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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
第13章 鬼

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13-8.厄介ファン

 遥の車椅子を押してマンションまで帰ると、ラフィオが既に夕飯を作っていた。今日はロコモコ丼らしい。


「これがロコモコか……噂にしか聞いたことがねえけど、こういうもんなのな。なんか、これが食えるって、やっぱ都会って感じだな」

「いやいやアユムちゃん。都会関係ないでしょ。割と食べられるところ、どこにでもあるよ」

「オレの田舎にはなかった。というか食事する店は、ヨボヨボの婆さんがやってる定食屋くらいしかない」

「そ、そっかー」

「ロコモコ、うめえな。都会の味だ。アメリカって感じがする」

「どんな味なのかなー。てか、元はハワイの食べ物でしょ? ハワイってアメリカの中じゃ田舎の方だと思うよ?」

「オレの地元より都会なら、みんな都会だ」

「なんか、世の中の殆どが都会になるみたいな言い方だね……」


 遥がアユムの都会観に戸惑いながらロコモコ丼を食べている。

 すると、愛奈が帰ってきた。


「ただいまー。樋口さんも来たわよー」

「お邪魔するわね」

「なんか、帰りの電車が一緒でね。まるで待ち構えてたみたいに声掛けられたのよ」


 それは待ち構えてたんだろうな。愛奈の退勤時間とか完璧に把握してそうだし。樋口の住んでる場所は知ってるけど、愛奈の会社とこのマンションの最寄り駅を考えれば一緒になることは珍しい。

 始めから愛奈に会いに来たと考えるべき。 その用事は。



「お酒買ってきたわ。一緒に酒盛りするのもいいけど、話し合いたいことがあるの」

「お酒と一緒ということは、あまり深刻ではない内容か?」

「そうでもないけどね。一応気をつけてほしいことがあって」

「ラフィオ、目玉焼きはいいけど、ハンバーグもうひとつ作れる? 樋口さんの分」

「どうかな。肉はなくはないけど。今からひとつだけ作るのものな」

「あ、お気遣いなく。自分の肴は自分で用意したわ」

「じゃあ、ロコモコ丼のハンバーグ抜きのやつは出してあげよう」

「なにが、じゃあなのかしら。というかそれ、ロコモコと言えないわよ」

「でも、目玉焼き丼も悪くないよ?」

「一応はいただくわ。それよりも愛奈」

「はいはい。乾杯」

「乾杯。ところで先日の戦闘の際に、ちょっとした問題が起こったんだけど、愛奈は気づいてたかしら」


 ビール缶をそっとぶつけ合いながら、樋口はそう切り出した。


「先日? どれ?」

「あなたが病院から抜け出して、警察署で戦った件」

「病院から抜け出した時点で問題だよな。結果として傷口が広がって、退院が遅れた」

「うー。いいじゃない。もう治ったんだから」

「おい。見せようとするな」


 スーツのジャケットを脱いでブラウスをめくり上げようとする愛奈を慌てて止めた。


 樋口はそれを、随分冷めた目で見ながらビール缶を傾けた。


「それはそれで問題だけど、あの状況では仕方なかったわ。けど愛奈。魔法少女シャイニーセイバーが病院の窓から出たときに、部外者に目撃されたようなの。たぶん通行人ね」

「え? そうなの? 見られちゃってた?」

「姉ちゃん、格好いいこと言って変身して、それに酔ってて周りの警戒を忘れたな」

「自己陶酔ってやつね」

「よ、酔ってなんかいないわよ! ま、まあ、ちょっと急いでたというか。悠馬に魔法少女としてのあり方を言い切ったから、頑張らないとと思って周りがちょっと見えてなかったかもしれないけど!」

「それは立派に酔ってるんですよ、お姉さん」

「お姉さんじゃないもん! 樋口さん、通行人というのはどんな人なんでしょうか」

「わからないわ。目撃したというSNSの目撃情報は、書き込んだ本人がアカウントに鍵がかかってたから読めなかった。なんの気無しに書き込んだのに、周りが反応しすぎて驚いたのね」


 悪意があって書き込んだわけではないのか。日常に起こったことをそのまま書けば、周りが騒ぎ出したと。


「鍵がかかってても、警察の権限で読むことはできるわ。けど手続きを踏むのが面倒だし時間もかかる。正直、拡散力がなくなった書き込みにそこまでする価値があるとは思えない」


 でも、樋口はこれに関して懸念事項がある。


「目撃情報から、魔法少女の居場所が掴めるかもと考えて探し出そうとする人間が何人かいるらしいのよ。ネット上で情報収集をしたり、さらなる目撃情報を募集しようとしている。魔法少女の住所特定のためにね」

「うわー。嫌なファン。けど、ネット上だけで完結してるなら、まだ無害よね?」

「今の段階で、無害とは言えないと思うぞ。ここが特定されるとか悪夢だ」

「厄介ファンが押し寄せてきそうだもんね」

「うー。それは困るわね。でも樋口さん。その落ち着きようを見るに、特定までいく様子じゃないんでしょ?」


 頭を抱える愛奈だけど、そこまで危機的状況ではないとも考えたいらしく、すがるように樋口を見る。


「ええ。まあ。けどひとりだけ、本気で探そうとしてる人がいるみたいなの」

「本気で探す?」

「ええ。昨日、あの病院に魔法少女について尋ねた人がいたわ。例の書き込みには、どこの病院からセイバーが出てきたのかまでは書き込まれてなかったけど、戦闘があった場所に一番近い病院だから訪ねたのでしょうね。結果としては当たりだけど」


 その行動力に呆れているのか、樋口は大きくため息をついた。


「中年の男性。小太り。受付で係員に、この病院に魔法少女が入院してるはずだ。会わせてくれ。なにか知っていたら教えてくれ。みたいな内容を一方的にまくし立てて混乱させた。警備員が駆けつけると、すぐに逃げたようだけど」


 おい。それって。


「あっさり追い払えたけど、あの病院が魔法少女と関わってるのは事実。事情を詳しく知ってる職員は極わずかだけど、退勤途中の職員に片っ端から訊くとかで、なにかの拍子に情報が漏れたりしたら問題なのよね」

「なあ樋口。オレたち、さっきその男を見たと思う」


 アユムも俺と同じことを考えていたのか、少し遠慮がちに言う。

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