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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-17.熱愛発覚

『逮捕するにしても罪状が決まっていない。とりあえずは保護って名目で、その後事情聴取ね。今回は厳重注意で終わるかも』


 犯罪を起こしているわけではないから、仕方ないか。


 個人的には、こっちの動向を探ってくる不気味な男は逮捕して刑務所に入れてほしいところだけど、それができないのが法治国家の良いところだ。


「ゆ……覆面さん! 状況は!?」


 セイバーが駆けつけてきた。現場の近くにいた俺たちと比べて、仕事中だったセイバーが遅れるのは仕方ないな。俺の名前を言いかけて、取り押さえられてる男を見てやめたのはいいことだ。


「フィアイーターは強くないから、もう倒せそうだ」

「えー!? せっかく、人に見つからないように気をつけて来たのに! ……ていうか、その人は誰?」

「セイバーさん!」

「うわっ!?」


 探し求めていた魔法少女がようやく現れた。その事実に歓喜した男が俺の拘束も跳ね除けてガバリと起き上がった。一瞬だけすごい力が出たぞ。あくまで一瞬だけど。


「俺! 魔法少女のファンで! 一緒に戦いたくて! 友達になってそれからいつか! け、け! ごふっ!?」


 セイバーに一方的にまくしたてる男の足を引っ掛けて、床にうつ伏せで転倒させる。そのまま後頭部に体重をかけて押さえつけ、話せないようにした。


「えーっと。覆面さん? あんまり一般人にそういう暴力は……」

「こいつ、俺たちをストーカーしてた奴だ」

「え。こいつが!?」

「そうだ。だから魔法少女との接触は避けないといけない」

「うん。そうだよね。それはそう。ごめんねお兄さん。応援してくれるのは嬉しいんだけど、あんまり付きまとわれるのは嫌っていうか。気持ちだけいただきますね」


 そこまで礼節をもって対応しなきゃいけない相手ではないけど、社会人としてのスキルを活用したセイバーは丁寧にお断りの挨拶をした。


 男の反応はよくわからない。顔は床に向いていて俺からは見えないし、声も出せないようにしている。

 絶望しているのか、それとも大好きな魔法少女に声をかけられて嬉しさの絶頂にいるのか。


 わからないし、知りたいとも思わなかった。



 それからほとんど間を置かず、樋口が駆けつけた。所轄の制服警官ふたりを連れてだ。


「ご苦労さまです、魔法少女さん。民間人が戦闘に巻き込まれたと聞いて保護に来ました」

「あ。はい。お世話になります。この人です。よろしくお願いします」


 得体のしれない男の前で、自分が魔法少女と親しい間柄だと知られたくない。今度は自分が付きまといの対象になりかねない。そんな懸念から他人行儀な挨拶をした樋口と、それを察して社会人モードで返すセイバー。

 俺がどいた途端に制服警官が男の身柄を取り押さえながら、立たせて連れて行く。専門の訓練を受けてるからか、俺よりもずっと手際がいい。


「ここは危険なので、一旦署まで同行願います。また、形式的に取り調べをさせてください」


 形式的か。相手を油断させるための方便。樋口にとってはこっちの方がメインなのに。


「魔法少女さん、あとはこちらに任せてください。では」

「はい。よろしくお願いします。覆面さん、フィアイーターはどこ?」

「あっちだけど」


 もう倒されてるだろうな。けど確認はしないと。


 敵や他の魔法少女たちがいる箇所に並んで向かう。覆面さんなんて他人行儀な呼び方をしていたセイバーだけど、俺に肩を寄せて手を恋人みたいに手のひらを合わせてつないだ。

 いや、戦闘になるかもしれないのに。そんな繋ぎ方するな。恋人でもないし。


「せ、セイバーさん! 俺、セイバーさんと友達になりたいです!」


 後ろから声が聞こえた。さっきの男のものだ。まだ諦めてなかったのか。

 喋り慣れてない者が大声を出した結果、甲高い声になっていてみっともない。


「だからセイバー、あなたと……」


 声が急に途切れた。なんだろうと思って振り返ると、男も警察に連行されながらもこちらを振り返っているところだった。

 警官も、保護という名目だから全力で手荒な扱いはできない様子で、ストーカー男にもこちらを見る余裕ができたということだろう。


 俺とセイバーが恋人繋ぎしている所を、見てしまった。


「あ、あ、あんたたち、付き合って……」

「はい! わたしたち、カップルです!」

「おい」


 上ずった声で尋ねる男に、セイバーは満面の笑みで答えた。いや、なんでだ。ここで嘘つく理由はなんだ。


 男はそのまま警官たちに連れていかれたから、それ以上の反応を見ることはできなかった。声も聞こえなかった。

 ただ、顔を真っ赤にしているらしいのは見えた。


「姉ちゃん。なんでそんなこと言うんだよ」

「えー。だって。事実でしょ?」

「事実の意味をよく考えろ」


 俺たちは姉弟。これが事実だ。


「でもさ。わたしと覆面男が付き合ってることにしたら、あの男も諦めると思わない? ストーカーでしょ? その対象が熱愛発覚したら、やる気も萎えると思うのよね」

「それは……どうなのかな。あるかもしれないけど」


 あの男が、魔法少女にどんな感情を抱いて探してたのかは知らない。単なるファンが行き過ぎただけなのか、ガチ恋勢というやつなのか。

 わからない以上、下手なことはするべきじゃないと思う。というか、なにが熱愛発覚だよ。馬鹿馬鹿しい。

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