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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-14.魔法少女と出会う運命

「先輩! フィアイーターが出たそうです!」


 外回り営業の帰りに、ふたりのスマホが警報音を発する。麻美はすぐさま車を停車させた。

 あとは帰社して退勤するだけだったのに。なんでこんなタイミングに。


「仕方ないわね。さくっと倒して帰りますか。麻美、営業車は会社に戻しておいて。わたしも敵を倒したら魔法少女の力でダッシュで帰社します」

「わかりました! 先輩、今度は誰かに見られないよう、気をつけてくださいね。うちの営業車から魔法少女が出てきたって目撃されたら大変ですから」

「わかってるわよ」


 返事をしながら、愛奈は車内で変身した。


「周囲に人影はないか!」

「人影なし! ヨシ!」

「ヨシ! じゃあ行ってきます!」


 客先の製造現場でありがちな指差し確認を真似つつ、目撃者が本当にいないことを確かめてからセイバーは飛び出した。


 ああ面倒だ。目撃したなら、それを公表せずに胸のうちにしまって思い出にしておけば良かったのに。なんでネットに投稿するんだ。それでストーカーができちゃったし。

 そのストーカー、今も魔法少女を探してるのかな。どこにいるのかは知らないけれど。



――――



 魔法少女の手がかりを探す男は、彼女たちが初めて戦った場所に来ていた。

 駅構内。そしてこのショッピングセンターだ。


 駅は人が多くて、しかも働いてる人の姿を見ると彼は気持ち悪くなってしまう。だから先にこっちに来た。手がかりがどこにあるかわからないが、なんとなくお菓子売り場に足が向く。


 食料品売り場の中で、そこが一番彼にとって馴染みがある商品が並んでいるからだ。野菜や調味料なんてどう使うかなんか知らないし、お菓子売り場には今をときめくアイドルのカードが封入されているウェハースとかもあるから。


 しかもここには小さな女の子がいる。

 彼は、こういう女の子が好きだった。純真無垢で愛らしい。大人の悪意など何も知らない。なんてかわいいんだろう。


 一時的だが、彼の頭から魔法少女を探すことは頭から抜けていた。そもそもこんな場所に手がかりなど無いと、頭のどこかではわかっていたのかもしれない。


 小さな女の子を見つめていた彼は、しかし不愉快な物を見てしまった。小学生の女の子が、同じくらいの年の男と手を繋いでいる。

 付き合ってるのか? 小学生なのに。ありえない。穢れている。


 男の方は外国人みたいな顔つきだ。どうせそこに惚れたとかだろう。小さい子は騙されやすいからな。この男、どうせ良いのは顔だけだ。女の子が笑顔で話しかけているのに、男はそっけない返事をするだけ。

 内面は最悪に決まっている。こんな、外面がいいだけの男がモテる今の日本は間違っている!


 脳内で怒りを増幅していた男の視界の端に、幼稚園の年長くらいの少女が走っているのが見えた。


 こっちに向かってきているけど、当たりはしない進路。男はすかさず、商品を見るのに気を取られて気づかなかったふりをして一歩移動した。

 走っていた少女とぶつかる。小さな体が少し弾かれて、彼女はよろよろと後ろに下がって驚いた顔をした。


 すぐさま彼女の母親らしき女が、謝りながら駆け寄ってくる。男は笑みを見せて、大丈夫ですと掠れた声で言いながら少女の頭を優しく撫でた。

 そう。俺はこういう気遣いができる人間なんだ。こういう者こそ評価される社会にならないと。


 母親が引きつった表情を見せながら娘の手を引いて逃げるように離れていく光景には、男の意識は向いてなかった。彼の手に残された幼女の髪の感触だけが心を支配していた。


 そんな彼だが、周りから一斉に聞こえてきた警報音に意識を戻されることになる。

 しかも、怪物はこの建物の中に出たと、誰かが言っていた。


 つまり、魔法少女がもうすぐここに来るというわけだ。


 男は内心で歓喜に震えていた。なんという幸運なんだろう。魔法少女に会える。情報を探す手間も省けた。向こうからこっちに来てくれた。

 これはきっと運命だ。自分のような善人がこれまでの人生の不遇を打ち消すように、運命がそう仕向けた。ようやく運が回ってきたんだ。


 だったらありがたく、魔法少女に会わせてもらうことにしよう。そうだ、魔法少女の戦いを手伝おう。普通の人間でも怪物や、黒タイツと呼ばれる敵と戦っているし。俺にもできるはずだ。


 魔法少女を助けて、感謝されて。そして仲良くなって。



 ありもしないバラ色の未来を思い浮かべた男は、ニヤニヤと笑顔を浮かべた。



――――



「つむぎ。周りの目のないところで変身しろ。僕は先に向かう」

「うん! でも、へびたん……」

「後にしろ!」


 フィアイーターの咆哮を聞いた途端、店内はパニックになった。みんな一斉に店の外に逃げていく。


 その混乱に乗じて、ラフィオは小さな妖精になりながら、つむぎの肩と頭を足場にぴょんぴょんと跳ねて陳列棚の上に飛び乗る。


「あー。ラフィオ待って!」

「おいおい……」


 先に向かうと言ったのに、つむぎはモフモフの恋人が離れていくのを追いかけた。


 でもまあ、結果として良かったのかも。ラフィオは陳列棚の上を駆けてフィアイーターの方に向かっているし、買い物客たちはフィアイーターから逃げていく。

 そしてつむぎはモフモフを前にした身体能力を発揮して、人の波に逆らいながら隙間を的確に見つけて逆走する。あっという間に、人の群れから抜け出てしまった。

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