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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-22.仕事の鬼

 すき焼きの肉をがっつき、白菜をボリボリ音がする勢いで食い、しらたきをズルズル啜って腹の中を満たしながら、さらに飲む。

 酔いがどんどん回っていった様子だ。


「ったく! なんなのよあの男は! 話辛いったらありゃしない! あんな内面で女と付き合おうなんて無理に決まってんでしょ! 言いたいこと一方的に言うのは会話じゃないのよ! あんなのが女と関わっても、一瞬でフラれるに決まってるわ!」


 さっきも聞いた男の欠点を、女として再度ばっさり切り捨てる。


「会話ができない奴がモテるはずがないのよ! 絶対にすぐフラれるから!」


 それは今聞いた。


 樋口はさらに絡み酒モードに入った。酔い潰そうとする遥たちの努力も虚しく、俺やラフィオに擦り寄ってくる。


「あんたたち! 彼女と話すときは、ちゃんと相手の会話も聞ける男になりなさいよ!」

「わかってる。わかってるから」

「わかってない! いい、わたしの話をちゃんと聞きなさい!」

「お前が一方的に喋ってるぞ。そういうの良くないんじゃないのか?」

「わたしは公安だからいいの!」


 なんてひどい。公権力の横暴だ。


「ラフィオはわたしの話し、ちゃんと聞いてくれるよねー」

「どっちかというと、つむぎが僕の話しを聞いてくれないことが多いね」

「わたしはねー。ラフィオのモフモフしたところが好きだよー」

「聞いてないというか、会話が通じないんだよなあ……」

「おい樋口! 悠馬と話すついでに抱きつこうとするんじゃねぇ! 離れろ! うわこいつ力強い!」

「ふふん。アユムあなた、威勢はいいし体格も悪くないけど、やっぱり女の子ね。ちゃんと鍛えなさいな」


 酔ってるのに体幹の良さを発揮して俺から引き剥がされるのに抵抗する樋口。警察はさすが鍛えてる。


「こいつ! この! 離れろ! おい誰か手伝ってくれ!」

「うえー。もう飲めない。休憩したらまた飲む……」


 愛奈は飲みすぎで、相反することを口走りながら机に突っ伏している。

 そして遥は。


「悠馬。義足の完成の目処が立ったって。来週の月曜日。また一緒に病院来てくれる?」

「早いな。型をとったの昨日だろ?」

「うん。だからもう少し時間がかかるし、そこから微調整も必要だけど、それでもわたしと話し合いながら合わせられる段階になったって。うん、仕事早いよね。わたしが調べた納期よりも早い」


 義足作りにあたって、遥も一般的にどれだけの期間でできるものなのかを調べているのだろう。それよりもずっと短い時間を提示されて驚いた。


「あの人、義足メーカーの中でも大手の人らしいから、設備とか整ってるんだろうね。既に用意された部品を組み合わせて、義足の大部分はつくれるんだろうし」


 そういうものかな。大きい会社は偉大だ。


「それでも早いっていうのは、やっぱりあの人が頑張ったからだね。さすが宮崎さん」


 あの怖い顔の義肢装具士は、見かけによらず腕が抜群にいいらしい。遥のために、特急で仕事をしたのかも。


「さすが、仕事の鬼って言われるだけあるねー。見た目も鬼だけど」

「それは言ってやるな。気持ちはわかるけど」

「なによう! わたしだって仕事の鬼よ! 公安の中でも一番特殊な仕事頑張ってるだから! ちょっと悠馬! わたしの話聞いてるの!?」

「聞いてない」


 面倒くさい酔っぱらいのスイッチがどこにあるかなんかわからない。おとなしくなりかけていた樋口が復活して抱きしめてくるのに、俺はされるがままになっていた。

 今回は特にきつかったんだろうな。


「わかってる。樋口お前は偉い。嫌な感じの男に一日向き合ったんだよな。やりたくない仕事やり切ったんだよな」

「うん……やり切ってはないけど。あの男まだ油断できないけど。でもわたし頑張った」


 俺の肩に額を当てながら、樋口はしっとりとした声で語りかけてきた。半ば独り言だけど。


「この仕事やってると、嫌な男は何人も見る。パワハラ気質だったり女を下に見たり、臆病者の癖に乱暴者で騒がしい奴とか。そのたびに疲れるの。今回もそう。新しいタイプの嫌な男だった」

「そうか。樋口は偉いな」


 そうしてほしそうだったから、樋口の頭を撫でてやる。樋口は満足そうに笑って、俺により体重をかけた。

 思ったより軽いよな、樋口って。


「ゆ、悠馬! それより義足作り! また病院まで付き添ってください! もちろんアユムちゃんも!」

「わかった。わかったから。……付き添うのはいいけど、今度は親も一緒に来てもらえよ」

「え?」

「娘の大事な買い物だろ。現物ができる以上、支払いをする人間にも見てもらうべきだ。というか、娘の義足姿は親も見るべきだろ」



 まだ完成ではないし、義足の代金の支払いはもう少し先かもしれない。けど、永遠に義足作りを俺たち未成年者だけに任せるわけにはいかない。

 親が関わるなら今だろ。


「んー。そうだね! じゃあお父さんたちにも病院来てもらうことにします! ところで樋口さん! ちょっと悠馬にくっつきすぎじゃないでしょうか!? アユムちゃん頑張れ! 引き剥がして!」

「やってるけどできねぇんだよ! こいつリラックスしてるふりして、めちゃくちゃ力入れてる!」

「おい。ふたりともあんまり騒ぐな。愛奈が起きるから……」

「むにゃ……あー! ちょっと樋口さん!? 人の弟に手を出すのやめてもらえますか!?」

「手遅れだったか」

「悠馬ー。もっと撫でて」

「樋口さん悠馬から離れてください!」

「ぐぬぬー! 離れやがれー!」


 あー。面倒くさい。騒がしすぎて俺が一番疲れる。

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