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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-28.避難途中に

「ただいまー。せっかく早めに帰れたと思ったら悠馬がいないっていうの、なんか嫌ねー」


 ラフィオが三人分の夕飯の支度をしていると愛奈が帰宅した。定時ちょうどに帰れたんだな。普段は外回りの時間が長引くとかがあり、なかなか帰れない日が多い。


 営業の特権として外回り中にサボってる時間が多いのが、帰宅時間に影響しているのではとも思うのだけど。


 とにかく愛奈はスーツ姿のまま、とりあえず仕事終わりの一杯を飲むべく冷蔵庫に向かってきて。

 そのタイミングで警報が鳴った。


「ちょっと! なんでよ!?」

「なんでだろうね」

「フィアイーター、病院の方で出たらしいよ。これ、悠馬さんたちがいるところだねー」


 冷静にテレビをつけて情報を集めているつむぎは、出てきた病院の名前に見覚えがあるらしい。


「そうか。じゃあ早く合流してあげないとな。ほら愛奈行くぞ」

「えー! やだ! 悠馬たちが倒してくれるから、わたしはいいじゃない!」

「良くない。遥の家族も一緒なんだぞ。変身できない状態になっているかもしれない」

「そんなこと言われても! わたし疲れてるの! お願い! ビール一杯だけ飲ませて!」

「後でな」

「やだー! わたし帰ってからの一杯のために頑張ってきたんだもん! 家の鍵開けた時点でもうビールのことしか考えられなかったし! だからお願い!」

「行くぞ」

「いーやー! まって! ジャケット引張らないで! わかった! わかったから! 行くから! 行きたくないけど!」


 どこまでもわがままな愛奈がセイバーへと変身。既に変身していたハンターと一緒にラフィオの背中に乗って現場へと向かう。


 病院の前には既に、避難してきた患者や医師たちの姿があった。

 その前に降り立って、人々の喜び混じりのどよめきを受けてから、改めて病院に入る。


 さっさと開いた窓から入るべきだって? 一度人の前に姿を表すことで、助かったと思わせて恐怖を和らげる効果があるんだよ。


 病院内のあちこちに黒タイツが展開しているらしい。

 こういう時はライナーが病院中を駆け回って退治してくれるのだけど、今は連絡が取れない。そして両親が一緒にいるライナーは、最も変身できない状態にあると思われるから。


「僕が代わりをするしかないな。ハンター、僕と一緒に病院の中を回って散らばった黒タイツを倒すぞ。セイバーは本体のフィアイーターを探してくれ」

「うー。仕方ない。さっさと終わらせてビール飲むわよ!」


 本当に酒への執着が強いなあ。戦ってくれるからいいのだけど。



 セイバーが、たぶん上にいそうだと言い残して階段を駆け上がるのを見てから、ラフィオはとりあえず一階部分を走り回った。一階の敵を掃討すれば、とりあえず黒タイツが外に出ることはないし、外に避難した人々に襲いかかることもない。


「フィー!」

「来たな。ハンター」

「うん!」


 ラフィオがなにか言う前に、ハンターは既に弓を構えていた。

 一体だけうろついていた黒タイツの首を矢が貫く。


 この調子でいこう。一階を見回ったら、階段を上がっていって上まで順次行く方針がいいな。



――――



 変身したい気持ちはあるし、黒タイツやフィアイーターがいつ襲ってくるかわからない状態は怖いけど、遥はそれに耐えながら車椅子に座っていた。


 多くの避難者は階段で下に降りているけど、もちろん車椅子ではそれは無理。というわけで階段横で立ち上がって、父親に肩を借りながらゆっくりと降りていく。車椅子はその場に放置。

 こういう時にエレベーターが使えればいいのだけど、そこは地震が起こった時と対応は同じらしい。


 エレベーターに人が殺到すればそれだけで二次被害が出かねないし、敵が電源を落とすような攻撃をすればおしまい。エレベーターを出たところに敵が待ち構えていたら、やっぱり危険。

 病院なんだから車椅子の人のためのマニュアルをもう少し練ってもいいと思うけど、そういうのは今後改善されるのを期待するしかないかな。


 とにかく遥は、父と一緒にゆっくりと階段を降りる。彼方とお母さんは先に行けばいいのに、家族を置いていこうとしなかった。


「あっ」


 義足をつけたままでの歩行に慣れていない状態で階段を降りるのは困難。自分の自由に動かない足があるという感覚だけでも違和感があり、義足のつま先が階段の滑り止めに引っかかってしまった。


 バランスを崩してしまった遥を、咄嗟に父が支えてくれて助かった。


「ごめんなさい。うまく動けなくて」

「気にしないでいい。最初は動けないものだ。君は初めてにしては、まだ踏み出すことに躊躇いがないから立派だ」

「それは……松葉杖で歩くのに慣れているので」


 宮崎さんが気遣ってくれる。魔法少女として走っているのに慣れているからとは言えない。


「義足が邪魔なら外そう。失礼します」


 彼が慣れた手付きで義足を足から取り外す。こっちの感覚の方が、まだ普段の感覚で動ける。


「遥。お父さんがおんぶしてあげるから、掴まってくれ」

「う、うん」


 腰を下ろした父親の背中に身を預ける。


 みんなに頼ってばかりだな。こんな時なのに。わたしが変身できるって言ったら全部解決するのに。


「フィー!」

「!?」


 階段をまだ抜けれてないのに、聞きたくない声が聞こえてみんな身をこわばらせた。

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