表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

625/746

13-11.いつもの登校風景

 そして男はこうも考えていた。魔法少女を見つけて知り合いになって、この部屋を見せたら喜んでくれるだろうなと。応援してくれる自分に、魔法少女は感謝してくれるだろう。


 ああ。魔法少女シャイニーセイバー。この子が一番喜んでくれたらいいな。喜んでくれるさ。俺を気に入ってくれる。間違いない。間違いない……。

 男は身勝手な妄想を抱きながらベッドに寝転ぶ。


 病院の連中は何かを隠して、こちらに情報を渡してくれない。明らかに裏がある。政府の陰謀とか、そんなものだ。なんとしても、その闇を暴かねばならない。


 魔法少女はみんなのアイドルだ。秘密があってはいけない。そうだ。これは彼女たちを、邪悪な政治から救う聖戦なんだ。たったひとりの戦い、勝ってみせる。

 病院を当たるだけでは成果は得られない。まずは魔法少女と接触しないと。そのために行くべきは……。



――――



 翌朝。俺たちはいつものように、それぞれ行くべき場所へ向かっていく。


 愛奈は謎のストーカー男よりも会社に行くことの方が嫌な様子で、俺のフライパンに追われるようにスーツ姿で駅へ向かう。


 つむぎも、ラフィオを握りしめながら小学校へ向かった。集団登校の待ち合わせ場所につく直前に、ラフィオはランドセルの中に仕舞うらしい。

 さすがに学校にぬいぐるみを持っていくのは良くないと、つむぎもわかっている。だからラフィオの存在は秘密だ。


 持っていかないという発想はないものかと、ラフィオがうんざりした様子で言っていたのを聞いたことがある。


 とはいえ、この状況だ。家の近所にストーカー男が来るとも思えないけど、ラフィオは周囲の警戒に余念がないようだった。

 そして俺も。


「怪しい人影はないなー」

「ないねー」

「そうだなー」


 制服姿の高校生三人で、なんとなく周りを見渡しながらバス停へと向かう。


 家の近所は今日も変わりなく、見知った顔しか見かけない。スロープを使って車椅子ごと乗り込んだバスの車内も同じで、いつも見かける顔ぶれしかいなかった。


「みんな。油断しちゃいけないよ。問題は学校の前だから! 何かあったら悠馬を前に出しつつ、先生を呼ぶ。そして警察に任せる!」

「わかってるって。俺が不審者をぶん殴りながら、大人が来るまで待つんだろ」

「オレも殴りてえな。不審者」

「駄目だから! 大人の前で未成年の暴力は駄目です!」


 わかってる。


 妙にハイテンションで話してる遥も、さほど事態を深刻に思ってる様子はなくて。


 そして事実、登校時は何事も起こらず対策は杞憂に終わってしまった。いや、いいことなんだけどな。


 樋口が見守ってるという話だったけど、その姿はどこにもいなかった。ちょうどバスが停まる時間帯に、都合よく制服警官が通りがかったのは見えた。

 たまに校門に立っている生徒指導の先生は、今日は見当たらず。そして不審者の姿もなかった。


「平和だねー。拍子抜けするほど平和だね」

「良かったな」

「うん。良かった。悠馬の格好いいところは見たかったけど」

「そんなのは見せる機会がない方がいいんだよ」


 スマホが震えた。樋口からメッセージが届いていた。


 異常なさそう。今日も勉強頑張りなさい。下校時も用心すること。できれば三人に加えて、剛も一緒に学校から出なさい。

 そんな内容だ。姿は見当たらないけど、どこかから見てるのだろう。さすが公安だ。


「樋口もこう言ってるぞ。勉強頑張れよ、遥」

「なんでわたしだけ!?」

「アユムは頑張ってるだろ」


 平和だなあ。



 剛にも樋口から話がいってるらしい。世間的には、コスプレ女であるシャイニーファイターも魔法少女の一員だ。

 世間はなんとなく、コスプレで戦っているだけの人間だとは気づいているらしい。あまり表立っては言わないけど。

 しかしファイターが女装男子だとは、誰も気づいてない様子だ。


「それは心配だね。僕も正体を探られたりするのかな」


 昼休みに、剛も交えて一緒に食事をしつつ、下校時は一緒にという話をする。了承はあっさり取れた。

 剛自身もまた、この状況にあまり危機感を抱いてない様子だ。呑気そうに言う。


「そんなこと言って。先輩が一番気をつけなきゃいけないんですよ。なにかの拍子にウイッグが取れたら、知り合いが見ればわかっちゃう格好になりますから」

「それはそうだね。悠馬と違って、僕は素顔で戦ってるからね。そうならないよう頑張るよ。ははっ」


 大丈夫かな、この人は。



 俺たちがそんな緊張感のない会話をしている間も、樋口は学校周辺の監視をしていたらしい。校門前を重点的に、けれど定期的に学校の周りを歩いて不審者がいないか確認しているそうだ。その旨、時々メッセージが送られてくる。

 こういうのって異常があれば知らせてくるものだよな。定期報告を受けても、俺にできる事はなにもないし。


「あれだよ。樋口はひとりで頑張ってるんだろ? 誰にも褒められることがなくてもな。ちょっと寂しいと思ってるんじゃねえか?」


 スマホ画面を見つめる俺に、アユムが背中から近づいてきて自分も画面を覗きながら考えを教えてくれた。アユムの胸が背中に当たっていることについては、考えないようにしよう。


「ありがとう、樋口のおかげで助かってるって送ってやれよ。喜ぶから」

「そ、そうか。ありがとう、助かってる。樋口は頼りになるな……と。送信」


 一瞬にして既読がついた。そして返事が来た。


『どういたしまして』


 それだけだった。


「これ、喜んでるのか?」

「喜ばないはずがないだろ。ああいう性格だし立場もあるから、はしゃぐとかはしないだけだ」

「そういうものか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ