋口の靴が玄関にあった。来てるのか。報告することがあるとかで。何の話なのかは想像がついた。


「おかえり。あのストーカー男、あなたの姉に今もご執心よ。それからあなたのことも嫌ってるらしいわ」


 樋口がヒラヒラと手を振りながら伝えた。


 席についた俺たちに、樋口はさっき愛奈たちに伝えたらしい話を繰り返した。

 愚かな男の身勝手な言動だ。


「なんでそんなに執着するんだろう。しかも俺に憎しみを向けるなんて」

「あなたのセイバーの仲の良さに嫉妬してるのよ」

「熱愛発覚のせいでねー」


 既に酔ってる愛奈がふわふわした口調で言う。けれど本人なりに真剣なんだろう。


 そして樋口も同じく真剣らしくて。俺を真っ直ぐ見ながら話した。


「あなたに勝てるって言ってるそうじゃない。どうする?」

「どうするって……」

「お灸をすえようとは思わない?」

「思う」


 あの男をずっと気にして生活するのは、俺としてもうんざりだ。

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