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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-13.へびたんマスコット

「ねえラフィオ、いいでしょ? 玩具売り場じゃなくて、お菓子売り場なの」

「別に、売り場の違いでいい悪いを決めるわけじゃないけど」

「そんなに高い買い物じゃないってことだよ」

「値段も別に気にしてない……」


 手軽に買えるから、買い物に時間はかけないって言いたいのだろうな。


 変身アイテムみたいな高めのしっかりした玩具は、現行作品が終わった後に品が入れ替えられる。だからまだ店頭には並んでない。

 けど、食品売り場の一角。どう考えても玩具だけど小さなガムがついてるからお菓子として売られている、いわゆる食玩の展開はもう少し違うらしい。


 次回作の妖精キャラの小さいぬいぐるみが、既に売られているらしい。


 蛇をモチーフにした、へびたんというキャラ。キャラクター自体はモフモフではないけど、ぬいぐるみにしたらモフモフなのか。


「ラフィオ、お願い」

「いいよ。一緒に行こう」

「やったー! ラフィオ大好き!」

「おい! 抱きつくな! 苦しいから!」

「後でいっぱいモフモフしてあげるね!」

「してほしくないんだよ!」

「モフモフー!」

「後でって言ってただろうが!」


 休み時間の間ずっとモフられ倒したラフィオは、午後の授業中の間ずっと、乱れた毛並みを直しながら先生の話に耳を傾けていた。



 放課後、ラフィオを掴んで急いで家まで戻ったつむぎは、ランドセルを部屋に置いてすぐに駅の方まで駆けていく。


「へびたん、へびたん、早くほしいなー」

「そう簡単に売り切れたりしないから。ゆっくり歩け。転ぶぞ」

「でもー」

「ほら」


 周囲に人目がないのを確認してから、ラフィオはつむぎの腕から抜け出して少年の姿になる。


「手、繋いであげるから」

「んー。わかった」


 ラフィオの差し出した手を握り返したつむぎ。ふたり、並んで歩く。


「なんかこれ、デートみたいだね!」

「デートなんだろうな」

「放課後デート、なんか青春って感じがするね!」

「青春なのかな。なのかもしれないね」


 青春って、だいたい何歳くらいからのことを言うんだろう。小学生にも適用されるのかな。

 答えが出ないことを考えながら、ふたりは手を繋いだまま店内に入った。さすがに店の中では離したかったけど、つむぎがそれを許さなかった。


「お菓子売り場はこっちだねー」

「知ってる」


 何度も行ってるから。


 平日の夕方の店内は、夕飯の材料を買う客が多かった。

 手を繋いで歩くこちらに目を向けて、微笑ましそうにする大人が何人かいて、ちょっと気まずく思ったりもした。


 お菓子売り場の、特に食玩を欲しがる子供の姿は少ないと思ってたけど、そうでもなかった。

 保育園に子供を迎えに行き、そのまま買い物する保護者も多いらしい。まさしくミラクルフォースのメイン視聴者たる小さい女の子の姿も目立つ。幼稚園の年長さんくらいかな。


 親が気まぐれを起こして食玩を買ってくれないか、少し期待する目をしながら棚を見つめている子がいる。他にも、元気が有り余って走り回っている子供もいた。


「子供がぬいぐるみ欲しがったら、喧嘩せずに譲ってやるんだぞ」

「えー。やだー!」

「年上なんだから大人として振る舞いなさい」

「わたし子供だもん」


 それはそうだけど。小さい子を泣かすようなことはやめろと言ってるんだ。


 まあ、実際子供と取り合いになることは無いと思うけどね。


「えっとー、どれかなー」


 大きな店だから食玩の種類も多い。トンファー仮面を始めとした他の子供向け作品や、本来大人向けに作られたけど子供にも人気が出ているアニメ作品なんかの商品が並んでいた。

 一番多いのはウェハースだな。カードがおまけでついてくるんだ。


 品揃え豊富な中からお目当ての商品を探そうとするつむぎ。ラフィオは一緒に探しながら、周りの様子を見ていた。また子供が走って、こっちにぶつかってきたら危ないから。


 ほら。今も前を見ずに走ってる女の子がいた。こちらにはぶつからないルートだからいいけど。あ、危ない。なんか大人の男にぶつかった。小太りの中年の男だ。あの人も食玩を買いに来たのかな。

 けど、小太りの中年男? ふと、話題にしているストーカー男のことが頭をよぎった。


 いや。まさかな。

 けどこの男の格好。毛玉の目立つスウェット姿だ。ここは、魔法少女が戦ったことがある聖地だ。


「あ。あった。これだ。へびたんマスコット」

「そうか。さっさと買って帰るぞ」

「うん!」


 つむぎが、お菓子にしては少し大きめの箱を手に取ったその時。

 スマホから警報音が鳴った。


 ほぼ同時に、少し離れた所からフィアイーターの咆哮が聞こえる。


 おいおい。まさかまた、この売り場にフィアイーターが出たのか?



――――



「キエラ、どう? 歩けそう?」

「まだ。歩けるようになるには、まだまだ訓練がいるわね」


 あの作業部屋から見つかった義肢を組み合わせて、取りあえず小さな妖精の時のキエラの義足を作ってみた。ソケットは、なんとか合うように調整してすっぽりと嵌るようになったけど、それを使って自在に歩けるようになるには時間がかかる。


 今も、プルプルと震えながら歩いていたキエラは、小さな体をコテンと転ばせてしまった。


「頑張って。だんだん上手くなっている」

「ありがとう……でも、あんまりこれに時間をかけてられないわ。最近恐怖を集められてないし」

「わたしが代わりにやっておくから」


 ティアラはコアをひとつ掴んで空間に穴を開けた。市内のどこにフィアイーターを出すかなんて、別にどこでもいい。


 なんとなく、あの時のショッピングセンター決めた。あそこは人が多いから恐怖が集まりやすい。あと魔力の霊脈の中心が近いし。


 作ったフィアイーターがどんなふうに暴れるかなど気にせず、ティアラは穴を閉じた。


「ふふっ。ティアラはいい子ね」

「でしょ? さあキエラ、歩く練習、続けよ?」

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