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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-27.うまく離れる

 マジか。こんな時に。


「おい悠馬。近いぞ。てかこの病院らしい」


 いち早くスマホを確認したアユムが駆け寄りながら伝えた。それと同時に、館内放送が響き渡る。この病院内に怪物が現れたから、来院者は速やかに職員の指示に従って避難するようにと。

 ふとフィアイーターの咆哮が聞こえた。距離があるように遠くからだ。けど、だんだんこちらに近づいているように思える。


 事実、怪物から逃げるように患者や見舞い客らしき人が何人かこっちに向かって走ってきた。


「宮崎さん。遥ちゃんたちをよろしくお願いします。わたしは他の患者さんの避難を誘導します」


 そう言って、女医は周りにいる他の人たちに声をかけて、落ち着くようになだめながら避難を促していた。


「遥。とりあえず車椅子に座らせるぞ」

「うん。どうしよう。お母さんたちからどうにかして離れて変身しないと」

「そうだな。けどそれを考えるのは後だ」


 少なくとも遥の両親は、この状態で娘から目を離すような人ではない。この前もそうだった。

 だから今回も、他の魔法少女に対処をお願いした方が良さそうだ。


「お姉ちゃん、わたしが押すね」


 車椅子に座った遥に、彼方が声をかける。きっぱりと、有無を言わさぬ口調だった。遥にも、俺にも言っているように。そして返事を待たずに車椅子を動かす。


「行こう。こっちです」


 宮崎はこの病院に何度も来ていて詳しいらしい。避難経路を迷わず歩いていく。


 神箸家がそれに続き、俺とアユムはなんとかして離れられないかタイミングを伺いながらついていった。

 怪物はまだここには来ていない。避難民たちは落ち着いて、駆け出すことなく廊下を歩いている。


 冷静なのはいいけれど、それがあっさり崩れてしまうものなのも事実であり。


 また怪物の咆哮が聞こえた。しかも今度はより近く。


 俺たちは落ち着いていた。周囲の避難民の大半もそう。けど全員じゃなかった。

 誰かが慌てたような悲鳴をあげて駆け出し、周囲の人をかき分けて前に出た。


「うおっ!?」


 そいつにアユムの肩が当たる。逃げた奴は制服姿の女子高生にぶつかったことを謝りもせずに行ってしまった。そしてアユムはといえば、ぶつかった衝撃は大したことなかっただろうに。


「うわー!」


 なんか大げさによろめいて倒れた。


「ゆ、悠馬! 足をくじいた! 助けてくれ!」


 ちょっと棒読み気味に俺に助けを求めた。ああ。意図はわかるとも。


「皆さん、先に行ってください。俺はアユムを助けます」

「待て。俺が手を貸そう」

「ううんお父さんはそばにいて!」


 正義感の強い遥の父が駆け寄ろうとしたところ、制止したのはなぜか彼方で。


「悠馬さんすごいから。わたしもこの前公園で助けてもらったし! だから大丈夫だよ! わたしたちから先に逃げよ!」


 なんかすごい信頼されてるなあ。嬉しいけど。


「……わかった。悠馬くん! 絶対に避難するんだぞ!」


 彼も自分の家族を守ることを優先した。立派な父親だよ。本当に。


「わかりました! すぐに追いかけます! アユム、立てるよな?」

「立てるけど、遥たちが見えなくなるまでは立てないフリしなきゃだな」


 足をくじいたっていうのは嘘だからな。俺たちだけでも部外者から離れて戦闘に入れるようにするための。


「なあ悠馬。お姫様抱っこしてくれ」

「なんでだ」

「聞いたぜ。前に彼方を助けた時は、お姫様抱っこしてダッシュしたって」

「あれは本当に足をくじいてたんだよ」

「オレも足が痛い気がするなー」

「おいこら」


 よろめきながら立ち上がる演技が下手だ。そしてわざとらしく寄りかかってくる。


 そのうち、逃げる人たちもいなくなった。つまり、それを追っていた敵が迫っているということだ。

 フィアイーターに先行して、黒タイツが何人かこちらへ迫っている。俺はポケットに入れていた覆面を被りこれに対峙する。車椅子からナイフを回収する暇はなかったから、素手での対決。上等だ。


 殴りかかってくる黒タイツの一撃をかがんで避けながら、奴の腰に組み付いて押す。


「フィッ!?」


 驚いた黒タイツが俺の背中を殴る前に、俺はそいつを壁にぶつけた。黒タイツの後頭部が壁に激突。死にはしなかったが、動きが止まった。その隙に首を掴んで折る。


「おらっ! 死ね! 親玉はどこだ!? ぶっ飛ばしてやる!」


 変身したバーサーカーが、病院の備品である椅子を振り回して周りの黒タイツをなぎ倒している。


 さすがのパワーだな。鈍器として活用することを想定していない、背もたれのないクッション付きの椅子は振り回すのが難しい形状をしてるのに、バーサーカーはそれを片手で掴んで黒タイツをぶん殴っていた。

 殴られた黒タイツは頭部が変形して即死していた。かわいそうに。


「今日はな! 遥の大事な日なんだよ! 邪魔するんじゃねえ!」

「そうだな」


 バーサーカーの怒りには、友達を想う気持ちも込められていて。


 自分の初めての義足と出会う日。それを怪物騒ぎで上書きされるのは、いい気分じゃないな。

 さっさと終わらせてしまおう。


 フィアイーターの姿は見当たらなかった。病院内を散開して、あちこちで人を襲っているのかも。奴らがやりそうな手だ。その方が恐怖が集まりやすいから。


 愛奈たちにも来てもらわないと。

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