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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-18.ショッピングセンターの偉い人

 戦闘は終わっていたようで、食品売り場の床には無残な姿になった小さな魚が横たわっていた。


「今夜はアジフライとか食べたいね」

「おう。この魚はさすがに食えねぇけどな」

「近くのスーパーでもアジは買えるはずだから……って! お姉さん! 何やってるんですか!?」

「そ、それ! 恋人繋ぎってやつだよな!?」


 呑気に夕飯の話をしていたライナーとバーサーカーは、俺たちの姿を見て血相を変えて駆け寄ってきた。


「何って。あれよあれ。熱愛発覚です」

「姉弟で熱愛とか不健全です!」

「てかいきなり熱愛発覚って何言い出すんだよ意味不明だろ!」

「わたしと悠馬が付き合ってるってこと、世間に知らしめるべきかなって思って」

「付き合ってないです! 悠馬の彼女はわたしです!」

「いやライナーも違うからな。それに付き合うならオレもやりたい!」


 こいつらは。今日も楽しそうだな。


 一方、ハンターはラフィオに少し焦った様子で話しかけていて。


「ねえラフィオ! 店員さんいるかな!?」

「避難して、店の外だろ。すぐ戻ってくるさ」

「へびたん売ってくれるかな?」

「さすがに今日は営業できないだろうな。店の片付けとかしなきゃだし」

「えー! やだ! 買うの! それにお店、あんまり散らかってないし!」

「あ! おい待て!」


 お菓子売り場の方に駆け出していったハンターを、大型の獣の姿で慌てて追いかけるラフィオ。

 へびたんってなんだ。


「店員さん店員さん! お願いします売ってください! お金は払うので!」


 戦闘が終わったと判断したらしい店員に、小さな箱を見せながら詰め寄るハンターの姿。店員はエプロン姿のレジ係の女で、営業を再開するとかの判断を下せる立場にはなさそうだった。

 下手するとパートとかだろうし。


 店を守ってくれた魔法少女の、しかもとびきり年下であるハンターを邪険に扱うこともできず、店員は困惑した様子だった。


 ラフィオがハンターの上着の裾を噛んで引っ張り、離そうとしている。しかしハンターの情熱は相当なもので、なんとかそれに抵抗していた。

 俺たちも止めに入ろうとしたところ、おそらく決定権を持っているらしいスーツ姿の初老の男がやってきた。


「魔法少女さん。今日も店を守っていただき、ありがとうございます。その商品はお礼として差し上げますよ」

「えっと……」


 完全に勢いがなくなったハンターが、困惑した目をこっちに向けた。


 ほしい玩具を貰えるのはいいけれど、知らない人から物を貰っちゃいけませんという学校での教えが頭をよぎって悩んでいるのだろう。

 タダほど高いものはない。お金を払って買うっていうのは、あと腐れがないのが利点だ。


 こういう時、なんだかんだで大人は役に立つ。


「いいじゃない。貰っちゃいましょう。えっと、あなたは?」

「失礼しました。わたくしこういう者です」

「これはご丁寧に。ごめんなさい、魔法少女は名刺を持ち歩かないものですから」

「いえ、お気になさらず」


 セイバーが前に出て、スーツの男から名刺を受け取った。社会人としてのスキルを駆使して相手の素性を知る。

 このショッピングセンターの総責任者と印字されていた。つまり、この建物で一番偉い人だ。


「なるほど。館長さん。玩具はいただきますけれど、その代わりに写真を撮りたいとか、そんな感じでしようか」

「申し訳ないのですが、そうして頂けると助かります。宣伝効果もありますが、本社とのやり取りに魔法少女さんとの友好関係は有利に働きますので」

「今回の損失の説明を本社にしなきゃいけないとか、そういうことね。壊れた設備の修繕費用を本社に出してもらえるとか、そんな目論見もある」

「さすが魔法少女さん、よくご存知で。こちらの意図を察していただき、恐縮です」

「いえいえ。じゃあ、外にテレビもふもふの撮影クルーがいるはずなので、それを呼んで来てもらえますでしょうか。撮影は写真ではなくテレビカメラ。それから、今のやり取りを撮影クルーの前でもう一回繰り返してもいいですか?」

「ええ。もちろんです」


 お互いのやり取りに齟齬がなかったか。後で言った言わないのやり取りが起こらないように、テレビカメラという一種の権威の前で話し合って記録するのか。

 どうせマスコミは取材に来てるだろうし、テレビもふもふも同様。繋がりのあるマスコミは使わせてもらおう。


 玩具を貰えるのもあるし、魔法少女が地域貢献して頼れる存在だとアピールするのは俺たちの目的でもある。あと、よく使ってる店の利益に貢献したいって気持ちもあるし。


 ややあって、テレビもふもふの取材クルーが来た。この県のローカル局の中でも、実質的に魔法少女の専属取材契約を結んでいるような状態だから、すんなりと話が進む。

 澁谷は今、夕方のローカル番組に出ているから、さすがに現場には来ていない。けど生放送の番組で怪物が出現した場合はその情報を伝えることになっているから、スタジオからこっちの様子は見ているはず。


 取材クルーのリーダーと思しき男がスタジオの澁谷とやり取りしながら、戦いを終えた魔法少女たちをカメラに向かって紹介していた。


 澁谷が関わってるなら、こちらを下手な扱いすることはない。セイバーがどこまで計算に入れてたかは知らないけど、うまくいった。


 そしてシャイニーハンターがミラクルフォース大好きという情報を伝えて自社のアニメの宣伝もしつつ、館長自らハンターに食玩の箱を渡す場面をしっかり撮影して、中継が切られた。


「よし、ありがとうございました! じゃあわたしたちはこれで!」


 たぶん仕事中だったのだろうな。セイバーが少し急ぎ気味で退散していく。麻美を待たせているのかも。そんな中でゆっくりテレビの取材を受けていたのは、少しばつが悪いだろうな。

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