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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第2章 魔法少女と権力

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2-9.テレビの取材

 この場に同席しているのは澁谷の他、報道部のお偉いさんとディレクター兼カメラマンだ。


 本当は魔法少女三人を揃えてほしかったところだろうけど、残りふたりは未成年だから遠慮させてほしいと事前には申し出ている。向こうも、そういうことならと受け入れてくれた。

 俺も未成年なんだけど、まあいいか。姉の付き添いということで。


「早速ですが、一連の事件の真相と魔法少女の存在について、それから今後起こりうる事態についてお話し願えますでしょうか」

「あ、はい。ところで、夕飯まだでお腹空いていて。ご飯頼んでもいいですか? あとお酒も。ビール飲みたくて」

「え? ええ、もちろんです……」


 愛奈の、優秀そうな社会人のポーズが一瞬にして崩れた。


「あ、もちろん悠馬もラフィオも、お酒飲んじゃ駄目よ」

「わかってるよ」


 今更保護者面しても、威厳は取り戻せないぞ。


「悠馬悠馬。ここ見てくれ。デザートにプリンアラモードがあるぞ」


 ラフィオがメニューをバシバシ叩いて俺に話しかけてきた。

 こいつも。自分が一番話さないといけない立場ってこと、わかっているのか?




「……とまあ、こんな感じだ」


 一応、ラフィオはするべき説明はしっかりしてくれた。


 異世界のイブが世界を侵略しに来て、アダムが止めようとしていること含めて、しっかりと。


 あと、これから起こりうることについても。

 これからもフィアイーターは来るし、人々を恐怖させる。けど魔法少女が守ってくれるから安心してほしい。

 キエラという敵のボスも、恐怖が集まらずに時間が経てば戦いを諦めるかもしれない。それまでの間に、こっちもより戦力を整えられるはずだ。


「戦力を整えるとは、具体的にはどのようなことでしょうか」


 澁谷がインタビューするように尋ねた。


 プリンアラモードの器に寄りかかったラフィオが、少し勿体つけて口を開く。


「まずは、魔法少女三人に戦いに慣れてもらう。チームワークの向上も図る。それから、新しいコアを作る方法を模索中だ」

「つまり、新たな魔法少女が誕生する可能性もある、ということですか?」

「そうだね。すぐにというわけじゃないけれど」

「なるほど」


 それは初耳だぞ。けどラフィオは、嘘は言ってない様子だった。


「視聴者の皆さんに伝えたいのは、フィアイーターは恐れるに足らないものということだ。確かに奴は暴れる。襲われれば怪我をする。だから見かけたらすぐに逃げろ。そうすれば被害には遭わない。恐れなければ、敵は強くならない」


 小さな体でカメラをじっと見ながら言い切った。


 ちょっとかっこいいな。プリンにチラチラ目が行ってるのは別として。


「それでは、魔法少女シャイニーセイバーさんにもお聞きします。突然戦うことになったとのことですけれど、その時のお気持ちなどはどうだったでしょうか」

「え? 気持ち? んー弟を守るために必死むぐっ」

「俺たちの関係を明かすようなこと言うな」

「あ、お気になさらず。編集でカットできますので。それでセイバーさん」

「ここで戦うのが、社会人の義務だと思ったので。気がつけば体が勝手に動いてました!」


 そして、胸を張りながら決め顔を見せる。酒のせいで若干顔が赤い。


 その顔が電波に乗ることはない。この取材で撮影した映像は、俺と愛奈に関しては胸から下のカットか大きくボカシを入れた形にしてしか流さないと説明されてるし。


 ラフィオについては、これまで巨大化した姿が何度もカメラに収められてネットで出回っているわけだし、堂々と撮影されることになった。

 こんな小さな生き物がカメラの前で喋っていれば、誰もが本物だと信じるだろう。モフモフの毛並みの体をCGで作るには手間と時間がかかるし、ラフィオは普通にスプーンを持ったりプリンを食べたりしながら話してる。


 偽映像を作るのは時間がかかるし、本物だと見る者に知らしめるには十分だった。



「お疲れ様でした。あとは放送を待ってください。悪いようにはしないので」


 撮影が終わって、お偉いさんとディレクターは映像のチェックとか編集方針の打ち合わせとかでどこかに行ってしまった。


 残された澁谷が、俺に笑顔で話していた。

 ちなみに愛奈は飲みすぎて、俺の膝に頭を乗せて寝ている。ラフィオは二杯目のプリンアラモードを前に目を輝かせていた。


「でも、ちょっと安心しました」

「安心?」


 澁谷が、微笑みを見せながら話した意味がわからず、俺は訊き返した。


「ええ、安心です。親近感が湧いて。みんなが憧れる正義のヒロイン。世界の命運を担って、死の危険もある戦いに身を投じる人たちにしては、普通だなって」

「普通なのかな」

「ええ。普通ですよ。余裕たっぷりに生きてたりするんじゃなくて、肝心なところで格好がつかなくて、普段からギリギリだけどなんとかやってるっていうの」


 ふと、下を見る。姉ちゃんは俺の膝に抱きつきながら寝言を言っていた。

 仕事したくない、と。


「わたしね、テレビで華やかな仕事ができると思ってアナウンサーを志望したの。東京の女子大に入って、そこで何社か受けて。けど駄目だった。中央で活躍するには、顔か愛嬌が足りてなかったの」


 自嘲的な笑みを浮かべながら、澁谷はビールの入ったジョッキを傾ける。


 彼女の容姿が、顔が足りてないと言われるほど劣っているとは思わなかった。

 ぱっちりと開いた目に小さめの口。少し茶色かかった長い髪は、少しウェーブをかけていてボリュームがあった。

 明るい色のスーツにも、よく似合っている。ファッションに詳しくない俺だけど、プロのスタイリストが彼女を美しく見せるために努力しているのがわかる。

 彼女は、その努力をするに相応しい人間だ。


 胸元に関しては、愛奈が嫉妬するからノーコメントにしておく。


「ふふっ。放送では言えないけど、胸の大きさだけは自信あります」

「自分からそういうこと言うな」


 俺は遠慮したのに、何を言い出すんだこいつは。思わず、素で突っ込んでしまった。

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